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忘れられた記憶の断片から力を得れる俺は小出しで成り上がる  作者: 描空
学生編

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46話 勝ち抜きトーナメント②

 小休憩を終えて勝ち抜きトーナメント三回戦目が始まった。信神高校と白陵高校の試合で、美園(らん)の強さとバケモノじみた精神性を見せつけられることになった。日の本高校の時のように美園藍は笑みを浮かべていた。


「美園藍選手、またしても清々しい笑顔です! その強さと美貌に日本中の女性はメロメロだー!」


 実況の言葉に美園藍は観客席に笑顔で手を振った。白陵の三人は美園藍がよそ見をした隙に攻撃を仕掛けたが、ノールックで三人の攻撃をガードし反撃もこなした。その人間離れした芸当に待機場所で見ていた俺たちは絶句した。未来が見えているぐらいじゃないと説明がつかない芸当にどうすればいいんだと思った。そんなことを思っていると、いつの間にか美園藍が白陵の三人を倒していた。次は俺たちの番だったが、目の前の相手より美園藍をどう対処するかを考えるほうが優先順位が高く、金田先輩とユースさんに相手を任せた。俺はちょっとだけ魔法で援護するだけで勝利した。四回戦目が始まるまで俺たちは他校の情報収集はせず作戦会議を始めた。なるべく周りに聞こえないように小さな声で話した。


「美園藍、アイツどうやって倒します?」


 俺が金田先輩とユースさんを見ながら聞くと金田先輩が答えた。


「アイツのアイテムがどこまで強力な物があるか未知数だから具体的な作戦は立てられないけど、二人が頼りだ。俺の爆斬刀の力は見抜かれてるし剣術で上回れるビジョンが見えない。だから、そこまで情報を掴まれてない二人が頼りなんだ」


 金田先輩の言うことは至極真っ当だが、あんなバケモノを相手にするなんてと思っているとユースさんが言った。


「分かりました任せてください」


 ユースさんは一切の躊躇いなく返事をした。その覚悟の決まった人としての格好良さに俺は自分を奮い立たせた。


「俺も頑張ります」


「よし。それじゃあ作戦として、手の内がバレてる俺が前衛をやるけど相手がどう動くのか分からないから一応臨機応変に対応出来るようにしてて。俺が美園と戦ってる間に二人は残りの二人を先にやってくれても構わない。というかその方がいい。でも、多分妨害されるだろうから最後までは出来ないと思う。二人はなるべく体力温存気味で魔法を使って欲しい。多分俺はそんなに役に立てないと思うから切り捨てて」


 金田先輩の現実的な作戦に賛成した。強敵を相手に隠し事をするなんて勿体無いと思いアークシィリュームを二人に支えることを話すことにした。


「実は俺、サポート魔法使えるんで速攻してもいいかも知れません」


 俺がその事実を伝えると二人は目を見開いた。一瞬どんな反応をされるか怖かったが、そんな杞憂無駄だったとすぐに理解した。


「本当か!? それなら戦略の幅は広がらなくても十分美園に対抗できるかも知れないぞ」


「いつの間に使えるようになってたのよ? 私にぐらい教えてくれても良かったんじゃない?」


 二人は少し違う感じだが、好印象を持ってくれており少し嬉しくなった。そこから少しだけ作戦を変更した。金田先輩が美園藍と戦うのは変わっていないが、俺とユースさんがアークシィリュームで身体能力を底上げし開幕速攻を仕掛け一対一になるようにする作戦だ。ただ、相手の実力が分からない以上下手なことは出来ないと、速攻を仕掛けて三分経っても倒せなかったら三人で美園藍に一斉攻撃をすることにした。もし、残りの二人が攻撃してきたら隙を探して一撃で倒すか、こっちに攻撃出来ないように妨害するように決めた。一番苦戦するのは美園藍との戦いであるのは明白であるため、なるべく手の内を明かさないようにもしなければならない。


「次は四回戦、信神高校と光正高校の五大校トップを決める試合となります! 信神高校が勝つのか光正高校が大番狂わせとなるのか見ものです!」


 ついに試合が始まってしまう。俺は自分に大丈夫だと言い聞かせ試合に臨んだ。美園藍を目の前にすると、その異様さは言い表せないものだと確信した。笑顔だから異様なのではない。人間として異様なのだ。何が普通の人と違うのか分からないが、とにかく異様だった。そんなことを考えているとレフェリーが試合開始を告げた。俺は二人にアークシィリュームを使い自分にも使った。二人はニヤリと笑い速攻を仕掛けた。金田先輩の驚異的なスピードに美園藍の笑顔が崩れた。俺とユースさんはその間に残りの二人を倒すことに集中した。俺の相手は短剣を持っており素早い攻撃を得意としてそうだったので氷刃剣で凍らせることにした。俺が正面から斬り掛かると相手は受け止めることはせず回避に専念した。これではずっと逃げられて体力を削られるだけだと確信した俺は、戦いの中で地面に爆発魔法を設置することにした。なるべく攻撃の最中に爆発魔法を設置したので相手は気づかず爆発魔法に当たってくれた。相手が爆発魔法で倒れているところに氷刃剣を突き立ててギブアップさせた。


「ああっと信神高校、エースの美園藍選手を残して二人ともギブアップだー!」


 実況の言葉にユースさんの方を見ると互いに目が合いすぐに金田先輩のサポートに回った。俺とユースさんは美園藍の背後から攻撃したにもかかわらず、帯刀していたもう一本刀でガードされた。


「はぁ!?」


 その防ぎ方は後ろに目がついているとしか思えず、思わず口から言葉が漏れた。左手で俺とユースさんのパワーを受け止め右手では金田先輩と普通に戦っているその光景は人間ではないロボットと戦っているのではないかと思わされるほどだった。美園藍は俺とユースさんの剣を弾き体勢を整えるために高く飛び上がった。追い詰めていた状況が一瞬にして瓦解し二人は舌打ちで不満をあらわにした。すると、美園藍が言った。


「二人を先に倒したのは褒めてあげよう。だが、そのままの勢いで僕を倒せると思ったら大間違いだよ」


 美園藍がそう言った刹那、俺たちに猛攻を仕掛けてきた。アークシィリュームがあってようやくガードが間に合うぐらいの猛攻に押されていると、ユースさんが言った。


「アンタみたいな自信過剰なナルシストが一番嫌いなのよ!」


「何だと!」


 ユースさんが美園藍を煽ると猛攻はさらに激しくなったが、その分無駄な攻撃が増えた。無駄な攻撃が増えた分俺たちに反撃の隙が生まれたことで俺たちは少しづつ反撃をしていった。美園藍は俺たちが反撃してきたことに驚いていたが、その原因が怒りということは理解しておらずまだがむしゃらに攻撃をしていた。俺たちは美園藍に直接攻撃出来るぐらいまで間合いを詰めると美園藍はマズイと思ったのか一度下がった。


「落ち着け僕……あんな奴ら僕の足元にも及ばないんだから」


 美園藍がそう自分に言い聞かせると怒りを鎮めたのか深呼吸をした。俺とユースさんはその隙に爆発魔法と雷魔法を撃ち込んだ。だが、美園藍は俺たちの魔法をいとも容易く防ぎきった。


「こら! 僕が落ち着こうとしてるんだから少し待ってくれてもいいじゃないか!」


 何とも自己中な発言にユースさんはため息をついた。顔がどれだけイケメンでも性格がこれじゃあねと言った感じのため息に美園藍は気づき怒りが顔に出ていた。その瞬間、美園藍がユースさんに向かって猛攻を仕掛けた。でも、ユースさんは案外余裕そうに防ぎきっていた。俺と金田先輩は美園藍の背後から攻撃したが、さっきと同様防がれてしまった。このままでは勝つことは出来ないと確信した俺は、右腰に帯剣していた豪嶽砕(ごうがくさい)を手に取り剣を擦り合わせた。ジャキンと音を立てて豪嶽砕の真の力を引き出した時、美園藍が俺の方をギョロッと見てきた。その瞬間、ユースさんから標的を俺に変え猛攻を仕掛けてきた。だが、豪嶽砕は両手剣であるため氷刃剣よりも防ぎやすく美園藍の明確な隙を見つけた。俺はその隙を逃すまいと豪嶽砕を振った。美園藍の左手の刀を吹き飛ばし、美園藍は豪嶽砕の力に心底驚き離れて言った。


「何だそのアイテムは」


「言う必要ねぇだろバーカ!」


 俺は美園藍に猛攻を仕掛けた。美園藍はあからさまに嫌そうな顔をしていた。俺は二振りなのに自分は一振りだからガードするのも大変なのだろう。俺は武帝に鍛えられているため剣術で美園藍に負けるはずがなく、このまま倒し切れると確信していたのに一向に倒せそうにないことに違和感を覚えた。その時、美園藍がニヤリと笑い言った。


「お前が僕に勝つなんて無理なんだよ。なんて言ったって、僕には未来が見えるアイテムがあるんだからね!」


 突然のカミングアウトに驚き攻撃の手が止まってしまい美園藍に逃げられてしまった。


「どうしたのよ。あのままいけば倒せそうだったじゃない」


 ユースさんにそう言われ、アイツが未来を見えるアイテムを持っていることを伝えた。二人はそんなの勝っこないと不満をあらわにした。だが、そんなこと言ってられないと俺は二人のアークシィリュームを解除した。


「俺がやります」


 二人にそう告げ俺はゆっくりと前に出て言った。


「一対一の真剣勝負だ」


「この僕と一対一なんて、自殺行為だよ。でも、その蛮勇は褒めてあげよう。僕の手で直々に倒してあげる」


 そこから俺たちは熾烈な戦いを繰り広げた。近接戦闘をしたと思えば、少し離れたら魔法を撃ち、再び近接戦闘に戻りとしばらく戦い続けた。だが、一つ不審に思うことがあり聞いた。


「お前の刀のアイテムの力は使わないのか?」


 美園藍は今の今まで刀のアイテムの力を使っていないように感じていたのだ。だから、体力回復も兼ねて聞いた。すると、美園藍は答えた。


「使ってあげようか? そんなことしなくても君には勝てるだろうがね」


 その言葉に俺は怒りを覚えた。だが、冷静さを保ち言った。


「逆だろ。今まで使ってなくて勝ててないんだから使っちまえよ」


「言うね。そんなに使って欲しいのなら使ってあげるよ」


 そう言うと美園藍は刀で自分の左腕に傷をつけ、その傷から流れた血を刀に吸わせた。


「君には教えてあげるよ僕のアイテムのこと。名前は血怨刀傷(けつえんとうしょう)。名前の通り刀傷による血を吸わせることで怨恨、怨嗟を刀に宿し使用者の力を何倍にも引き上げるんだ」


 俺はその言葉を聞き、豪嶽砕を二度擦り合わせた。意味はないが、何となくやりたくなったのでやった。それ以上の理由はない。さらに、アークシィリュームの効果を上げるためにマナを今までの倍上のスピードで体を駆け回らせた。俺は準備出来たことを目で合図し戦いを再開した。俺と美園藍の戦いは側から見たら何をしているのか全然見えないだろうが、ゾーンに入った俺たちは互いに笑みを浮かべて戦い続けた。互いにかすり傷が増え血怨刀傷の力が増すのと同時に笑みの寵愛も発動し続け俺たちは互角の戦いを繰り広げた。だが、次第に美園藍は俺の動きについて来られなくなっていた。未来が見えても体がついて来られなくなったのだろう。俺はその隙を見逃さずアークシィリュームの効果を限界まで上昇させた。俺の攻撃に対処できなくなった美園藍の顔から笑顔は消えていた。でも、俺は笑顔を絶やさず攻撃を続けた。その結果、俺は美園藍に一太刀を与え勝利した。


「ななな、なんと勝利したのは光正高校だー! 信神高校エース美園藍を打ち破ったのは、えーと……光正高校一年の小出健斗だー!」


「「「うおおお! ! !」」」


 俺は勝利を噛み締めた。達成感と疲労感で気を失いそうになったが、金田先輩とユースさんが支えてくれた。俺は安心感から全身の力が抜け意識が途切れた。

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