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アルカディアリベル  作者: 描空


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61話 二年生に

 月日が過ぎるのはあっという間でもう一年生が終わろうとしていた。高校生活の三分の一がもう終わろうとしていることに後悔などなかった。十二分に充実した毎日を過ごしていたから月日が過ぎるのがあっという間だったのだ。勝たちももう二年生になるのかと驚きと嬉しさからか何度も話していた。クラスのみんなも似たようなことを話しており寂しそうな感じを漂わせていた。そんな時塩田先生がやってきて言った。


「そういえば言ってなかったけど、光正はクラス替えないからそんな心配しなくていいぞ」


 塩田先生の言葉にクラスはシーンと静まった。そして、一拍おいた後クラス中が一斉に話し始めた。口々から安堵の声や来年も一緒だという歓喜の声が上がった。勝たちも例外ではなくとても嬉しそうにしていた。ひとしきり話をしているとクラスの雰囲気が変わり何故クラス替えがないのかと塩田先生に問い詰めた。塩田先生は俺たちを宥めて説明し始めた。


「まず光正が卒業難易度が五大校の中でも高いのは知ってるな。それが何故かと言うと、三年最後に行われるダンジョン攻略試験を突破しないといけないからだ。毎年クラス替えをして交友関係を一から構築してダンジョン攻略をやってってしてたら卒業できる奴らは実力が高い奴らだけだとなりクラス替えはしないことになってるんだ。さらに、二年生から授業でダンジョンに行き経験を積むということもするから、余計クラス替えなんてしてる余裕はないんだ。分かったか?」


 クラスはそういう事かと納得したが、ダンジョン攻略試験という言葉に雰囲気は一変した。さっきまでは口々にプラスな言葉が上がっていたのに、今では卒業できるか心配などマイナスな言葉ばかりになった。俺とユースは何も気にしておらず勝たちに縋られていると塩田先生が続けて言った。


「そんなに心配しなくても大丈夫だ。ダンジョンのレベルはお前たちが攻略出来るレベルのやつを選ぶし、お前らには競技会で大活躍した小出とユースがいるだろ?」


 塩田先生の言葉を皮切りにクラスのみんなが俺たちの近くに駆け寄り助けてくれるよう懇願したり、俺たちに期待を寄せている事を言ったりしていた。俺とユースはやれやれといった感じだった。あまりにも心配している生徒が多いため塩田先生が追加で説明してくれた。


「まだ話すのは早いかも知れないが、三年のダンジョン攻略試験はクラス単位で行われる。成績としてはクラス全体で評価されるが、個人の行動も評価対象に含まれてるから何もしないとかは悪手だぞ。まぁそんなに心配しなくてもお前たちにはあと二年も時間があるんだ、怠けてたりしなかったら絶対卒業出来る。小出とユースが飛び級なんかしたりしなかったらな」


 塩田先生は最後に意地悪な事を言いクラスの不安を煽った。クラスのみんなは塩田先生の手のひらの上で踊らされておりまんまと術中に嵌った。その様子に塩田先生はゲラゲラと笑い転げていた。すると、ユースはこの状況をめんどくさいと思ったのかみんなに対して言った。


「塩田先生も言ってる通りそんなに心配する必要ないわ。それに、みんなには私と健斗がついてるんだから。でも、卒業出来るからって遊び呆けたりしたらその時は見捨てるから覚悟しなさい! 毎日努力をし続けた人だけ卒業出来るの。もし、私たちと一緒に卒業したいなら毎日努力を欠かさない事。もちろん授業もね。分かった?」


「「「Yes,ma’am!」」」


 ユースの言葉にクラスの雰囲気はガラッと変わった。まるで教室が米軍の一個小隊のように洗練された雰囲気に包まれた。塩田先生もまさかここまで変わると思っていなかったのか驚いていた。ユースの目には嬉しさと誇らしさ、みんなに対する期待など様々な情報が読み取れた。その時、ユースが肘で俺にも何か言うように促した。みんなの方を見ると俺を見ており求められていることが分かった。一瞬何を言えばいいのか戸惑ったが、その場の雰囲気で言うことにした。


「みんなには俺がついてる。何事にもチャレンジしろ。強くなることに貪欲であれ。もし、危機的状況に陥っても俺やユース、先生たちがお前らを助ける。恐るなとは言わない。だが、立ち向かわなくてはならない時がいつかは来る。その時のために強くなり大切な人を守れるようになれ!」


「「「Yes,sir!」」」


 俺たちの交友関係はグッと縮まったと確信した。そこからユースがみんなにこれからどう過ごすべきかということを指導し始めた。


「これから二年生になり近接戦闘、魔法、アイテムがもっと専門的になる。挫けそうになったり分からないことがあれば何でも聞いてくれて構わない。でも、全部聞くのではなく、自分で考えて試行錯誤してそれでも分からなければ聞きにきて。その時は教えてあげる。それと、授業だけで終わってたらダメだよ。自主練は欠かさないこと。最初は大変かも知れないけど、一週間で何曜日はやるって決めてそれを毎週こなす。すると、次第に成長して前まで辛かったのが辛くなくなるから。それが自分が強くなった、成長出来たって一番実感出来るから。次は成長出来たのならもっと出来るはずって自分に鞭打って、さらに成長するために自主練を増やすの。それを続けたらみんないつの間にか絶対強くなってるから。挫けそうになっても諦めない。立ち止まってもいいから続ける。そうすれば明るい未来が待ってるよ」


 その言葉にクラスのみんなはやる気が出てきたようでとてもいい表情になった。塩田先生も嬉しいような、誇らしいような表情をしていた。ここまで言えば大丈夫だろうと思ったのだろう。俺たちも言いたいことは全て伝えた。後はみんなの自主性に任せるだけとなった。


 一年が終わり春休みが始まった。春休みの間、勝たちが俺とユースに近接戦闘や魔法の扱い方を教わりにきた。ユースの家を訓練場所にし、俺たちは勝たちに強くなって欲しい一心で教えられることは全て教える勢いで三人に訓練をつけた。三人とも各々苦手分野があった。勝は魔法、透と春奈は近接戦闘だ。アイテムの扱い方は直感や持ち主が一番理解出来ているので苦手分野ではなく、近接戦闘と魔法をメインに教えることにした。俺とユースは近接戦闘も魔法もかなり高いレベルで扱っているため、三人は飛躍的に成長した。


 勝の魔法は、最初は火魔法を扱えるぐらいだったのが、水と風魔法も扱えるようになった。透と春奈の近接戦闘は、勝と戦ってもいい勝負をするぐらいまで成長した。だが、三人が俺やユースと三対一をしてもボコボコにやられるぐらい実力差はあった。三人は悔しがっていたが、ユースがその悔しさをバネに頑張りなさいと励ますと、三人は闘志を燃やし何度も俺かユースに三対一を申し込んできた。俺たちは三人の覚悟を尊重するために三人がやめるまで付き合った。三人はへとへとになりながらもとても満足げな表情をしており三人の成長が楽しみだ。それはユースも同じようでいい表情をしていた。

次回もお楽しみに


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