47話 休息①
美園藍との戦いが終わり気絶から目覚めた俺は保健室のような場所にいることに気がついた。俺は体を起こし辺りを確認すると、隣のスペースで誰か寝ていることに気がついた。カーテンで中の人物が誰かは分からないが、十中八九美園藍だろう。ついさっき戦っていた相手と顔を合わせるのはさすがに気まずいためその部屋を後にしようとドアを開けようとした時、誰かによってドアが開けられた。目の前に松本先生が立っておりたわわに実った双丘が俺の視界を塞いだ。
「大丈夫だから……って小出くん!? ご、ごめんね先生前見てなくて」
「い、いえ声をかけなかった俺も悪いのですみません」
「それより体調大丈夫?」
「はい特に怪我はしてませんので。それより勝ち抜きトーナメントはどうなったんですか?」
「なんと、光正が優勝よ! 小出くんが倒れた後、金田くんとユースさんが二人で全員倒しちゃったの。小出くんが信神を倒してくれたから得られた優勝よ。このまま個人戦も頑張ってねって言いたいところだけど、明日から二日は休息期間だから東京観光して来たら?」
「え! いいんですか?」
「もちろんよ。鷲田先生がそう言ってたんだから」
「最高じゃないですか。ここからホテルまでってどう行くんですか?」
「案内するわ」
「ありがとうございます。……ん?」
部屋を後にする時、誰かの声が聞こえてような気がするが、気のせいだと思い振り返らなかった。
「クソ! 僕が負けるなんて……悔しい……悔しい……」
その時部屋のドアが開いた。カツカツとこちらに向かってくる足音に不信感を持っていると声をかけられた。
「美園くんいる?」
その声は信神の保健室の先生の声だった。だが、今先生と話す気分にはなれず返事をしないでいた。すると、先生が言った。
「もし傷がちゃんと治癒出来てなかったから言ってね。欲しい物があったら言ってね。先生は近くの部屋で待機してるから目が覚めたら顔出してねメモ残しておくから」
そう言うと先生は部屋を後にした。自分の不甲斐なさに涙が出そうになった。あんな一年に負けたことを根に持っている自分が嫌になった。
松本先生にホテルまで案内してもらい部屋に入りベッドに寝転がった。明日から二日休息かと思うと楽しみで仕方がない。どこに行こうかなどとスマホで調べていると部屋のインターホンが鳴った。
「はーい」
部屋のドアを開けるとユースさんが少し不満そうな顔で立っていた。
「戻って来たのなら連絡ぐらいしてよ」
「え、いやでも俺ユースさんに連絡する手段持ってないし」
俺がそう言うとユースさんは俺の手からスマホを奪い自分の連絡先をスマホに登録した。
「これでいいでしょ」
「は、はい」
「それより明日から二日間休みだけどどこか行きたいところとかある?」
ユースさんはそんな話をしながら部屋の中に入って来た。俺は断る理由もないので自然と受け入れた。
「今ちょうど調べてたところ。ユースさんは行きたいところある?」
「私は何個かある。健斗は?」
「俺は特に決めてないからユースさんと同じところ行こうかな。金田先輩も一緒でみんなで行動しようよ」
俺がそう言うとユースさんは再び不機嫌な顔になってしまった。何か嫌なこと言ったかなと思っているとスマホに着信が入った。春奈からの電話だったので出た。
「「「勝ち抜きトーナメント優勝おめでとう!」」」
春奈と勝と透の声以外に色んな人の声が聞こえて来た。時間的に放課後の時間なためクラスのみんなであろう。まさか、こんな電話がかかってくるとは思っておらず驚いた。
「ありがとう。て言うかみんな知ってたんだね」
「さっき授業終わってみんなでトーナメントの結果確認したんだよ。それで光正が優勝だって色んなところでネットニュースになってたし居ても立っても居られないって感じで電話したの」
「そうだったんだ。もうそんな大事になってるなんて」
「そうだ、金田先輩とユースさんはいないの?」
「ユースさんなら隣にいるよ変わる?」
「うん」
春奈にそう言われユースさんにスマホを渡した。ユースさんがスマホを受け取ると電話口からの優勝おめでとうの言葉にとても驚いていた。俺と同じでまさかクラス全員からおめでとうを言われるとは思っていなかったのだろう。しばらく話をしてスマホを返してくれた。金田先輩にも祝われて欲しいなと思い金田先輩の部屋を訪れた。金田先輩が部屋を開けるとスマホを手渡した。金田先輩は一瞬困惑していたが、電話口からのおめでとうにすぐに笑顔になった。少し会話をしスマホを返してくれた。部屋に戻り電話を続けた。
「ちなみに塩田先生はどんな反応してた?」
「心の底からガッツポーズしてたよ。て言うか学校中大盛り上がりだよ。まさかあの信神を打ち破ったんだからね。ほんと健斗は天才だよ。まだまだ競技会自体は続くだろうけど頑張ってね。別に他の種目でも優勝してもいいんだよ。まぁほどほどに頑張ってね。応援してるからね。ほらみんな」
「「「頑張れー!」」」
「ありがとう」
電話を切るとユースさんが柔らかな笑顔で俺のことを見つめていた。さっきまで不機嫌そうだったのに感情の入れ替わりが激しいなと思っているとユースさんが言った。
「明日からの予定立てましょ。色んな所行きたいから時間単位でスケジュール決めるわよ」
「はいはい」
ユースさんの指示に従い俺とユースさんは明日からの予定を立てた。
「やっぱりベタに浅草寺とかいいわよね」
「俺は東京スカイツリーに登ってみたいな」
「いいわね。アメ横とかも行ってみたくない?」
「分かる。食べ歩きしたい」
そんな感じで一日目の予定を立てた。大まかな行きたい所を決め、後は歩き回ったりフラッと入ってみたいところに入るみたいな感じにした。次は二日目の予定を決めることにした。
「明後日はどこ行きたい?」
「日本橋とか秋葉原行きたい」
「私も秋葉原は一回行ってみたかったから行きましょ」
「上野動物園も良くない?」
「確かに。パンダとか見たい」
二日目の予定も行きたい所を挙げ予定を決めた。予定を詰めすぎるのはさすがにのんびり観光を楽しめないため、予定はスカスカで行きたい所に行くことを重視した。
「それじゃあ私お風呂入って来るから今のうちに入っておいてね」
ユースさんはそう言うと部屋を後にした。普通に今日も俺を抱き枕にして寝るつもりなのだと理解した。今のうちにお風呂を済ませユースさんを待つことにした。スマホで東京の観光スポットを調べていると色んな場所があるんだなと思っていると部屋のインターホンが鳴った。ドアを開けるとユースさんが入って来た。あまりにも自然にパジャマで部屋の中に入って来て少しは警戒しなよと思った。でも、ユースさんにそんなつもりはないだろうし俺が意識しなければいいと耐えた。ユースさんがベッドに入り隣をポンポンと叩き俺に早く来いと言ってるようだった。俺がそこに寝転がるとユースさんがすぐに抱きついて来た。その時、金田先輩とユースさんが優勝まで戦ってくれたことへの感謝を忘れていたなと思い言うことにした。
「忘れてたけどトーナメントありがとうね。金田先輩と二人で優勝まで戦ってくれたんでしょ。松本先生が教えてくれたよ」
「だから疲れてるの。もっと私を労いなさい」
「ありがとう」
ユースさんに感謝の思いを伝えるために抱きしめた。すると、ユースさんが俺の胸の中で言った。
「頭も撫でて」
俺はユースさんの頭を撫でた。子どもらしいおねだりに小さい頃からトールさんたちが忙しくてあまり甘えられなかったのかなと思った。だから今もこうやって誰かに甘えてるのではないかと思うとユースさんが可愛く思えてきた。ユースさんはすぐに寝息を立て始め俺も瞼が重くなり睡魔に身を任せた。
ゆっくりお待ちください




