56話 閉会式
競技会の全種目が終わり後は結果を待つだけとなった。明日、表彰式と閉会式を行うため結果が気になる生徒たちはずっとそわそわしていた。各々このために頑張ってきた生徒もいるだろうし、アイテムが貰えるとなれば誰でも嬉しいだろう。その時ふと思った。アイテムを貰えるのは何人なのだろうと。ちょうど藍先輩の連絡先を貰ったことだし聞いてみようとメールを送った。
『アイテムって何人まで貰えるんですか?』
と送るとすぐに返信がきた。
『年によって一個か二個増減するけど基本十人だね。僕と小出くんは貰えるだろうから心配しなくて大丈夫だよ』
出場者が約百人いるから十分の一しか貰えないのかと思ったが、逆に考えれば十分の一の確率でアイテムが貰えるのはかなりの高確率であり、ダンジョンで死の危険に晒されるよりは全然マシだと思った。競技会に参加したい生徒が多い理由を理解した。もうこのホテルとはお別れなんだと思うと名残惜しくなりホテルのありとあらゆる施設を利用することにした。金田先輩とユースの部屋のインターホンを鳴らしホテルの全施設を使おうと提案すると二人は快諾してくれた。晩ご飯を食べて少ししたタイミングであるためトレーニング施設を利用するのはさすがにやめておいた。まず最初は宿泊者が利用出来るビリヤードやダーツといった娯楽を楽しんだ。この三人で遊ぶことなんてこの先滅多にないだろうからいい思い出になるだろうと思った。ひとしきり楽しみ次は何をしようかと話すとユースが言った。
「ちょうどいいしナイトプール行かない?」
ユースのまさかの提案に俺と金田先輩は驚いたが、ユースの行きたそうな顔を見ると断れなかった。俺たちが宿泊しているホテルには屋内プールと屋外プールがあり、屋外プールでナイトプールが行われているようだった。でも、俺たちは水着を持ってきていないため入れないと思っていると貸し出し用があるとの事で俺たちは水着を借りた。ナイトプールには少ないが人がいた。みんなリラックスしておりいい雰囲気だった。そんなことを思っているとユースが水着姿で登場した。スタイル抜群で可愛らしいフリルの水着がよく似合っていた。
「どう?」
「「可愛い」」
「ありがとう」
ユースに聞かれた俺たちは思ったことをそのまま答えた。ユースは機嫌良く笑いながら返事をした。そこから俺たちはゆったりとナイトプールを楽しんだ。特に何かをするでもなくゆっくりとナイトプールの雰囲気を感じながら流れに身を任せたのだ。しばらくしてナイトプールを楽しみ終えた俺たちは最後に何をするか話し合った。
「ゆっくり風呂でも入ります?」
「それでいいかもな」
「お風呂から上がったらみんなでまたマッサージチェアに並んで何か話そ」
「「オッケー」」
もう特にやることは残っておらず後はゆっくりと睡眠時間まで過ごすだけとなった。俺と金田先輩は大浴場で一緒に湯船に浸かったりサウナと水風呂を行き来したり、電気風呂やジャグジーなどすべての風呂を楽しんだ。風呂から上がるとユースも同じタイミングで出てきた。きっと俺たちと同じくすべての風呂を楽しんだのだろうと思った。俺たちは風呂上がりの一杯を飲みマッサージチェアに横並びになり雑談をした。運営からアイテムは貰えるかや光正が勝ち抜きトーナメントで優勝出来るなんて思ってなかった、総合優勝はどこだろうなど明日の話題を眠たくなるまで話し尽くした。自然と眠くなりもう寝ようかと話し終えた。金田先輩が先に部屋に戻ると俺たちも部屋に戻った。ユースはいつも通り俺を抱きしめて眠りについた。これも慣れたものだと俺も眠りについた。
翌朝、いつも通りだが、最後のホテルでの朝食を食べ競技場に向かおうとしたところ俺たち三人の元に運営の人がやって来た。
「ダンジョン攻略で見つけたアイテムをお持ちしました」
そう言われ俺たちはアイテムを受け取った。それと同時に競技会が鑑定してくれたことを記した書類とアイテムの説明が書いてある書類も貰った。でも、俺は左腰に氷刃剣と右腰に豪嶽砕がありハンマーは持ち運びに困りホテルに置いて行くことにした。ハンマーは持ち運びに向いておらず失敗したかなとも思った。ハンマーを部屋に置き競技場に向かうと、競技場にはまぁまぁな人数の観客がいた。今日くらい家でテレビで見ればいいのにと思ったが、逆に今まで来られなかった人が来ているのかなとも思った。そんなことを思っていると実況が今日の予定を読み上げた。
「本日の予定としましては、優秀な戦績を修めた高校の表彰と獲得点数トップ三校の表彰を行います。その後優秀な選手に対するアイテムの贈呈を行いますが、トップ三校には高校に様々な補助金や支援が行われますのでアイテムの贈呈はございません。最後に閉会式を行います。それで本日の予定は以上となります。それでは表彰式を行います。まずは優秀な戦績を修めた高校から発表致します。一校目は明皇高校、二校目は桜花高校、三校目は白陵高校となります」
競技場はまさか五大校じゃない白陵高校が表彰されるとは思っていなかったのかおおーっと歓声というより驚きが全面に出た声が響いた。白陵の三人は大喜びしておりモンスター討伐で一緒に戦った仲だからこちらまで嬉しくなった。
「それではトップ三校を発表致します。第三位は日の本高校、第二位は信神高校、第一位は光正高校です!」
まさか俺たちが一位だとは思っておらず不意打ちをくらった。俺が驚きから呆然としているとユースと金田先輩が抱きついてきて言った。
「一位だよもっと喜びなよ!」
「そうだぞ一位だぞ。光正が総合優勝なんて数えられるぐらいだ! これも全部小出のお手柄だ!」
二人に褒められ素直に喜ぶことにした。しばらく喜びを噛み締めた。観客席からは賛辞の言葉がしばらく送られ続けた。その賛辞を一身に浴びて優勝の余韻に浸った。実況が続けて優秀な戦績を修めた選手を発表した。
「それでは優秀な修めた選手を発表致します。それではモニターをご覧ください」
そう言われた俺たちはモニターを見た。俺とユース、金田先輩の他五大校のエース的な人と白陵の三人の十人の名前が表示されていた。まさか白陵の三人がここでも評価されるとは思っておらず驚いた。きっと俺たちが見ていないところでかなり頑張ったのだろう。素直に拍手を送った。
「それでは十名の皆さんは運営の元に集まってください」
そう言われ俺たちは運営の人たちがいる場所に集まった。道中、白陵の三人にモンスター討伐のことを感謝されたが、当然のことをやっただけだから気にしないでいいと言い三人の努力が身を結んだんだと励ました。そんな話をしていると運営の元に着いた。
「皆さん分かっていると思いますが、公平を期すためにアイテムを選ぶ順番に先も後もありません。皆さん一斉に選んでいただきます。誰かと被った場合はじゃんけんか話し合いで決めてください」
俺たちの前には十五個のアイテムが並べられていた。なるべく被らないようにするために多く用意されているのだろう。剣から杖、リングなど多種多様なアイテムにどれにしようかと考えているとじいちゃんの声と武帝の声が聞こえてきた。
(そのリングじゃな)
(その拳のアイテムだな)
まさか二人の助言が一度に聞こえてくるとは思っておらず驚いたが、藍先輩にアイテムを譲ってもらえるため離れた場所にあるリングに目線を送りリングを取ってもらうようにした。
「決まりましたか? それではどうぞ」
運営の人の合図で俺たちは一斉にアイテムを取った。藍先輩はリングのアイテムを手に取っており、俺も誰とも競合することなく取れた。周りを見てみると全員被っておらずストレートに決まった。
「それでは各アイテムについての説明書をお渡ししますので受け取ってください」
運営の人が俺たちにアイテムの説明書を渡してきた。小さい冊子で数ページだけだが、分からない点を説明する手間を省くためにあるのだろうと思った。アイテムを受け取り元いた場所に戻ると閉会式が始まった。開会式と同様に厳かな雰囲気で執り行われた。閉会式が終わり俺たちはホテルに戻った。藍先輩からリングのアイテムと説明書を受け取った。
「それじゃあしばらく会わないだろうけど忘れないでね」
「忘れたくても忘れられませんよ」
「僕もそうだよ。先に攻略者になって待ってるね」
「はい。すぐ追いつきますから」
「僕も頑張らないとだ」
「それじゃあお元気で」
「そっちもね」
藍先輩と別れを告げユースたちと新幹線に乗り地元に帰った。約一週間ぶりの地元はなんだか懐かしく思えた。
「ただいまー」
「おかえり! 健ちゃんテレビ見たわよ! 一位なんて凄いじゃない! 夜みんな呼んでるからそれまでに後片付けしちゃって!」
母さんのいつも以上に高いテンションに気圧されたが、こんなに喜んでもらえると嬉しかった。後片付けを終え夜になると久しぶりの勝たちが家にやって来た。みんな再開を喜んでくれ話に花が咲いた。競技会の話をしたり母さんのご馳走を食べたりしてとても楽しいホームパーティーとなった。みんなが帰ると父さんが俺の顔を見ずに言った。
「自慢の息子だよ」
小っ恥ずかしいのかそっぽを向く父さんはなんだか人間味があって少し笑えた。
「会社の人たちに自慢してもいいよ」
「そうだな」
俺が冗談っぽく言うと父さんは笑って答えた。みんながこんなに喜んでくれるのが何よりも嬉しかった。こんなに嬉しいのなら今度は勝たちにも出場して欲しいなと思った。
ゆっくりお待ちください




