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アルカディアリベル  作者: 描空


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59話 サポート魔法

 水戸さんにプライシディウムとプライシディウムプロテンを教わった日から早一ヶ月が経った。いつもと変わらない日常を送りもうそろそろ教わりに行ってもいいかなと思った。一ヶ月も経ったんだしちょうどいいはずと思い水戸さんに会いに行くことにした。忘れられた記憶の断片(アルカディアリベル)の中に入ると水戸さんが暇そうに大きなあくびをしていた。


「お久しぶりです水戸さん」


「うわぁ! ビックリしたぁ……」


「す、すいません」


「こんな急に来るって思ってなくてこっちこそごめんなさいね。それより本題はって聞かなくても分かるけど」


「それじゃあお願いしてもいいですか?」


「もちろん。何でも教えてあげるわ」


 何から教えて貰おうか少し考えた。前回は保護魔法だったから今度は戦闘に役立つ魔法でも教えて貰おうかなと考えていると水戸さんが言った。


「悩んでる?」


「いえ、決まりました。戦闘に役立つ魔法を教えてください。アークシィリュームとは違う方向のってありますか?」


「ええあるわよ。て言ってもサポート魔法の根本は味方にマナを作用させる魔法だから全く違う方向のサポート魔法は保護魔法ぐらいだわ。マナって何でも出来るようで結構限られてるから新しい魔法を生み出すのも難しいのよね」


 水戸さんの言葉に納得した。確かにマナはサポート魔法だったり攻撃魔法、保護魔法、治癒魔法と様々な事を可能とするが、無から有を生み出したり既存の物を変質させるなどの事は出来ない。マナはモンスターを倒したりするのには有用だが、日常生活では使う場面が少なくマナはそこまで有能ではないのだと思った。だからこそ、マナを上手く使える人は攻略者になって成功しているんだなと感じた。もしかしたら、俺もトールさんたちのように成功者側の攻略者になれるかも知れない。そう思うとやる気が出て来た。水戸さんは俺の表情からやる気を感じたのかニコッと笑い言った。


「いい顔になったね。もしかして独自の魔法でも作るつもり?」


「え? いやいやそんな事考えてないですよ」


 水戸さんの見当違いな言葉にすぐに否定した。でも、水戸さんは違った。


「えー小出くんから出来ると思うけどなぁ。まぁ今日のところはサポート魔法って事でやろっか」


 水戸さんの言葉に俺はもしかしたら独自の魔法を作り出せるのかと思った。俺のマナ感知はじいちゃんも唸らせるほどだしもしかしたらもしかするのかも知れない。そう思うと俄然やる気が出て来た。


「それじゃあ今日やるサポート魔法は、プライシディウムと似てるんだけどちょっと違うコジィタティオニスってサポート魔法だよ。コジィタティオニスはプライシディウムみたいにバリアを張るみたいな感じなんだけど、マナに他のマナを反射する性質を持たせるの。コジィタティオニスは反射させるっていう性質を持たせるのが結構難しいんだけど、小出くんなら楽勝でしょ!」


 そう言う水戸さんは満面の笑みだった。その自信はどこから来るのか不思議に思ったが、俺のマナ感知がそれだけ優れていると思うことにした。コジィタティオニスのマナに反射する性質はゲームやアニメなどでそういう描写を見ることが多々あるので容易に想像出来た。そのイメージをそのままマナに持たせ自分の前に出現させた。プライシディウムと同様に透明で本当にあるのか分かりづらく水戸さんは俺がコジィタティオニスを作り出したのに気づいていなかった。


「出来ました」


「どこにある?」


「俺の目の前に出しました」


「それじゃあ確かめるために魔法撃ってみるからちょっと横に移動して」


 水戸さんの言われた通りに離れた。俺はコジィタティオニスを地面に垂直に出していたため少し上に傾けて反射した魔法が水戸さんに当たらないようにした。すると、水戸さんが手のひらサイズの火魔法をコジィタティオニスに向かって撃った。見事にコジィタティオニスは水戸さんの火魔法を反射し火魔法が放物線を描き水戸さんの後方に落下した。


「完璧だね」


 水戸さんに褒められ嬉しくなった。でも、まだまだ満足出来ていないため水戸さんにもっとサポート魔法を教えてもらえるように言った。


「もっと他にも教えてください」


「うーん……何を教えたら一番役に立つか分からないから私の好きなサポート魔法教えるね」


「はい」


 そう言うと水戸さんは少し目を瞑り右手を俺に向けて来た。俺はプライシディウムプロテンのように人に使うタイプのサポート魔法だと理解し動かず待っていた。すると、水戸さんが目を開け言った。


「右腕でその刀振ってみて」


 俺は言われた通り氷刃剣を振ってみた。すると、軽く振ったにもかかわらず空間を切り裂くようなスピードで振っていた。自分が意識して使った力と相反する力に戸惑っていると水戸さんが説明してくれた。


「今使ったのはアークシィリュームとほぼ同じなんだけど部位ごとに作用させるスペチーフィカってサポート魔法なの。アークシィリュームは全身にマナを巡らせるけどスペチーフィカはどこか一部分だから局所的に力が強くなるの。だから、モンスターにトドメの一撃をくらわせる時とかに有用だよ」


 水戸さんの言葉を聞いてふと疑問に思った事を聞くことにした。


「ちなみに頭にやってみたらどうなるんですか?」


「それを試した人がいるんだけどある程度なら集中力向上とか思考力が高まったりするんだけど、やりすぎると悪影響が出るらしいからやめておきな。人間なんて十分賢いんだし必要ないからさ」


「そうなんですねやめときます」


「それがいい」


 おそらく水戸さんは俺のことを気遣って悪影響が出るとしか言わなかったのだろうが、何となく脳に障害が出るかも知れないということが何となくだか理解出来た。


「試しに右腕だけにマナを循環させてみて。もし出来るなら両腕やってみてもいいかもね。でも、どっちかが疎かにならないようにね」


「はい」


 まずは右腕にマナを循環させた。アークシィリュームの応用のような感じだから難なく成功した。次は左腕だ。左腕も右腕同様にマナを循環させた。その間も右腕にマナを循環させる感覚を保ちながらやった。左腕も成功し両腕にマナを循環させる感覚を保ちながら体を動かした。両腕の力の強さに驚きと感動を覚えた。今度は腕じゃなくて足にスペチーフィカを使ってみた。試しに走ってみると、車のように速く走れてテンション爆上がりだった。ジャンプをしてみるとゆうに三メートルほど跳び着地が怖かったが、スペチーフィカのおかげか大丈夫だった。


「スペチーフィカって凄いんですね」


「そうなの。だからサポーターの攻略者はスペチーフィカを使えるかどうかが一つの選定基準にもなってるの」


「ちなみに水戸さんって攻略者歴どのぐらいなんですか?」


「十年とかだよこの外見のまま死んじゃったからさ」


「そうなんですね」


 何だか申し訳ないことを聞いたと思ったが、それだと武帝とじいちゃんの差は何なのだろうと思った。武帝は人に忘れられて一人で死んだと聞いた。武帝として活躍した後に老衰で死んだように言っていたが、それが嘘なのではないかと思った。こうなったら聞かないとモヤモヤして気持ちが悪いので聞きに行くことにした。


「今日はこの辺で失礼します。また教えてください」


「分かった。待ってるね」


 俺は武帝の所に向かった。武帝は俺が来ると少し驚いていた。久しぶりの俺の来訪に何かあったのかと思ったのか少し落ち着きがなく言った。


「な、何かあったのか?」


「ちょっと聞きたいことがありまして、実は今サポート魔法を教わってるんですが、その人は三十代ぐらいの女性でおそらくその歳の時に亡くなった感じでした。じいちゃんも老衰だろうし納得出来ます。シロは狼だから例外として、武帝は何で全盛期みたいな外見なんですか?」


「ほとんど自分で正解言ってるようなものだけどな」


「ん?」


 武帝が何を言ってるのか分からず困惑していると武帝が呆れたように言った。


「ここにいる奴らは全員全盛期の状態だ。お前のいう通りだったろ? 全盛期みたいな外見って」


「……確かに言った」


「ちょっと落ち着いて考えたら答え導き出せたんじゃないか?」


「……はい」


「ダンジョンで冷静さ失わないようにな」


「はい。なんかお騒がせしました」


 現実に戻る時、武帝が笑っているような気がした。さっきまでなんか変な雰囲気で気分も落ち込んでたけど、武帝が笑ってくれたと思うと少しだけしてやったりといった感じがしてまぁいいかと思えた。

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