58話 新たな師
競技会が終わりいつも通りの日常を過ごしていた。学校に通い部活をして汗を流す。そんな学生なら当たり前の日常を繰り返しあっという間に今年が終わりそうになっていた。ついこの間まで夏だったのにもう冬なのに時間の流れる早さを実感した。たまにじいちゃんたちに色んなことを教えてもらいに忘れられた記憶の断片の中に入ったりシロと遊ぶために入ったりしていたが、シロより先にどんな人がいるのか、そもそも人がいるのかすら知らない。そんなこと思っていると無性に知りたくなりじいちゃんに聞いてみることにした。
「じいちゃん、ここって武帝とシロ以外に誰かいないの?」
「いーっぱいおるぞ。と言っても全員が全員儂らみたいに健ちゃんに生前の技術を教えてくれるかは分からないから博打のようなもんじゃな」
「そうなんだ。ちなみにどんな人がいるの?」
「本当に色んな人がいるからのぉ、女性攻略者から武道家、軍の魔法兵士までおるから特定の人を探しに行くのは困難じゃろうな」
「本当にいっぱいいるんだね」
「別の人にも教わりたいのか?」
「うーん……」
じいちゃんの何気ない質問に俺は少し考えた。最初はどんな人たちがいるのか知りたい一心だったが、色んな人がいるのなら色んなことを学べるだろうし学べるのなら学びたい。だけど、それだとどれも中途半端になってしまう可能性もあるからと頭を悩ませているとじいちゃんが言った。
「会ってみたいなら会いに行けばいい。武帝の時もそうじゃったじゃろ。知的探究心を抑制することなんて誰にも出来ないんじゃ。それに、大人になったら学びたくても学べなくなることの方が多い。今のうちに後悔のないようにやりたいことは全部やりなさい。人生の先輩からのアドバイスじゃ」
「ありがとうじいちゃん。行ってくる!」
じいちゃんに感謝を告げコンベルタと三回唱えた。シロの次の場所まで行くとそこには中学生ぐらいの身長の女性がいた。その人は端正な顔立ちをしており、目つきは鋭く身長と顔のビジュアルのギャップに驚いているとその女性が言った。
「そんなにジロジロ見つめないで」
「あっすいません。俺、小出健斗って言います。あなたに攻略者として必要な技術、情報を教えていただきたくやって来ました。どうかこの小童にあなたの持っているものを叩き込んでください!」
俺が頭を下げながら言った。すると女性が言った。
「別に教えてあげてもいいけど君はどうなりたいの?」
俺は少し考えてから答えた。
「仲間を誰一人死なせない攻略者になります」
「断言しちゃうんだね。その気概嫌いじゃない。でも、仲間を誰も死なせないのは簡単じゃないよ」
その人は真剣な眼差しで俺を見つめながら言った。俺はその人に自分の覚悟を示すように見つめ返した。
「覚悟は出来てるんだね。それじゃあ君が今どのぐらい出来るか見せて。それで私が教えられるのが何か判断する」
「分かりました」
指示された通り俺は出来ることを全てやってみせた。現代魔法から古代魔法、氷刃剣を使った近接戦闘をやった。その人は驚きと同時に笑みも浮かべていた。どんな感想を聞かせてくれるだろうと思っているとその人が言った。
「ごめん正直舐めてた。攻撃面に関しちゃ私よりも君の方がよっぽど凄い。って言っても私の本文がそっちじゃないから教えられることはいっぱいあるよ。それより自己紹介がまだだったね。私は水戸佳澄よろしくね」
「よろしくお願いします。自分、アークシィリュームしか使えなかったんでサポート系教えて欲しかったんですよ」
「そうなんだじゃあ教えるのはサポート系だけでいい?」
「もちろんです!」
そこから水戸さんにサポート魔法を基礎から叩き込んでもらうことになった。学校ではまだ基礎的な事しか教えてもらっておらず、二年生から専門性がらしいのだ。でも、俺は今のうちから学べるだけ学んでおこうと水戸さんにサポート魔法を教えてもらうのだ。
「ちなみにアークシィリュームはどのレベルで使えるの?」
「二人に使いながら戦うことは出来ます」
「……マナ感知バケモノじゃん」
水戸さんは呆れたような驚いたようななんとも言えない顔で言った。じいちゃんからもマナ感知を褒められたが、自分ではいまいちどのぐらい凄いのか分からずなんとも言えない反応をするしかなかった。
「もっと誇りに思えばいいのに。それじゃあ保護魔法から始めていこうか。保護バリアとか見たことあるでしょ、あれ。マナを薄く広げて固くする感じ。それ以外のことは意識せず一度やってみて」
俺は言われた通りやってみた。間藤さんが使ってた火の壁の火が無い版と考えると楽なものだ。
「出来ました」
「ん? どこにあるの?」
「え、目の前にありますけど」
俺の保護魔法はほとんど透明で目の前にあっても全然見えないほどで水戸さんは目を細めたりしてようやく見つけた。
「す、凄い……こんなに透明な保護バリア初めて見た」
「そうなんですか? 俺の学校の先生が使う保護バリアはちょっと霞んでたんですけどそれが普通なんですか?」
鷲田先生が選抜戦三年の部で使っていた保護バリアを思い出して聞いた。
「人によるから何とも言えないから一から説明するね。保護バリアは人によって透明度が違うの。その人のマナ感知のレベルからイメージの上手さまで色んなことが分かるんだけど、世間一般では透明度が低い方が簡単で透明度が高いほうが難しいって言われてるの。小出くんみたいに完全な透明な保護バリアを使うにはマナをそっくりそのまま保護魔法にする必要があるの。大抵の人はマナ感知がそこまで上手くないから不純物が入ったりマナが変質したりするんだけど、小出くんはそっくりそのまま魔法に出来てるから凄いの。分かった?」
「そうなんですね。ちなみに保護魔法って他にもあるんですか?」
「もちろんあるわよ。試しにやってみるわね」
水戸さんがそう言う俺に向かって右手を向けてきた。俺は何をされるのか分からず少し怖く思っていると水戸さんが言った。
「体見てみて」
水戸さんの言う通り体を見てみると、体の周りに保護バリアが張られているように見えた。
「これって保護バリアですか?」
「まぁ言ってしまえばそうだね。味方の体の周りに保護バリアを使うことで味方の行動を阻害することなく守れるっていう。適当に動いてみて。動きづらいとかないと思うから」
本当かと疑心暗鬼に思っていたが動いてみて驚いた。本当に動きを阻害することなく完璧に張り付いている。試しに強度がどのぐらいなのか手で確かめてみた。ドアをノックするようにコンコンとしてみると木と石の中間のような感じがした。ある程度の攻撃は防げそうだが、剣の直撃をくらったりしたらやばいだろうなと思うぐらいだった。
「試しにやってみる?」
「やりたいです」
「この魔法は保護バリアの内側は柔軟性を持たせて外側は強度を保つっていうちょっと難しいけど小出くんなら出来ると思うわ」
水戸さんの言葉を信じてやってみた。内側はクッションのように柔らかく、外側はそのままの強度で水戸さんの体を覆うように使った。
「出来ました」
水戸さんは自分の体を確認したが、俺の保護バリアが透明だったことを思い出しコンコンと叩いて確認した。
「なんか一発で成功されちゃうと私の努力が否定されたような気すらするけど、これが才能なのよね……」
「なんかすいません」
「いいのよ。それに私に出来ることは君に私が培って来た魔法を教えて他の人にも教えてもらうことぐらいしかないから」
「ならいっぱい教えてもらわないとですね」
「そうね。でも、今日はここまで。一度に色んなこと教えても定着しないだろうから。ちなみに今日教えた保護魔法の名前はプライシディウムとプライシディウムプロテンって名前ね。保護バリアが前者、人に保護バリアを張るのが後者。次来た時に教える魔法はまだ内緒。気になるからってそんなに早く来ないでよ。私が教えられる魔法は限られてるんだから」
「分かりました。楽しみしておきます!」
「それじゃあね」
水戸さんに別れを告げ現実に戻った。これでサポート魔法を教えてもらえるぞと喜んだ。
ゆっくりお待ちください




