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アルカディアリベル  作者: 描空


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62話 ハンマーと拳

 二年生に進級してはや一ヶ月が経った。二年の授業は一年の時と比べてかなり本格的で尚且つ専門性の高い授業になっている。だが、俺は授業では満足出来ずにいる。一年の頃からじいちゃんや武帝にいろいろ教えてもらっていたからゲームの二周目のような感じで新たな発見がなくてうんうんそうだよねと楽しめないでいた。そんな時、ふと思い出した。万物潰崩と劣覆拳の存在を。この二つのアイテムは競技会でゲットしたはいいが、持ち運びが面倒という理由で忘れられた記憶の断片(アルカディアリベル)の中に収納してそのままにしていた。ちょうど暇だし、授業は消化不足感が否めなかったからついでに武帝に稽古もつけてもらおうと思ったのだ。


 武帝のところに行くと、武帝は自重トレーニングをしていた。逆立ちの状態で腕立てをしているのに汗ひとつかいていない強靭さに俺もこうなりたいと思った。


「武帝」


 俺がそう呼ぶと武帝は逆立ちをしたまま顔をこちらに向けてきた。武帝は俺のことを認識しても尚逆立ちをやめず腕立てを再開した。まだセットが終わっていないのだろうと思い万物潰崩と劣覆拳を取り出して準備をすることにした。


「エクシィミート」


 万物潰崩と劣覆拳を準備しても尚武帝のトレーニングは終わらず、体を動かして稽古の準備をすることにした。劣覆拳を手に嵌めシャドーボクシングをしばらく行っていると武帝が話しかけてきた。


「待たせたな。何用だ?」


「この二つの扱い方と稽古をつけて欲しくて」


「そう言えばしていなかったな。まずは自分で試してみろ。何事も経験だ」


 今手に嵌めている劣覆拳の方から試してみることにした。まず外見を観察し何かヒントになるようなものはないかなと探した。外見は特にボタンがあったり特殊な機構があったりはしなかった。中も見てみたが特に何もなくどうやったらアイテムの効果が発動するのかなと思った時、この劣覆拳は対峙した相手と同等の力になるまで引き上げてくれるという効果で、言わば劣勢を覆す効果だ。つまり対峙する相手がいない以上効果が発動しないという結論に行きついた。


「試してみてもいいですか?」


「もちろん」


 劣覆拳の効果を確認するために一度外した状態で試してみることにした。武帝に手を出してもらいそこにパンチをした。次は劣覆拳を嵌めてやってみた。すると、さっきは表情ひとつ変えなかった武帝の表情が少し歪んだ。それと同時にこんなに自分のパンチが強かったかと不思議に思うぐらいの威力になっていた。


「すげぇ」


「これが俺様とお前の力の差だ。だが、俺様は素の状態だ。ここから強くなることなんぞ造作もない。したがって、劣覆拳を使えば今以上のパワーを出すことも可能だ。やってみるか?」


「いいんですか?」


「もちろんだ」


 そう言うと武帝は全身に力を込めた。筋骨隆々な肉体が一回り大きくなった。全身に力を込めたことで筋肉が大きくなったのだろう。武帝が手を差し出してきたので俺はパンチを打った。すると、さっきまでのパンチがジャブかと思うぐらいの威力になった。パンチを打った衝撃派が起こりパンチを打った武帝の足元はパンチの威力でひび割れていた。そのことから武帝のある程度の実力を理解出来た。


「どうだ俺様の力を体感してみて」


「いやもうなんか、エゲツないなって」


「お前も俺様のように強くなるんだぞ健斗」


「任せてください。いつか超えてみせますから」


「それじゃあ次はそっちだな」


 武帝が万物潰崩を見ながら言った。劣覆拳を外し万物潰崩を手に持った。少しは慣れたが、ハンマーの重さはくるものがありどっしり構えていると武帝が言った。


「万物潰崩は常に効果が発動してるタイプの珍しいアイテムだ。試しに地面を軽く叩いてみろ」


 そう言われて軽く地面を叩いてみた。すると、軽く叩いたにもかかわらず地面にはヒビが入った。武帝の力で打ったパンチでヒビ割れるぐらい硬い地面なのにこんなに簡単にヒビが入るなんてと驚いていると武帝が続けた。


「名前の通りなんでも潰し崩壊させるハンマーだから当然の結果だな。だが、その分扱いには十分注意しなくちゃならない。もし、ダンジョンで使ってモンスターじゃなく地面を叩いた時には生き埋め確定だからな。まぁ逆に上から降ってくる瓦礫全部崩壊させたら解決だけどな」


 そんな脳筋な解決法あんた以外出来ねぇよって心の中で思ったが、万物潰崩にはそのぐらいのポテンシャルがあるのだと思いそこで留めた。そんなこと思っていると武帝が構えて言った。


「拳はまぁ使えるだろうけどハンマーは慣れてないだろ。稽古つけてやる」


 待ってましたと武帝の稽古を受け始めた。最初は武器としてのハンマーの扱い方を実践してくれそれをなぞるように実践した。ハンマー特有の重心が持っていかれるのを力で制御しないといけないのが大変だった。少しでも気を抜くとハンマーの重さに持っていかれるからどのアイテムよりも気を張っていなくちゃいけないのも大変だ。


「よし。それじゃあ俺様に当てようとしてみろ。魔法は使わずにな」


 武帝の無理難題な内容に無理だろと言いたかったが、ここで挫けてちゃいつまでも使えないと自分に鞭を打ってやった。結果は分かっていた通り、武帝に掠ることすら出来ず終わった。疲れないからいつまでもやり続けられるのだが、当たらなすぎて心の方が折れてしまったのだ。すると、武帝が言った。


「武器には向き不向きがある。お前にはハンマーが合っていなかっただけだ。そこまで落ち込むようなことじゃない。それに武器は使いようだ。例えばワイバーンやドラゴンが相手なら万物潰崩は有効打になる。だからと言って、すばしっこいモンスター相手にも使うか? それは間違いだ。適地適作や適材適所って言うだろ。それと同じだ。適する場面で使ってやればいい。その時にはちゃんと思い出してやれよ」


「はい。最後に質問なんですけど、武帝ならコイツどうやって使うんですか?」


「見せてやる」


 そう言うと武帝は万物潰崩を持ちどうやって使うか見せてくれた。俺が万物潰崩を振るのには両手でやっとだったのに武帝は容易に片手で振るっており筋力の違いと経験の違いを見せつけられた。俺が万物潰崩を振る時は愚直に剣のように振っていたが、武帝は舞うように重さをいなすように時には重さに身を任せるように振っていた。これが武を極めた境地なんだと感動した。


「どうだった?」


「凄かったです。ハンマーの重さをものともしない筋力に体の動かし方、何から何まで勉強になりました」


「それを身につけ、今度はお前が教えれるようになれ。力は自信となり余裕となり他人を救う力となる。みんなを守ってやれ」


「はい!」


 武帝の考え方にも感動した。圧倒的強者には他人を救う力もある。なら、俺も強くなり他人を助けられる武帝のような攻略者になると心に決めた。

次回もお楽しみに


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