34話 夢の中
トールさんたちから指導を受けて辺りを探索した後、少し休憩を取ることにした。俺は疲労を取るために仮眠を取ることにした。俺は夢を見た。そこは忘れられた記憶の断片の中と同じ光景だった。辺りを見回すと、そこにはじいちゃんが背を丸めて座っていた。
「じいちゃん?」
俺がそう呼びかけるとじいちゃんは一瞬嬉しそうな顔でこちらを見たが、すぐにそっぽ向いてしまった。俺は何かじいちゃんを怒らせるようなことをしたかと思ったが、思い当たる節がなく困惑しているとじいちゃんが言った。
「健ちゃん、どうして儂じゃなく他の人からサポート系の魔法を教えて貰ったんじゃ……」
「あぁ……」
俺はその事かと思った。もちろん俺には俺の考えがあっての行動なのでしっかり説明することにした。
「じいちゃん聞いて、俺がサポート系の魔法をじいちゃん以外の人に教えて貰ったのは、じいちゃんの負担を減らすためなんだ。じいちゃん言ってたじゃん。サポート系は苦手って。だから、じいちゃんが一から教える労力とかを考えての行動なんだ」
「そ、そうじゃったんか。すまんなじいちゃんてっきり健ちゃんが儂の事忘れてるって思ったんじゃ。健ちゃんが良かれと思ってやってくれてたのに儂が早とちりしてたんじゃな」
「ごめんね。俺も言っておけば良かった。今からでもいいから教えてくれる?」
「よし、じいちゃん気合い入れるぞ!」
じいちゃんはそう言い気合を入れた。そこから俺とじいちゃんはアークシィリュームを一緒に使って教え合った。今までじいちゃんには教えて貰ってばっかりだったから教えるのはなんだか不思議な感じだった。マナが全身を駆け回る感覚や誰かにアークシィリュームを使ってあげる感覚などを教えた。
「流石健ちゃんじゃな。サポート系が苦手な儂でも使えるようになるとはな。それと、健ちゃんは成長のためになるべく使わんようにな。その間儂が使いまくって効率的な使い方を研究しておくからな」
「ありがとう。でも、じいちゃんも頑張りすぎないでね」
「もちろんじゃ。じいちゃんも馬鹿ではないからの」
「そうだね」
そんな会話をしている時、俺はキールと唱えることで普段通り戻れるのか心配になった。とりあえず戻れるか調べるためにもキールと唱えてみた。でも、ここが夢の中だからか戻れず困惑しているとじいちゃんが言った。
「戻れないのか。それなら戻れるまでゆっくりしておけばよい」
じいちゃんの優しい言葉に俺は甘えることにした。しばらくぼーっとしているとなんだか眠たくなって来た。ここは夢の中のはずなのに眠くなることなんてあるのかと不思議に思っていたが、睡魔に勝てず眠ることにした。もしかしたら、寝ることで目が覚めるかも知れないとも思ったからだ。
目を開けたが、忘れられた記憶の断片の中から出られておらず辺りを見回すと、そこには二メートルぐらいありそうな大きな狼が座っていた。かわいいと思う反面狼の鋭い眼光に気押された。俺はその狼が俺のことをどう思っているのか分からず近づけないでいると、その狼が立ち上がりゆっくりと歩いて来た。俺の少し前まで歩いてくると再び座り喋った。
「何者だニンゲン」
狼が喋ったことに驚いていると、狼が続けた。
「何者だと聞いている。答えろ」
「え、えっと小出健斗です。決して怪しい者ではありませんのでご安心ください」
俺の言葉に狼はじっと見つめてきて言った。
「我は古代種の一種、白狼の群れのリーダーである」
「白狼さんと呼べばいいんですかね?」
「うむ。我には個体名が無いからな。種族名で呼んでもらって構わん。それより健斗とやら、貴様は何用で我の元を訪れた?」
「いや、分かりません。気がついたらここにいました」
「そうか。なら自由にしていくとよい。我は何もやることがないから眠る。何かあれば起こせ」
白狼が眠る前に聞きたいことがあったのですぐに聞いた。
「あ、あのもふもふしてもいいですか?」
俺が聞くと白狼は鋭い眼光で睨んできた。
「だからニンゲンは嫌いだ。この体毛は体温維持のためにあるんだぞ。ニンゲンが愛でるためではない」
「そこをなんとか!」
「なら、我が逃げるから捕まえてみろ。捕まえれたら触ってもよい。三秒数えたら来い。三、二、一」
白狼はその三秒の間にものすごいスピードで走りかなり距離を離された。俺はアークシィリュームを使って笑みを浮かべて全力で走った。アークシィリュームと笑みの寵愛の効果であっという間に白狼に迫る勢いで走り油断していた白狼を捕まえた。
「俺の勝ちだよな?」
「我の負けだ。自由にもふもふすればよい」
俺は白狼の背中側から思いっきり抱きしめた。自分より大きいもふもふな存在に俺は幸せの最高潮だった。一度手を離し立ち上がりお腹側に回った。
「もう終わった……」
白狼が最後まで言うより先にお腹側から再び抱きしめた。背中側とは柔らかさが違いこんなに違うんだと感心した。お腹側に抱きつき背中側手でワシャワシャ撫でていると白狼が文句を言った。
「も、もうやめてくれ」
俺は白狼の言い分を無視してまだまだもふもふを堪能した。十分ほど抱きしめ満足して手を離すと白狼は軽蔑と不満が混ざったような目で睨んできた。
「なんだよいいって言ったじゃん」
「いや、言ったが……限度ってものがあるだろ」
「俺が満足するまでやったんだからそこが限度だ」
「むぅ……」
白狼は自分がいいと言い出したから強く言い返せていなかった。その白狼がどうしてもかわいく頭を撫でた。白狼は目を細め撫でられていた。
「おい撫でるな」
「なんか可哀想で撫でてあげたくなったんだよ」
「そんな気遣いいらぬ」
「そう? でも、なんか気持ち良さそうだったよ」
白狼が目を細めていたのを見ていた俺がそう言うと、白狼はそっぽ向いてしまった。
「実は一人ぼっちで寂しかったんじゃない?」
白狼にそう問いかけると、白狼はゆっくりと俺の方を向いた。白狼は目を細め撫でられ待ちのような顔をしていた。
「撫でて欲しいの?」
俺が優しく問いかけると白狼は言った。
「孤独を寂しんで何が悪い。我は白狼だが、さすがにずっとひとりで寂しかったんだ」
そう言う白狼を優しく抱きしめた。白狼は頭を俺に擦り付けてきて寂しさを紛らわすようにしていた。俺はひとりで寂しかった白狼の孤独を癒すように目一杯撫でたり抱きしめたりした。白狼は心が満たされたのか離れた。
「もういい?」
白狼は静かに頷いた。そのかわいらしい反応に再び抱きしめたくなったが、グッと堪えた。すると、白狼の方から近づいて来た。さっきは建前で離れたが、本心ではそう思っていないのか体が勝手に動いているようだった。尻尾をブンブンと振っているその様子に胸がギューっと締め付けられた。白狼は俺の隣に座り尻尾を振り続けた。おそらく、過干渉なのは好きではないが、適度な距離感ならいいのだろう。俺は白狼に触れることなく、何も話しかけず満足するまで隣に座り続けた。しばらくすると白狼が言った。
「ありがとう」
「いいよ」
俺は自然と返事をした。白狼はその距離感がちょうど良いのかもうしばらく座り続けた。白狼の体温の高さでうとうとしてくると、白狼が言った。
「我が見ていてやるから寝ておけ」
本当に白狼たちのリーダーだったんだなと思い、お言葉に甘えて寝ることにした。
「……ん! 健ちゃん!」
春奈の声に俺は目を覚ました。
「やっと起きた。攻略再開するよ」
「あぁ、分かった」
俺はさっきまでの白狼のもふもふを恋しく思ったが、また今度会えると思いダンジョン攻略に気合を入れた。
ゆっくりお待ちください




