40話 競技会
夏休みが終わりあっという間に秋になった。じいちゃんとシロに古代魔法を教わったのに学校で使えないのに少し不満に思っていた。別に使ってもいいのだろうが、周りのみんなを怪我させる可能性も大いにあるし、そもそもそこまで魔法を使わなくてはいけないことがないので退屈にしていた。そんな退屈な日を晴らしてくれる最高のイベントの情報が塩田先生の口から語られた。
「えー、みんな知っているかも知れないが、今年も全国高校選抜競技会の季節が始まった。それに伴い、各高校も競技会に出場する生徒を選ぶ時期になった。競技会は学校全体から校内選抜を勝ち抜いた三人のみが競技会に出場出来る。今日から三日間エントリー出来るから自信ある奴はエントリーするように。一応言っておくが、学校で三人だから一から三年までごちゃ混ぜの校内選抜になるからな。一年生はユースと小出でも勝ち進むの難しいと思うぞ」
そんなこと言われたら逆に燃えてくるのが俺の性格だ。俺は競技会校内選抜に真っ先にエントリーしに行った。塩田先生から用紙を貰う時、お前ならやると思ったと言われた。俺はもちろんですよと返して用紙に必要事項を記入し塩田先生に提出した。俺のエントリーは受理され後は校内選抜を待つだけとなった。今日からじいちゃん、武帝、シロにみっちり鍛えてもらおうと思っているとユースさんも競技会校内選抜にエントリーするようだった。俺はエントリーを済ませたのでその場を離れようとするとユースさんが言った。
「ち、ちょっとぐらい待ってよ」
まさかユースさんが俺に待っていて欲しかったとは思っておらず、少しビックリしたが言葉通り待っているとエントリーし終えたユースさんが言った。
「待たせてごめんね。もしかしたら校内選抜で敵として当たるかも知れないから今のうちに話しておこうと思って」
そう言うユースさんは俺の前を歩きながら言った。俺は立ち止まって聞いていると、ユースさんが振り返って言った。
「何で立ち止まってるの?」
「え、いやどこ行くのかなって」
「特にどこに行くか考えてなかったけど、今日部活は?」
「ないよ」
「じゃあ放課後話しましょ」
「了解」
今この場で話せないような内容なのかなと思いつつ教室に戻り授業を受け放課後になった。勝たちに一緒に帰るように誘われたが、先約があると断った。まだクラスメイトがいる教室でユースさんと一緒に話をすると変な噂をされないか心配でみんなが帰るまで待った。みんなが帰り教室に俺とユースさんの二人だけとなるとユースさんが話し始めた。
「それで話だけど、健斗って最近何するにも退屈そうだったよね。だから、もし良かったら私の家で訓練する?」
ユースさんの言葉は特に誰かに聞かれても誤解を招くような内容でも、恥ずかしいような内容でもないため少し眉間に皺を寄せると、ユースさんが俺の反応を見て説明してくれた。
「あのね、健斗は私と友達だから何でこんなこと誰もいなくなってから言うのって思うかも知れないけど、普通の人からしたら私はヨハネス夫婦の子どもで、近づいづらいとか住む世界が違う人って感じなの。健斗だって、有名人のゴシックとか見たことあるでしょ? 私はそういうの避けるためになるべくプライベートな話はしないようにしてるの。分かった?」
「なるほどそういうことか。有名人は苦労が絶えないな」
「本当にそうよ。一日ぐらい注目されない日が来て欲しいわ」
ユースさんの漏らした言葉を俺なら叶えられるんじゃないかと思った。校内選抜で俺が勝ち抜き競技会にまで進めば、学校中が俺に注目するだろうし、その間はユースさんものびのびと出来ると思った。
「じゃあ俺が校内選抜勝ち抜いてユースさんの注目を独占してあげるよ」
俺がそう言うとユースさんは微笑み言った。
「ならお願いしようかな」
その日から俺は死ぬ気で訓練を始めた。朝起きたらすぐに忘れられた記憶の断片の中に入り、じいちゃん、武帝、シロの二人と一匹から戦闘の手解きをしてもらい、学校に行き近接戦闘部でも訓練し、放課後にユースさんの家で訓練を行うというハードな訓練生活を送っていた。あっという間にエントリー期間は終わり後は校内選抜が始まるのを待つだけとなった。その間も訓練は怠っておらず、朝から晩までしっかりと訓練を行った。この期間の訓練は自力を伸ばすのではなく、戦闘に対する理解度を深めるような訓練を行っていた。その結果、俺の戦闘に対する理解度は武帝も認めてくれるほどになった。
一週間後、ついに校内選抜のトーナメント表が発表された。俺とユースさんは自分の名前がどこにあるのか確認すべく、トーナメント表を見ようとした時塩田先生が言った。
「今年の校内選抜はエントリー者数が多いから一対一じゃなくて三つ巴でやることになったから。一年で経験が少ないお前らには厳しいかも知れないが頑張れ」
そう言われトーナメント表を見ると、本当に三つ巴でやるようだった。三人の中で勝った一人だけが勝ち進める方式となっていた。人数が多いとは言え、これでは三つ巴の経験が少ない一年生に不利過ぎると思った。でも、こんな逆境に文句を言っているようじゃ武帝に叱られてしまうと自分に言い聞かせ、自分がいつ対戦するのか確認した。俺が対戦する日のは三日後で、かなり後の方の対戦だった。ユースさんはと言うと明日の午前だった。あまりにも早い日程にユースさんは少し動揺していたが、きちんと気持ちを切り替えて自分を落ち着かせていた。
「明日だね」
「うん」
俺は何気なくユースさんに言うとユースさんは真剣な眼差しで返事をした。いつも以上に真剣なユースさんにどんな戦いを見せてくれるのかライバルなのに期待してしまった。その時、後ろから春奈がやって来て言った。
「二人の対戦っていつ? 応援行くよ」
春奈のいつも通りの声色に俺たちは日程を教えた。
「それじゃあ明日はみんなでユースさんの応援に行かないとだね」
春奈はそう言うと勝たちに明日ユースさんを応援しに行く旨を伝えに行った。
「頑張って」
「ライバルを応援してどうするのよ」
俺の言葉にユースさんは微笑みながら答えた。
「確かに」
俺も微笑みながら返事をした。そんな他愛もない会話をしていると一限の始まりを告げるチャイムが鳴った。俺たちは席に着き授業を受けた。
学校が終わりユースさんはどうするのか気になっていると俺の肩を後ろから叩き言った。
「今日からライバルだから互いに頑張りましょ」
「おうそうだな」
そう言うとユースさんは帰ってしまった。今日からライバルという言葉通り、今日からユースさんの家で訓練することは出来なくなってしまった。普通に考えればライバルの成長を促すような事はしないため普通の事だと受け入れた。逆に今までが異常だったのだ。ライバルだと分かっているのに自宅の機材が揃った訓練スペースを利用させてくれていた事に感謝した。俺も家に帰り残す三日間どんな訓練をしようか考えた。ちょうど三日あるので一日一人のペースでみっちり訓練する事にした。一応今のうちにその旨を伝えるために忘れられた記憶の断片の中に入り訓練メニューを考えてもらえるように頼んだ。みんな俺が強くなるためだと快諾してくれた。嬉しいような訓練内容がハード過ぎないか少し心配にもなった。
ゆっくりお待ちください




