50話 個人戦②
勝ち抜きトーナメント個人戦、いよいよ最終盤となった。ここからの試合は一組づつとなり、まずは俺と明皇の生徒との試合だ。相手は明皇の魔法使いで、チーム戦の時に火魔法で俺の爆発魔法を防いだひ 人だ。その人は反射神経、魔法選びはかなり良いが、近接を相手にするのは苦手としているのかチーム戦では即決着がついた。今回も速攻が有効だろうと思い速攻を仕掛けることにした。だが、今回は少し嗜好を変えてやってみることにした。今まで速攻を仕掛ける時は普通にダッシュしたり、アークシィリュームで身体能力上げてやっていた。それを風魔法で一気に距離を詰められるようになったら、相手の意表を突くことも出来るだろうし、空中での戦いも可能になるかも知れない。相手には申し訳ないが、実験台となってもらうことにした。
「小出選手、今回はどんな戦い方を魅せてくれるのか?」
実況の期待を煽るような文言に観客たちは息を呑んで俺の試合が始まるのを待っていた。レフェリーの合図で試合が始まると同時に、足の裏に集中させていたマナを風魔法に変換し相手に向かって射出するように突っ込んだ。相手も驚いていたが、やった俺も驚いた。まさかこんな上手くいくとは思っておらず、次の一手を繰り出すのを忘れていた。互いに驚き数秒間虚無の時間が流れた。俺は氷刃剣を抜刀し攻撃したが、相手は杖で防いだ。距離を取られてはこちらが不利になるため、なるべく相手に距離を取られないように近接戦闘を続けた。相手は防ぐので手一杯という感じでそのまま押し切り勝利を収めた。
「さっきのあれ何?」
「さっきの風魔法だよ」
待機場所に戻るとユースと金田先輩からさっきの風魔法は何だったのかと聞かれた。
「いや、どうなるのかなって思ってやってみたらなんか思ってた感じと違くはないけど違うっていうか……」
俺は事実を話した。と言っても説明にはなっておらず二人は全く納得していなかった。
「あーと、なんて言うか速攻を仕掛けるいい方法は無いかなって思ってやってみた結果があれで、まぁ実戦投入は一応出来ると思うなぁって」
二人は何となく理解してくれた。俺が速攻の新たな選択肢として風魔法を用いたということは説明出来たためこれでよしとした。そんな話をしていると金田先輩の番となった。金田先輩の試合が始まると同時に金田先輩が俺が先ほど使った風魔法での速攻をやった。相手はまさか金田先輩も使ってくるとは思っておらず完璧に油断しておりすぐに決着がついた。
「あれいいね。勝手に使っちゃってごめんね」
待機場所に戻ってきた金田先輩は開口一番謝罪をした。
「いえいえ、別にいいですよ。それよりどうでした?」
「結構不意打ちになるから使えるかも。でも、使い過ぎは良くないね。結構相手に向かっていく時に隙があるから、風魔法で相手の隣を通り過ぎながら斬るぐらいの感じじゃないと防がれるな」
金田先輩の助言を元に古代魔法なら再現可能だと思った。でも、さすがに競技会で使うのは相手が人間なため気が引けた。ダンジョン攻略なら有用だと思った。速攻のことを考えていたらいつの間にか次はユースの番となった。ユースは試合が始まると雷王の剣で体に雷を纏った。相手は雷のせいで攻めること攻めることは出来ず悔しそうにしていた。でも、相手は決して諦めず勇猛果敢にユースに攻めにいった。ユースは相手の覚悟に敬意を表するように一太刀で勝利した。最終盤一回戦が終わった。美園藍はシードの位置で今回は戦わなかった。残すところ人数は八人。最終盤二回戦が始まった。俺が最初で、相手は日の本の特大剣の人だった。この人のアイテムは面倒なため魔法メインで戦うことにした。レフェリーの合図で試合が始まった。俺は距離を取り爆発魔法から火魔法、雷魔法を撃った。だが、相手は特大剣でダメージを最小限に抑えていた。すると、相手が実戦場の地面に特大剣を突き立てた。地震が来ると思った俺は風魔法で空中に逃げた。でも、それはブラフだった。相手は身体能力で空中の俺の所まで飛んできて特大剣で攻撃してきた。間一髪のところで風魔法による回避が間に合ったが、次はないと思った俺はさらに高く浮かび上がり落雷を落とした。相手はさすがに耐えきれず俺の勝利となった。
「いやー危なかったぁ」
「ギリギリだったね。まさかあんなに飛べるなんてね」
「本当ですよマジ焦ったー」
待機場所で雑談をしていると金田先輩の番となり、金田先輩はあっさりと勝利した。この人も十分強いんだよなと思っていると次はユースの番で、金田先輩と見守った。ユースは俺に見せつけるかのように落雷を落とし勝利した。金田先輩とそのことについて話していると美園藍の試合が始まった。美園藍の相手は味方の信神の一人でありギブアップが選ばれ美園藍は勝ち上がった。本当にギブアップするんだと思っていると、俺の番になった。そこで気がついたが、相手は金田先輩だった。俺が困惑していると金田先輩が落ち着くように言った。
「俺がギブアップするから決勝頑張ってね」
「あっ、え……」
試合が始まると同時に金田先輩がレフェリーにギブアップを宣告し決勝まで行ってしまった。俺何とも言えない感情を抱えているとユースと美園藍の試合が始まった。試合が始まる前に二人は何か話していた。何話してるんだろうなと思っているとレフェリーの合図で試合が始まった。と同時に終わった。なんと美園藍がギブアップを選んだのだ。
「えっ? こ、これは美園藍選手、ギブアップを宣告したようです……えーと、決勝は小出選手とユース選手となりました……」
実況は今までで一番活力のない言葉で現状を把握出来ていないようだった。観客たちはまさか美園藍がギブアップするなんて思っておらず所々でブーイングをしている人もいた。でも、大半の観客たちは現状を把握するのに精一杯のようだった。ユースが待機場所に戻ってくると美園藍と何を話したのか聞いた。
「何話してたの?」
「アイツ、僕じゃ小出健斗には勝てないから君が勝ってくれって。自分勝手なやつよね」
そう言うユースは誰が見ても不機嫌だと分かる顔だった。そんな話をしていると俺とユースの決勝戦となった。俺たちは実戦場に上がり向かい合った。
「全力でかかってきてね」
「もちろん」
ユースの言葉に俺は自信を持って答えた。レフェリーの合図で試合が始まった。ユースは速攻を仕掛けてくると思ったが、雷王の剣で雷を蓄積しているようだった。そんな隙だらけなところを攻撃しないわけもなく、爆発魔法を撃ったが、雷によって防がれた。面倒くさいなと思ったが、この時間で古代魔法を使えばいいと思いマナを凝縮させて、その上からさらにマナを上乗せして指数関数的に威力が跳ね上がるようにした。古代魔法の準備が出来ると同時にユースも準備が終わったようだった。俺たちは目が合い互いに笑みを浮かべた。俺たちは互いに落雷を発生させた。俺の落雷は青白い雷でユースの落雷は真っ白だった。互いの落雷をくらい俺たちは倒れた。ノーガードで撃ち合ったのだからこうなるのは自明の理だ。でも、勝敗を分けたのはアイテムだった。俺は笑みの寵愛の効果でなんとか立ち上がった。ユースは倒れたままだった。俺は勝利を噛み締めた。
「勝者は小出健斗選手だー!」
勝ち抜きトーナメントはチーム戦も個人戦も俺の勝利で終わった。トーナメント後、様々な会社のスカウトの人から声をかけられたが、休ませてほしいと今度にしてもらうことにした。金田先輩とユースがいる治療室に向かった。俺がこの前寝ていた場所がそこだ。部屋に入るとユースが退屈そうにイスに座っていた。おそらくまだ完全に治療が終わってないから待っているように言われているのだろう。俺たちに気がつくと暇が紛れると思ったのか表情が明るくなった。
「いやー負けた負けた。まさか雷魔法でも負けるとは思わなかった。完敗だね」
「俺だって努力してるからな」
「まぁでも、もうここからは共闘しかないなら気が楽だわ。ダンジョン攻略でも一位目指すわよ」
ユースの前向きな発言に俺と金田先輩は頷いた。ユースの治療が終わりホテルに戻った。さすがにホテルまでスカウトの人は来ておらず安心した。明日はダンジョン攻略だからしっかり体を休めておこうとゆっくりした。二人も同じ考えで、今日の疲労を癒すように三人並んでマッサージチェアを利用した。
ゆっくりお待ちください




