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忘れられた記憶の断片から力を得れる俺は小出しで成り上がる  作者: 描空
学生編

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36話 シロ

 ダンジョン巡りを終え帰って来た俺は残りのお盆休みを悠々自適に過ごすことにした。家でのんびりゴロゴロしてクーラーの効いた部屋で攻略者の動画を見ていた。しばらく動画を見ていたが、あまり勉強になることも面白いと思わなかったのでじいちゃんに会いに行くことにした。


「アペルタ」


 そう唱え忘れられた記憶の断片(アルカディアリベル)の中に入った。目を開けるとそこには白狼が座っていた。白狼と目が合うと、尻尾をブンブン振り始めた。決して自分から近づい来たりせず座して尻尾を全力で振っていた。


「よ。この前ぶり」


 俺が目の前まで近づき言うと、白狼は平静を装いながら答えた。


「久しいな。それより今日はどうしたんだ?」


 尻尾の勢いは衰えることを知らないどころかさらに増しているように思えるほど全力だった。ここでじいちゃんに会いに来たと言う本音を言っても良かったが、せっかくだから白狼を喜ばせたいなと思い建前を言うことにした。


「白狼に会いに来たんだよ」


 白狼は無意識か気持ちを抑えられないのか頭を俺にすりすりと擦り付けて来た。白狼の愛おしい反応に自然と撫でてしまっていた。白狼は嫌ではないのか俺が撫でるのを受け入れてくれた。俺のことを信用してくれたのだと思った。しばらく撫で続けていると、白狼が地面に寝転がった。俺は白狼のお腹あたりに座り込んだ。すると、白狼は俺に頭を差し出し撫でろと催促しているようにツンツンと鼻先を当ててきた。俺は白狼が満足するまで撫でてあげた。しばらく撫でていると白狼が俺の手を甘噛みしてきた。甘噛みしてくる白狼をかわいらしく思っていると、白狼が言った。


「なぁ健斗、我に名前を付けてくれぬか?」


 唐突な申し出に驚いていると白狼が続けた。


「我はお主を気に入った。だから、対等な関係を築くために名前が欲しいのだ」


 そう言うことならと俺は白狼に名前を提案した。


「ポチはどう?」


「ポチ!? 我は白狼、狼だぞ。なのに、ポチ!? さすがにそれはないだろう」


「えー」


 白狼のかわいらしさならポチがピッタリだと思ったのに残念だ。でも、言われてみればポチって見た目ではないので仕方ないかと考え直した。


「じゃあシロ。白狼だからシロ」


「うーん……」


 白狼はしばらく考えていた。どんなことを考えているのか分からないが、きっとシロという名前の無難さと種族名からきていることと、シロという名前のかわいらしさに葛藤しているのだろうと思った。


「分かった。シロでいいだろう」


「わーいよろしくね、シロ」


 俺はシロの頭をギュと抱きしめた。そこからしばらくシロとゴロゴロしたり鬼ごっこしたりして遊んだ。シロはとても楽しそうにしていてこっちまで嬉しくなった。その時、ふとシロは何か魔法を使えたりしないのかなと思い聞いてみることにした。


「シロって魔法とか使える?」


「ニンゲンが使うような魔法は使えないが、我ら独自の魔法なら使えるぞ」


「教えて教えて!」


 白狼独自の魔法なんて教えてもらうしかないと前のめりになって聞いた。シロもこんなにグイグイ来ると思ってなかったのか驚いていた。


「わ、分かった。そんなに催促しなくても教えるから」


 シロの言葉に座して待った。どんな魔法なのか待ち遠しくしていると、シロが立ち上がり言った。


「今から使うから見ておくんだぞ」


 シロはそう言うと、空中に飛び上がり口から青い光線のような魔法を撃った。その魔法は流れ星のようでとても綺麗だった。あまりにも綺麗な魔法に興奮してシロに話を聞いた。


「さっきの魔法どうやってやるの!? 俺にも使える!?」


「一回落ち着け」


 シロの冷静な言葉に深呼吸して自分を落ち着かせた。


「落ち着いたから教えて」


「これは我ら白狼にしか扱えない魔法だ。だから、健斗がどれだけやっても使えるようにはならない」


「そんなぁ……」


 俺はあからさまに肩を落とした。すると、シロは俺の顔をペロペロと舐めてくれた。


「ありがとう。もう大丈夫」


 俺がそう言ってもシロは少しの間慰めてくれた。俺がもういいよとシロを制止すると、シロはそこでようやく慰めるのをやめた。俺は気持ちを切り替えて他の魔法も見せてくれないか聞いた。


「なぁなぁ、他のない?」


「あるけど、余計使いたくならないか?」


「なるけど、その悔しさをバネに他の魔法頑張るから」


 俺の言葉にシロは他の魔法も見せてくれた。さっきの青い魔法とは少し色が違う青白い魔法や濃い青の魔法などを見せてくれた。口から出すのは変わらず、魔法の形状や性質も変わっていないので威力で魔法の色が変化しているのだと判断した。


「これぐらいだ。我らにしか使えない魔法はこれぐらいだが、ニンゲンが使っていた魔法もいくつかは覚えてるけど教えようか?」


 俺が激しく首を縦に振ると、シロは人間が使っていたと言う魔法を見せてくれた。真っ白な雷や青白い炎など見ただけでも分かる高度な魔法に大興奮した。シロは古代種というだけあり、大昔に生きていた種族だろうから、今は忘れられた失われた魔法も知っているのだろう。実際、シロが使った魔法を見るのは初めてだ。ユースさんの雷王の剣で発生する落雷は真っ白な本当の雷だが、魔法で出現させる雷は黄色で本当の雷とは言えない。だから、真っ白な雷魔法を見るのは初めてなのだ。青白い炎は、火魔法を変質させる高度な技術であると考える。現代で青白い火魔法なんて使われていないため失われた技術だと思った。


「それどうやったの!?」


 シロに問うと、シロはきちんと教えてくれた。


「まず雷からだが、魔法の基本は今も昔も変わらない。マナを用いて使う。だが、必要なマナの量が桁違いだ。現代の魔法の必要なマナの量が十だとすると、昔の魔法は百も必要としてるんだ。なぜこうも違うのかは分からないが、我の推測で言うと、現代の魔法は必要なマナが少なく、効率化された結果だと考える。とは言え、昔の魔法が効率化されていないわけではない。昔の魔法は必要なマナが多かった分、マナに比例して威力が高い。一番良いのは魔法使いが場面に応じてどちらの魔法を使うべきか取捨選択できることなのだろうが、現代では昔の魔法は必要ないと忘れられてしまったのだろう」


「なら、俺が復活させる! だから、俺に教えて!」


「現代の魔法と違いすぎて苦労するだろうが、いいんだな?」


「もちろん」


 俺は真剣な眼差しで答えた。シロも俺の覚悟を受け取り魔法の指導を始めてくれた。最初、黎杖(れいじょう)を使ってやろうとしたが、マナ感覚がおかしくなると言われ使わないようにした。


「杖を使わずマナを感じるんだ」


 シロの言葉通りマナを感じマナを右手に凝縮させマナに雷のイメージを持たせた。それでも、マナがまだ足りないと感じ、さらにマナを右手に集めた。もうこれでいいだろうと思うぐらいマナを集めたので雷魔法を出現させた。俺の雷はシロの雷とは少し違う青白い雷だった。俺はシロの雷魔法のように真っ白な雷を出現させられず不満に思っていると、シロが興奮気味で言った。


「健斗お前は天才だな!」


 シロが俺を褒めてくれているのは分かったが、どういうことなのか説明を求めた。


「ど、どういうことだ? シロの雷とちょっと違うだろ?」


「その違うのがいいんだ。我の雷は現代の雷より強く、健斗の雷は我の雷より強いのだ。段階的に分けた時、健斗の出現させた青白い雷が一番強い分類なんだ。まさか初めてで俺の雷魔法を超えてくるとは思わなかったぞ。この調子で火魔法もやってみろ」


 俺はその勢いのまま火魔法もやってみた。マナを右手に凝縮させ、さらにマナを上乗せして火魔法を出現させた。すると、シロの雷魔法のように白色の火が出現した。


「おぉ」


 白色の火は見たことがなく感嘆の声が漏れた。


「流石だな。雷魔法と同じで我の一段階上の火魔法とはな。お前のような奴が世間で天才と言われるのだろうな。お前の才能認める他ないな」


「へへへ。どうだ」


「だが、天才はいつの時代も忌み嫌われたり恐れられたりするから見せびらかしたりするではないぞ」


「分かった。色々ありがとうシロ」


 シロの頭を撫でるとシロは満面の笑みを見せてくれた。俺はシロを思いっきり抱きしめシロももふもふを堪能した。名残惜しかったが、シロに別れを告げた。


「それじゃあまた来るから」


「いつだ?」


 シロは寂しそうな顔で聞いてきた。


「え、えーと少ししたらかな」


「分かった。待ってるからな」


 シロの寂しそうな顔に申し訳ない気持ちになったが、キールと唱え後にした。現実に戻るとすぐにシロのもふもふを触りたくなって戻りたくなった。でも、ずっと忘れられた記憶の断片(アルカディアリベル)の中にいるわけにもいかないので我慢することにした。

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