53話 ダンジョン攻略③
テラコーバスラヴァを倒した俺たちは冷え固まった溶岩の上に座り込んだ。そして、ドローンに向かって人差し指を立てた。運営の人曰くこれで食料と水が貰えるらしいが、どうやるんだろうと思っていると、近くの物陰から俺たちにルール説明をした運営の人が現れた。その人は手にはPFCバランスの整った食事と水が用意されていた。俺とユースはこの一瞬で食事を用意できたカラクリに疑問を持った。すると金田先輩が教えてくれた。
「新幹線の駅弁とかで蒸気で温める奴あるだろ? あれを魔法の力でもっと早く温められるようにしてるんだ」
金田先輩の言葉に続くように運営の人が言った。
「その通りです。私たち運営は出場者の皆さまに最高のコンディションで競技をしてもらうために様々な創意工夫をしておりますから。安心してダンジョン攻略を続けてください。そのための私たちですので」
運営の人の心強い言葉に俺たちの運営に対する好感度が一気に上がった。運営の人はその言葉を言い終えるとその場を去った。そこから俺たちは運営が用意してくれた食事を食べ少し休憩をした。体力が回復したので攻略を再開した。しばらく進みながら弱いモンスターを撫で斬りにしていたが、何故ここまで進んできたのにこんなに弱いモンスターしかいないのか不思議に思った。嵐の前の静けさとも言うので十分に警戒した。その時、金田先輩がスピードを落として言った。
「なんかおかしくないか? さっきまでモンスターが結構いたのにここらは全然だ」
そう言われて辺りを見渡すとゴブリンやスケルトンなどどこにでもいるようなモンスターすらいなかった。どうしていないんだと不思議に思っていると金田先輩が完全に立ち止まった。金田先輩を見ると目の前を見つめながら口が半開きで固まっていた。俺とユースは金田先輩が見つめている目の前を見てみると、そこにはとても大きな壁画があった。ドラゴンが荒々しく描かれており見入ってしまうほどの迫力だった。
「凄いな……」
金田先輩が言葉を漏らした。その言葉に嘘偽りはなく本音だと直感が言っている。金田先輩の言葉に俺も嘘偽りなく本音で共感出来た。すると、ユースが言った。
「なんでダンジョンにこんな人工物があるの?」
俺と金田先輩は確かにと不思議に思った。ダンジョンはモンスターの住処であり人間は住めるような環境ではない。なのに、ここには文明があったであろうとても大きな壁画があり明らかに人間が住んでいた場所だ。だが、周りを見てもこの壁画以外の物はなくさらに疑問が深まった。
「て言うかここで終わりなのか?」
金田先輩の疑問を解決する術はなくどうしようかと立ち尽くしているとどこからか鼻息のような音が聞こえて来た。俺たちは顔を見合わせてその音の正体を確かめに行くことにした。音のする方向にゆっくり進み始めたが、その音を出している正体の元には一向に辿り着かなかった。だが、音の大きさは着実に大きくなっておりとても大きなモンスターがいるのは確実だろう。しばらく進んでいると鼻息のような音はとても大きくなり空気を振動させているのが分かるほどになった。
「金田先輩ヤバいですって!」
俺はその異様なほどの存在に恐怖していた。
「確かにヤバそうだよな……」
「私ももう無理」
全員の意見が一致したためそれ以上は進まないようにした。空気を振動させるほど大きなモンスターであろう相手に何の策もなく近づくのはさすがのバカでもやらないだろう。それに、俺たちが恐怖したのは生存本能からくるもので、シロが言っていた野生の勘を信じろという教えにも則しているので即刻引き返した。俺たちは他のモンスターを倒して三日間という制限時間を待つことにした。だが、俺たちは爆速で攻略しようという思いの元やっていたため、まだ一日と半日ほど時間がある。それまで暇でどうしようかと悩んでいると金田先輩が言った。
「あの音の正体だけでも確認する?」
金田先輩の提案に俺は首を横に振った。ユースも同様に首を横に振った。下手に刺激して戦うことになったらどうしようもないし、運営の人にも迷惑がかかるだろうからやめようということだ。
「まぁそうだよな。でも、どうする?」
俺たちは少し考えた。でも、結論が出ないので運営の人に質問するためにドローンに向かって人差し指を立てた。運営の人が食事と水を持って来てくれたので質問をした。
「あのー、分かってると思うんですけど俺たちあの音の正体とは戦いたくなくて、制限時間まで待つことになると思うんですけど大丈夫ですかね?」
「それは仕方ないことですので大丈夫です。過去にもモンスターから逃げたけどギブアップはせず制限時間まで待った人たちもいますので。ですが、倒したモンスターに応じて点数が加算されるので倒せそうなら倒した方が得ですね。でも、怪我をしたりしたら元も子もなのでやらなくても全然いいと思いますよ」
運営の人も言葉を聞いた俺たちは待機することにした。でも、待っているだけじゃ暇だなと思いもう一つ質問した。
「このドローンを使ってあの音の正体を探ることって出来ませんか?」
俺がそう聞くと運営の人は少し難しい顔をしながら答えた。
「出来ないことはないですが、万が一モンスターに怒らせてお三方に被害が出るなんてことあってはなりませんから」
「そうですよねすみません」
俺が謝ると運営の人は俺が悪いのに申し訳なさそうな顔をしていた。するとユースが聞いた。
「ギブアップじゃないけど早めに終わることって出来ないの?」
「多分出来ないことはないと思うんですけど、視聴者の皆さんもいるので……」
全ては言わないが、もう全て言っているような言い方に運営の人も大変なだなと思った。でも、あんなモンスターと戦えるほど俺たちは強くなく残っているモンスターも少ないだろうしどうしようかと思っているといい案が思いついた。
「そうだ、みんなでアイテム探ししようよ。それなら時間も稼げるしアイテムがあったら嬉しいし」
俺の言葉に二人は賛同してくれた。運営の人もそれならと許可してくれた。それから俺たちはダンジョンの中をくまなく探索した。その結果、アイテムが三つ見つかった。一つ目はとても大きなハンマー、二つ目は片手で持てるタイプの小さな杖、三つ目は薙刀だった。ちょうど三人で三つなので一人一つ貰うことにした。
「俺杖欲しいんだけどいい?」
金田先輩が俺とユースに問うてきた。俺たちは杖を持っているので金田先輩に杖を譲った。
「健斗はどっちがいい?」
ユースの問いに俺は少し悩んだ。大きなハンマーは破壊力は凄まじいだろうが、慣れるまで時間がかかるだろう。だが、ハンマーは薙刀ほど扱いは難しくないだろうしと悩んでいると武帝の声が聞こえてきた。
(お前の戦い方ならハンマーの方がいいだろう)
武帝がそこまで言うならとハンマーにすることにした。
「ハンマーがいい」
「オッケーなら私が薙刀ね」
俺たちはアイテムを確かめるように試運転し始めた。ハンマーはかなり重く慣れるで振り回されたりしていたが、しばらく使っていると結構扱えるようになった。それじゃあこのハンマーの力はどんなものかを確認することにした。氷刃剣みたいに力を込めるだけで使えるタイプならいいが、豪嶽砕みたいに特殊なタイプなら今確認するのは無理だなと思いとりあえず力を込めて振ってみた。でも、特に何もなく肩を落としているとユースも同じように肩を落としていた。
「そっちもダメ?」
俺が問いかけるとユースは頷いた。これじゃあ今確認するのは無理だなと思っていると運営の人がやってきた。ドローンに指を立てていないのにと思っていると運営の人が言った。
「お疲れ様です。これにてダンジョン攻略終了です」
俺たちはようやく終わったかとダンジョンを後にした。俺たちはそのままホテルに帰されるのかと思いきや競技場に着いていた。三日間もダンジョンにいたから体調を崩していないか検査するようだ。俺たちは特に異常なしですぐに終わった。俺たちはついでにと運営の人にアイテムを鑑定してもらえないか聞いてみたところ了承を貰えたので運営の人にアイテムを鑑定してもらえるように手配してもらった。もう用事もないしホテルに戻ろうとした時運営の人から明日は体を休めるための休息があると教えてもらった。さすがに休息あるよなと安心した。俺たちはホテルに戻り疲労を取るためにマッサージチェアにお世話になった。
ゆっくりお待ちください




