42話 校内選抜②
校内選抜二回戦目が始まった。ユースさんは苦戦することなく二回戦目を勝利し、俺もその流れに続いた。俺とユースさんと他の生徒では圧倒的に経験値に差があるのだ。俺はじいちゃんとシロから魔法を、武帝から近接をやろうと思えば何日間もぶっ通しで教わることだって出来る環境であり、実際に何十時間もじいちゃんたちから色々なことを教わっている。ユースさんも小さい頃からトールさんたちを見て育ち、色々なことを教わってきただろうから実力に差が出るのは仕方のないことだった。だが、それを面白く思わない生徒も少なくない。三回戦目からは俺とユースさんの対戦相手は完全に結託し、二対一の形となってしまった。だが、俺とユースさんは二対一でも関係なく勝利を収めた。四回戦目からは三年生が多くなってきてかなり歯応えのある対戦になったが、それでも、経験豊富で尚且つ近接も魔法も使える俺とユースさんは勝ち進み続けた。五回戦目ともなると三年生の中でも実力がある先輩と当たったが、ミノタウロスに比べたら全然弱いため難なく勝った。
校内選抜もいよいよ佳境となってきて、残すは二回となった。俺とユースさんは最終的に当たらずホッとした。今日で残りの対戦を全てやるらしく結構スケジュールギチギチだったんだなと思った。ここまで残っている生徒は誰がいるのか気になりトーナメント表を見てみた。すると、中央に金田先輩の名前を発見した。俺とユースさんどちらとも当たらない場所で良かったと安心した。だが、俺が次当たるであろう人が金田先輩の因縁の相手の森田先輩だった。正直言って、森田先輩に勝たれては競技会にもいけないし、金田先輩と組むことになるのはさすがに気まずそうだし、これは勝たなくてはいけないなと思った。俺は森田先輩のアイテムの効果は知っているためこちらの方が有利だ。それに、魔法も使えるので負ける心配はそこまで無さそうに思えた。でも、油断大敵と言うのでしっかりと全力で油断せずに勝ちにいくよう自分に言い聞かせた。
次の対戦も勝利を収め森田先輩との対戦となった。残る一人は特殊系のアイテムの使い手らしく警戒しておかなくてはならない。かと言って、森田先輩を放置しておくと炎熱灼剣の餌食になってしまうので速攻を仕掛けることにした。相手が炎系のアイテムなため氷刃剣で少しは熱を和らげられるだろうが、さすがに限度があるためすぐにやらないと負ける。イメージとしては、鷲田先生の合図で対戦が始まった瞬間にアークシィリュームで森田先輩を倒しその勢いでもう一人の先輩も倒す。でも、そんなに簡単にはいかないだろうから他の手も考えなくてはいけない。もし無理だとしたら、魔法での攻撃に切り替えて遠距離から二人を追いやるようにする。この二パターンならいけるだろうと思い対戦に臨んだ。
「さぁ一年の小出くんが勝ち進むのか、三年の森田先輩が勝ち進むのか、はたまた特殊系の牧田さんが進むのか見ものですね!」
「私としては小出くんの戦闘センスに期待しています」
実況が場を盛り上げ鷲田先生が対戦開始の合図をした。俺は事前にアークシィリュームを限界まで発動しており、開始と同時に森田先輩に斬り掛かった。森田先輩はまさかこんな速攻を仕掛けてくるとは思っていなかったのか防御が間に合わず一太刀くらった。俺はその勢いのままもう一人の先輩にも斬り掛かった。特殊系ということで厄介な相手になるだろうから速攻を仕掛けて正解だった。近接は不慣れなのかいとも容易く先輩二人を打ち負かした。と思っていたが、森田先輩は治癒魔法でなんとか立ち上がった。
「まだ……終わって……」
そう言う森田先輩の覚悟を受け止め俺は斬り掛かろうとしたが、鷲田先生が止めに入り俺の勝利で終わった。
「なんという速攻! ものの数秒で決着がついてしまったー! 強い! 強すぎる!」
俺は歓声を一身に浴びて控室に戻った。控室には俺より先に対戦を行い勝利したユースさんと金田先輩が待っていた。
「よくやったわ!」
「流石だな」
ユースさんと金田先輩が褒めてくれ俺は自然と笑みを浮かべた。しばらくの間二人と雑談をしていると鷲田先生がやって来た。
「今年の競技会はお前ら三人に決まった。来週の月曜日から競技会が始まるから土日に用意しておけよ。競技会に参加する生徒と関係者が利用できる施設があるからそこに滞在する。洗濯機等は備え付けがあるからそれを利用するように。だから、着替えはそこまで多くなくていい。だが、今までで一番長かった競技会は二週間も掛かったから五日分ぐらいの着替えは持ってくるように。分からないことがあれば金田に聞きなさい。去年も出場してるからな。引率は私と尾形先生と松本先生だ。もし必要な物が分からなければ学校に電話したら教える。とりあえず自分が持っていきたい物を持って来なさい。お前らにはその権利がある。会場は東京だから月曜日の午前六時に駅集合だ。それじゃあ競技会頼んだぞ。お前らなら優勝だって夢じゃない」
そう言うと鷲田先生は控室を後にした。すると、金田先輩が俺とユースさんに質問はあるか聞いて来た。俺は競技会について詳しくないので競技会について聞いた。金田先輩は快く教えてくれた。
「競技会は全国の高校から各学校で最も強い三人が出場出来るエリートにしか到達することが出来ない領域だ。しかも、そこで優勝なんてしたら将来の攻略者人生は確約されたと言っても過言じゃない。企業のスカウトは勿論のこと、国からもスカウトが来るかも知れないそんな場所だ。でも、その分来る奴らはそれ相応のバケモノだらけだ。俺から見たらお前ら二人もそのバケモノたちと同類だがな」
そう言う金田先輩は冗談っぽく言っていたが、目が笑っていなかった。ユースさんは質問はないのかと見てみたが、特に聞きたいことは無さそうにスマホを弄っていた。ヨハネス夫婦の娘だから競技会にお呼ばれして何度も見たことがあるのだろう。俺は気になっていることはなるべく聞くことにした。
「競技会ってどんなことをやるんですか?」
「色んなことをやるな。去年だと三対三で戦ったり個人戦したり、モンスターと戦ったり、期間内にどれだけダンジョンを攻略出来るかをやったな。今年はどんなことをやらされるか分からないけど、攻略者としての総合力を試されるようなことが多いからそんなに心配しなくても大丈夫だと思うぞ。ちなみに競技会は点数で競うからどれだけ効率的に点数を稼げるかがポイントだ」
流石最長二週間もやっただけはある。様々な形で俺たちの潜在能力から攻略者の適性を測るようなことをやらされるのだろう。だが、それをやるだけで将来を確約されるのだから全力を尽くさない手はない。万全の準備をして絶対に優勝してやる。そう意気込んだ。俺は自宅に帰り競技会の準備をした。後はじいちゃんたちに鍛えてもらって競技会に備えるだけとなった。寝る前に豪嶽砕を貰ったことを思い出した。土日の間に豪嶽砕を使えるようにしておけば戦略の幅が広まると思い、明日から教えてもらおうと眠りについた。
翌日、武帝に豪嶽砕の扱い方を教えて貰った。豪嶽砕は、少し変わっており普通に力を込めたり思いを乗せるだけでは力は発揮せず、正しい使い方で使わなくてはいけない。その正しい使い方は持ち主によって変わるらしいので、とにかくその正しい使い方を見つけるまで稽古を繰り返した。何時間も稽古を繰り返した結果、ようやく豪嶽砕の正しい使い方が分かった。俺の場合だと、豪嶽砕を持ち両手に持った剣を擦り合わせることで真の力が発揮するのだ。なぜこうなったのかは分からなかったが、豪嶽砕の強さは本物で軽く振っただけなのに空間を切り裂くような太刀筋になり、どんな相手にも負けないように感じた。次は本気で振ってみると、衝撃波だけで地面が砕けるほどだった。名前に偽り無しの実力に心底驚いた。武帝も俺を褒めてくれた。これで準備は終わりと言っても良かったが、じいちゃんたちに魔法を見てもらい少しでも良くなるところがないか調べた。
競技会当日、俺は父さんと母さんに競技会を頑張るためのエールを貰い、勝たちからも応援の言葉を貰い、駅に向かった。鷲田先生と尾形先生、松本先生が駅で待っていた。金田先輩は着いており、後はユースさんだけとなった。すると、見慣れた車がやって来て中からユースさんが現れた。俺たちは新幹線に乗った。いよいよ始まるのだと思うと心拍数が上がった。金田先輩は案外落ち着いておりさすが昨年出場者だ。俺だって負けてられないと心を落ち着かせた。忘れられた記憶の断片だって持って来てるし、豪嶽砕も氷刃剣も黎杖だって持って来てる。忘れ物はない。自分に大丈夫だと言い聞かせ競技会に臨んだ。
ゆっくりお待ちください




