35話 完全攻略
夢の中でじいちゃんと白狼に会っていた俺は春奈に起こされダンジョン攻略再開へと気合を入れた。準備もしっかりして指示を待っているとユースさんが言った。
「もう連鎖のダンジョンも残り少ないから。でも、最後だからって油断するんじゃなくて、最後だから今までより気合い入れること」
その言葉に俺たちは気を引き締めて、今回で最後になるであろう攻略に臨んだ。最後にダンジョンのボスがいるのか、はたまた普通に終わるのか気になっているとユースさんが足を止めた。そこには明らかにボスか強敵が居ますよと言わんばかりの広い空間があった。俺たちはその空間に入らないように中を覗いたが、暗すぎて何がいるのか分からなかった。俺たちはさっきまでいた場所に戻り作戦を立てることにした。
「あそこに何がいるか分からない以上、全員全力で戦うこと。私と勝が前衛、春奈と透が後衛。健斗は臨機応変に私たちと前衛やったり春奈たちと後衛やったりして。後、もし私たちの実力で叶わないモンスターだったらすぐに逃げること。その時はよろしくねお父さんお母さん」
トールさんにそう頼まれたトールさんとメアリーさんは頼もしい表情だった。こんなにも頼もしい後ろ盾がある事はこれから先ないだろうなと確信した。俺たちは気合を入れてボスか強敵がいるであろう空間に向かった。トールさんが一歩足を踏み入れると、無数の赤い目が俺たちのことを見つめた。その正体が分からず相手がどんな行動に出るのかも分からないので火魔法でその空間を照らした。そこにはかなりの数のデーモンが鎮座していた。さらに、その奥には他のデーモンより一回り大きなデーモンがいた。
デーモンは山羊の角にコウモリの羽が生えており、肌の色は人間とは思えない黒色に近い色をしている。あまりのデーモンの多さにトールさんたちが俺たちの前に出て来た。最上位攻略者たちが咄嗟に守らなければならないと思うほどのデーモンの数なのだと理解した。
「みんなは下がっていなさい。ここは私たちがやる」
トールさんの言葉に俺たちが下がろうとした時、ユースさんが言った。
「私たちも戦う」
「ダメだ! みんなまだ子どもだ。怪我じゃ済まない可能性もある。それに、万が一の場合責任を取れない」
「でも、私たちだって攻略者になるんだから少しぐらい手伝わせて!」
ユースさんの言葉にトールさんが仕方がないというような感じで言った。
「なら、私たちが取りこぼしたデーモンだけだ。前線に来ることは許さない」
そう言うとトールさんたちはデーモンに向かって行った。トールさんはアイテムの力を存分に発揮してデーモンを一気に何体も倒した。雷を自由に扱うミョルニルの威力は凄まじいもので、離れていても電気を感じるほどだった。他の人たちも見事にデーモンを倒していた。取りこぼしなんて出ないと思っていた時、仲間の死骸に身を隠していたデーモンが俺たちに向かって来た。だが、ユースさんがそのデーモンを一刀両断にした。そこから何度かトールさんたちが取りこぼしたデーモンを倒していると、最後は一回り大きいデーモンのみとなった。すると、トールさんたちは手を止め俺たちの方にやって来て言った。
「アイツはデーモンの進化個体だ。おそらく破滅級だと思う。あれだけなら倒せるだろうからやってみろ」
ユースさんはその言葉に待ってましたと雷王の剣を抜いた。俺たちはトールさんたちが全部やってくれるんじゃないんかいとツッコミたかった。でも、ミノタウロスを倒した俺たちにしたらそこまで苦戦する相手ではないと思い気合を入れてデーモンの進化個体に向かって行った。
「作戦通りね」
ユースさんの冷静な言葉に俺たちは返事をし戦いが始まった。ユースさんが雷王の剣でデーモンに近づき攻撃をした後に勝が不撓の拳で殴り、春奈と透が遠距離から攻撃をする。だが、デーモンの進化個体はかなりの強度を持っており全然ダメージが入っていないようだった。俺たちが攻めあぐねているとデーモンが口から火を吐いた。俺たちは咄嗟に避けたが、デーモンはその火の中を走って来ており勝が思いっきり殴られた。
「勝!」
俺たちは勝を心配したが、勝は間一髪のところでガードできており軽傷だった。防御力が高いことを上手く活かした戦い方にどうしようか悩んでいるとデーモンが空中に飛び上がった。絶対火を吐いてくると思い水の壁を出現させた。案の定デーモンは火を吐いて来た。もしかして同じことしてくるのかと思っていたが、さすがにそこまで馬鹿ではなく空中で様子見していた。俺たちの中で空中戦いけるのは春奈だけだが、さすがに任せられないなと思っていると春奈が言った。
「私がアイツと空中で戦うからみんなは隙を見つけて攻撃して。私はなんとかするから」
俺たちは春奈の言葉を信じた。春奈の銀翼の天使なら攻撃も防御もいけるので期待した。春奈がデーモンと同じ目線まで上がると、デーモンは春奈に向かって攻撃し始めた。春奈が防御している最中に俺と透、ユースさんで魔法を撃ち込んだ。すると、デーモンは俺たちの方に突っ込んできた。だが、勝が見事にデーモンの顔面にカウンターを入れデーモンは少し下がった。その隙に春奈が銀の羽で攻撃し再び空中に上がると、俺たちは魔法を撃ちデーモンのターゲットを絞らせないようにした。次第にデーモンはダメージの蓄積から飛べなくなり地面でもがいていた。トドメは俺の爆発魔法で安全に刺した。五対一なんて卑怯だと言われるかもしれないが、これはモンスターとの戦いなのでそんなこと気にする人はいない。
「よくやった。これで連鎖のダンジョンのモンスターは完全攻略だ。残すはアイテムがないかどうかだ。各自アイテムが残っていないか探してこーい!」
トールさんの上機嫌な言葉に俺たちは全員別の方向に向かってアイテムを探しに行った。火魔法で照らしながら探し続けること十分が経とうとした時、一つの宝箱を見つけた。俺はすぐに開けようとしたが、ミミックの可能性を考慮して氷刃剣でつついてみた。うんともすんとも言わないためミミックではないと判断し開けたが、中には何も入っていなかった。おそらく以前攻略した人が見つけたのだろう。悔しかったが、仕方ないと切り替えて残っているアイテムがないか探した。しばらく探したが、見つからずみんなの所に戻った。トールさんたちはいたが、勝たちはまだ帰って来ていなかった。
「みんなまだ帰って来てないんですか?」
「まぁみんな別の方向に行ったから色んなところ探してるんだと思うよ」
俺はトールさんと雑談しながら待っていると次第にみんな帰って来た。でも、誰の手にもアイテムは握られておらず残念そうにしていた。
「それじゃあ帰ろうか」
トールさんの言葉に俺たちは返事をし連鎖のダンジョンを後にした。ダンジョン内から出るともう夕方だった。ふと今が何日なのか気になりスマホを見ると、一週間も経っていた。俺がそのことに驚いていると、勝たちも驚いていた。さらに、父さんと母さんから何件もメールが来ていた。ダンジョン内は圏外のためメールが届かなかったのだ。今ダンジョンから出たことと今から帰ることをメールすると、母さんから心配していたことと無事で良かったとのメールが届いた。
「みんな送って行くから乗って」
ユースさんに促され俺たちは車に乗り込んだ。トールさんたちは家に帰るようでここでお別れとなった。こんな体験をさせてくれたお礼を述べ俺たちは家へと帰った。家に着くと父さんと母さんがリビングから飛び出して来て俺を力一杯抱きしめた。
「ただいま」
「「おかえり」」
相当心配させていたんだと理解して俺は父さんと母さんを力強く抱きしめ返した。
ゆっくりお待ちください




