43話 競技会①
新幹線に揺られることニ時間弱、東京に着いた。東京駅から競技会の会場は少し離れた場所にあり、バスに乗り込んだ。俺たち出場者が滞在する施設があるらしく、このバスはそこまで行くらしい。後もう少しで競技会が始まる高揚感と不安感に心拍数の高鳴りを感じているとユースさんが話しかけてきた。
「緊張してる?」
「ま、まぁそれなりに」
「健斗ほど強くても緊張はするんだね。まぁ適度な緊張はパフォーマンス向上にもつながるし良いけど、そんなに思い詰めなくていいよ。相手だって学生だし私たちとそう大差ないよ」
俺が緊張していることを素直に打ち明けるとユースさんは俺を励ますように言葉を掛けてくれた。すると、前の席に座っていた金田先輩も言葉を掛けてくれた。
「俺も去年はガチガチだったけどいざ始まってみたら結構楽しかったから気楽に構えてて大丈夫だよ。それに、緊張し過ぎていつも通りの実力発揮出来ないとかやめてくれよ。俺たち負けるかも知れないしな」
金田先輩は笑いかけるように言ってくれた。二人の心優しい言葉に微笑みが溢れた。気がつくと緊張も程よい程度におさまっておりこの調子ならいけると思えた。そこからしばらくバスに揺られ俺たちが滞在する施設に着いた。そこは普通のホテルと何ら変わらない建物で、プロスペリータスホテルという名前も付いている。おそらく、競技会が始まるこの時期以外は普通のホテルとして運営されているのだろう。もしかしたら、初めからホテルとも競技会に出場する生徒たちの滞在場所ともなるように作られたのかも知れない。そんなことを思っていると鷲田先生がホテルの中に入ったので俺たちも続いてホテルに入った。ロビーから分かる高級さに驚いていると金田先輩が言った。
「驚くよね。まさかこんな高級な所に滞在できるなんてって」
「そりゃ思いますよ。一泊十万以上しますよね?」
「すると思うよ。でも、俺たちはそのぐらいの価値があるってことだよ。自分に自信持ちな」
金田先輩の言葉に俺は自分に自信を持てるように胸を張った。物理的にも精神的にも胸を張り、今は虚勢であっても将来的には事実になるように仮初の自信を身に纏った。そんなことを思っていると鷲田先生が俺たちに部屋の鍵を渡し言った。
「部屋は連番だから分からないことがあったら他の二人に聞くように。先生たちは先生たちの場所があるから少し離れている。一応、十階までが生徒たちの部屋で、そこから上が先生たちの部屋だ。私の部屋は十階の1020号室だから何かあった時は呼びに来なさい。本番は明日からで、今日の昼からロビーで諸々の説明がある。それまでゆっくり体を休めておくように」
俺たちは早速部屋に向かった。金田先輩が左で俺が真ん中、ユースさんが右の部屋となっていた。俺は部屋に入り荷物を置きベッドに倒れた。すると、ベッドの程良い柔らかさに包まれあまりの心地良さに感動した。家のベッドもこれがいいなと心の底から思った。ベッドの心地良さに感動していると部屋のインターホンが鳴った。俺は体を起こしドアを開けると金田先輩とユースさんが立っていた。俺はどうしたのかと思っているとユースさんが俺の手を取りどこかに連れて行かれた。後ろでは金田先輩が俺の部屋の鍵を手に取り付いて来ていた。俺はあまりに急な連行に驚き説明を求めた。
「え、ど、どういうこと!? どこに行くの?」
俺が焦りながら説明を求めると金田先輩が説明してくれた。
「ここは競技会に出場する生徒たちが滞在するホテルだから色々な設備があるんだけど、ユースさんが昼までの暇つぶしとしてやろうって言うから今から行くところ」
「先生体休めておけって言ってたじゃないですかー」
「健斗ならなんてことないでしょ?」
ユースさんは当たり前かのような口調で言った。俺は反論しようとも思ったが、競技会本番は明日なわけで休んでいる暇はないなと理解して大人しく連行されることにした。エレベーターに乗り十階まで移動し少し歩くと、そこにはユースさんの家と同レベルの訓練が出来そうな施設があった。トレーニング器具やサンドバッグ、柔道畳など様々なものがあった。中ではかなりの人数が筋トレやランニングなどをしていた。大体の人は訓練よりトレーニングをしているようだった。と言うよりここではトレーニングしか出来ないように思えた。柔道畳はあるが、魔法を使ったりアイテムを使えそうな場所はなくトレーニングをするしかないという感じだった。
「まぁこのぐらいあれば十分ね」
ユースさんはそう言うと誰も使っていない柔道畳に向かって行った。俺は未だに手を離してもらえず注目の的だった。柔道畳に移動するとユースさんは自分の前に俺を立たせ雷王の剣を抜いた。まさか今からやるんじゃないよなと思ったが、その通りだった。
「いくぞ」
ユースさんはそう言うと俺に斬り掛かって来た。心の準備が出来ていないのに急に斬り掛かってくるなと言いたかったが、本番で同じ状況になるかも知れないと気持ちを切り替えてユースさんの剣を避け続けた。このまま避け続けたところで状況は変わらないと思い、僅かな隙を見つけ出し氷刃剣を抜いた。そこからユースさんと立ち合いをしばらく続けた。満足したのかユースさんは剣を鞘に収めた。俺はようやく終わったと一息ついた。周りを見てみるとかなり人が減っており昼からの説明に間に合うようにやめたのだろう。
「俺たちもそろそろ部屋に戻ろうか。昼の説明に間に合わなくなる」
金田先輩の指示に従い俺たちはそこを後にした。鷲田先生の指示通り昼からの説明を聞くためにロビーに向かった。ロビーには各攻略校から三人とはいえかなりの人数がいた。百人は優に超えており少し驚いた。鷲田先生たちは既にいて俺たちは鷲田先生の近くに座った。少しすると、スーツを着た男性が俺たちの前に現れた。あの人が説明してくれるのだろうと思い黙っているとその男性が話し始めた。
「みなさんお集まりいただきありがとうございます。私は全国高校選抜競技会の運営を担当しております和田と申します。それでは只今から明日から行われる競技会の種目について説明致します。本日の説明は大まかなもので、詳しい説明は競技が始まる前に説明されます。ですので気になることがございましたら今のうちに聞いてください。それでは説明していきます。
一種目目は、各高校の実力を測るモンスター討伐となっております。モンスターの等級は天災級以上となります。
二種目目は、勝ち抜きトーナメントとなります。これはチーム戦と個人戦の両方の戦績を元にどの高校が一位かを決めます。
三種目目は、ダンジョン攻略となります。こちらは昨年も実施して好評でしたので今年も行います。ルールは昨年と同様、制限時間内にどれだけダンジョンを攻略出来るかです。
四種目目は、他校と協力してモンスター討伐を行う協力型モンスター討伐となります。六人以上で戦いますのでモンスターの等級は破滅級以上です。攻略者となれば見ず知らずの他人と協力する場面もありますので今年から追加された種目です。
今のところはこの四種目を予定していますが、もしかしたらもう一種目増えるかも知れません。競技は明日の午前九時からですので遅刻はなさないように。質問がある人は私まで聞きに来てください。本日中はここにおりますので」
説明を聞き終え俺たちは部屋に戻り作戦を立てることにした。モンスター討伐は普通に戦うしかなく作戦は立てられないが、ダンジョン攻略とチーム戦のトーナメントの作戦を考えた。ダンジョン攻略は、どれだけ攻略出来たかが重要なためスピード重視で金田先輩とユースさんが前衛をやり、俺が後衛で魔法を使うことになった。チーム戦では全員が近接をやるパターンと俺が後衛をやる二パターンを用意した。作戦のバラエティが少ないのが少しネックだが、実力で分からせればいいとなり作戦はこれでいくことになった。
ゆっくりお待ちください




