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忘れられた記憶の断片から力を得れる俺は小出しで成り上がる  作者: 描空
学生編

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57話 ハンマーとリングと拳

 東京から帰って来た翌日、競技会に貰ったアイテムを確認することにした。リングと拳のどちらから確認しようかなと楽しみにじいちゃんと武帝の声が聞こえて来た。


(リングからじゃな)

(拳からだな)


 二人がそう言うと突然言い合いを始めた。


(こんな脳筋のことなんて放っておいてリングからじゃ!)


(何だとこのじじい! おい健斗、こんな老耄の妄言より俺様の言うことを聞くよな?)


(じじい!? 健ちゃん、こんな脳みそまで筋肉の筋肉バカの言うことより儂の言うことを聞くよな?)


 二人のバカバカしい言い合いを聞いているとなんだかやる気をなくした。それじゃあハンマーの方を確認することにした。その間もじいちゃんと武帝が何か言っていたが、そんなこと気にしないようにした。ハンマーの名前は万物潰崩(ばんぶつかいほう)と言い、この世にある全ての物を潰すことが出来るという星座級のアイテムだった。


「星座級!?」


 あまりの衝撃に声が出てしまった。すると俺の声に気づいた武帝が言った。


(ハンマーで良かっただろ? 俺様の言うことに従って良かっただろ?)


 武帝のなんだか鼻につく言い方にちょっとムッとしたが、実際言うとおりにして正解だった。まさか星座級のアイテムだとは思っておらず興奮冷めやらぬ状態でいるとじいちゃんが言った。


(儂が言ったリングだっていいアイテムじゃぞ!)


 そう言うならとじいちゃんが選んだリングの説明書を開いた。リングの名前は死嫌(しけん)のリングと言い、装備者に危険が迫る前に教えてくれるという物らしい。等級は英雄級でハンマーには劣るが、圧倒的に危険を事前に知らせてくれるという生存向きな効果でこっちの方が安心感たっぷりで万物潰崩よりこっちの方が嬉しかった。


(ほらいいじゃろ?)


「うん」


(な、なら拳も見てみろ。結論を出すのはそれからだ)


 武帝の言葉に拳のアイテムの説明書を開いた。拳のアイテムの名前は劣覆拳(れっぷくけん)と言い、対峙した相手と自分に力の差があったら相手と対等になるまで引き上げてくれるという星座級のアイテムだった。まさか武帝が選んだ二つとも星座級だとは思っておらず驚いたが、死嫌のリングの効果があまりにも有能でこっちの方が嬉しかった。武器系のアイテムは日常生活じゃ使えないが、リングとかの日常的に身につけられる物はいつでも使えるからこっちの方がいい場合もある。だが、攻略者となれば武器系のアイテムの方がいいだろうから優劣をつけることは出来ないなと思っていると二人が言った。


(どっちが嬉しいんじゃ?)

(どっちの勝ちだ?)


 別に勝ち負け争ってないし優劣つける必要なんてないんだから聞こえてないふりをしようとした時シロの声がした。


(何を争うことがあるんだ? 健斗が強くなって死ににくくなったんだからそれでいいだろ。大の大人がみっともない)


 シロの言葉にじいちゃんと武帝は言葉を発さなくなった。恥ずかしさからか正論を言われて気分じゃなくなったのかは分からないがうるさくなくなって清々した。とりあえず死嫌のリングを左手中指に嵌め万物潰崩と劣覆拳をどう持ち運ぼうか考えているとじいちゃんが言った。


忘れられた記憶の断片(アルカディアリベル)は万能でな、この中に物も収納出来るんじゃ。ハンマーなんて持ち運びづらいアイテムは収納しておくのがいいぞ)


 じいちゃんの言葉に武帝が何かいうのではないかと思い先手を打つことにした。


「ありがとうじいちゃん。そうさせてもらうよ。で、どうやるの?」


(右手に収納したい物を持って、左手に忘れられた記憶の断片を持ってレポノと唱えるんじゃ)


 俺が先に言葉を発してしまえば武帝も無駄に何か言うことはしないだろうと思い言ったが、予想通り武帝は何も言わなかった。じいちゃんの言われた通りやってみることにした。右手に万物潰崩を持ち左手に忘れられた記憶の断片を持ってレポノと唱えた。すると、万物潰崩が光となって忘れられた記憶の断片に吸い込まれた。


(取り出したい時はエクシィミートと唱えるんじゃ)


 試しにどんな感じで出てくるのか確かめるためにやってみることにした。


「エクシィミート」


 すると、光となって吸い込まれた万物潰崩が右手に光を纏いながら現れた。急に出て来たため重量にビックリしたが、この特性を活かしてモンスターの上空から落下攻撃出来たりするんじゃないかと思った。でも、そんな機会当分来ないだろうとレポノと唱え万物潰崩を収納した。劣覆拳も同様に収納した。扱い方は今度武帝に稽古つけてもらうときにでも確認しようと思い今は確認しなかった。これでもう特にやることはないかなと思っているとシロが言った。


(健斗、久しぶりに遊ぼ)


 無邪気に言うシロの誘いを断れるわけもなく遊ぶために忘れられた記憶の断片の中に入った。すると、シロがすぐさま俺に向かって走って来た。シロの巨体を正面から受け止めた。もふもふのシロを抱きしめられて幸せを感じているとシロが言った。


「早く遊ぼ!」


 それからシロが遊び飽きるまで遊んだ。追いかけっこをしたり一緒に走ったりボール遊びをしたりした。ここでは体力が減らないから遊び疲れるということがなく何時間も遊ばされた。シロより先に俺の方が遊び飽きたが、シロはここで独りでずっと俺のことを待っているのだと思うと遊び飽きたなんていう感情はどこかに飛んでいった。


「楽しかった!」


 そういうシロは満面の笑みでとてもかわいかった。俺はシロをわしゃわしゃと撫でまくった。本当に幸せだなと思っていた時シロが俺の服の首のところを噛み自分の体に寝かせるように倒した。突然の行動に驚いたが、シロは自分の背中に俺をもたれ掛かるようにして俺の膝の上に頭をおいた。シロは円を描くように体を曲げていた。動物って体柔らかいよなと思っていると白が言った。


「撫でて」


 子どもが親に文句を言うような口調で言ってくるシロの頭を撫でてあげた。シロのもふもふな体毛と高い体温に俺は次第に眠くなってきた。シロもあくびをして眠たそうにしており俺たちは一緒に寝ることにした。目を覚ますとシロは体勢を崩さず眠っており起きるまで撫でてあげることにした。ブラッシング出来るブラシでもあればしてあげられるんだけどなと思った。今度買って来て持ってこようと決めた。そんなこと思いながらシロの頭を撫でているとシロが目を覚ました。大きくあくびをしたシロの立派な牙が見えてやっぱり狼なんだなと思った。


「おはよ」


「おはよ」


 挨拶を交わしシロを抱きしめた。いつまでもここにいるわけにもいかないため次ここに来る時のためにシロ成分をチャージした。


「それじゃあ俺戻るよ」


「分かった。そうだ、今度はジャーキーとか持って来て欲しいな」


「分かったよ。それじゃあまたね」


 シロのなんともストレートな要求を飲み現実に戻ってきた。ペットを飼ってる人はこんな気分なんだろうなと思った。自分の飼ってる子が何をあげたら喜ぶのか何をしてあげたら嬉しいのかを考えて買い物をする。それがどれだけ幸せなのか理解できた。

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