33話 近接戦闘
「よし、小出くんと中村くんはどんな近接戦闘を指導して欲しいんだ?」
俺は普段から氷刃剣を使って近接戦闘を行っているが、透は塩田先生の基礎戦闘術ぐらいでしか近接戦闘をしたことがない。この時間どうするんだろうと思っていると透が言った。
「僕は魔法使いなので、護身術程度の近接戦闘を教えて欲しいです」
「そうか。それなら拓郎に教えてもらうといい。小出くんは私とやろうか」
「「はい」」
俺はトールさんに透は拓郎さんに指導してもらうことになった。俺はトールさんに何を教えてもらえるのか期待していると、トールさんが構えて言った。
「それじゃあいくよ」
あまりにも急な指導に俺は待ったをかけようとしたが、それよりも早くトールさんの指導が始まった。最初は軽く殴られそうになるのを避けたりガードしたりだったが、徐々に威力を高めていき受けられるギリギリの力で続けた。と言っても、ダメージは蓄積していくためいつか限界が来ると分かると、俺はアークシィリュームで身体能力を底上げしガードではなく避けるようにした。
「アークシィリューム使ってるな? サポート系の魔法に頼るのもいいけど、きちんと自分の素の実力を伸ばさないといけないから切りなさい」
トールさんの言葉に俺は反論した。
「切ったらボコボコにされちゃいますって!」
「今はそれでいいんだよ。それより問題なのが、モンスターと戦ってる時にアークシィリュームが切れちゃった時だよ。自分の実力を勘違いして死んでいった攻略者は何人もいる。君もそうなってほしくないんだよ」
トールさんは話しながらも息を荒げることなく同じペースで攻撃を繰り返しておりバケモノだと理解した。
「それじゃあアークシィリューム切るので少しペース落としてください! 今でもキツイんですよ!」
「それだと意味がない。自分の実力以上の強敵を相手にして人は初めて成長するんだ。だから、このペースのままいく」
トールさんの言葉は事実だが、今の俺にはその言葉があまりにも鬼畜でアークシィリュームを使い続けようかとも思ったが、自分の成長のためにアークシィリュームを切った。その瞬間、一トールさんの攻撃を避けられなくなった。でも、自分の実力を伸ばすためには必要なことだと言い聞かせ、トールさんの攻撃を避けられるように精一杯努力した。
「そうだその気概だ。今から蹴りも加えるからな。チャンスを伺って反撃してみろ」
ここからさらに追加するのかと思った瞬間、トールさんの蹴りがやって来た。何とか受け止めたが、パンチとは比べ物にならないほど重く、どうやってカウンターを決めるんだと思ってたが、格闘技で相手の足を持ち体勢を崩すというのを見たことがある。だが、トールさんの事だからカウンターして来そうだと思い怖くて出来ないでいた。でも、このままでは強くなれないと思いカウンターされるの前提でやってみることにした。トールさんの右足の蹴りを受け止めそのまま足を持ち右足ストレートを入れようとしたが、トールさんは笑っていた。
「まだまだ」
俺が右ストレートを打った時、トールさんは避けたりガードしたりするのではなく、俺に向かって来ていてそのまま押し倒されてしまった。カウンター前提でやっていたのに予想外の行動に理解が追いついていないでいると、トールさんが俺の手を取り起こしてくれ言った。
「高校一年でこれならまだまだ化けるな。魔法もいいが、近接戦闘もしっかりやっておくこと。二つとも極めればアイテムなんていらないかもな」
その言葉にもっと頑張ろうと思った。ふとメアリーさんの方を見ると、みんな眉間に皺を寄せて難しそうな顔をしていた。アークシィリュームをやっているのだろうと思い集中させてあげるために放っておいた。その間トールさんと一緒に筋トレをしたりランニングをしたりした。俺はかなり疲れ息が上がったが、トールさんは涼しい顔をしていた。俺とトールさんでは体力も実力も桁違いなのだとようやく理解出来た。そこでトールさんがどうやって強くなったのか聞いてみることにした。
「トールさんってどうやってそんなに強くなったんですか?」
「え、うーん……自分では特にこれをやって強くなれたって思うことはないんだけど、強いて言うなら実戦を何度も何度も経験したことかな。だから、今こうやってユースと君たちに実戦の機会を設けてるんだ。私の両親もしてくれたから私もやってるのさ」
「そうなんですね。ちなみにその実戦で当時のトールさんより強いモンスターが出て来たこととかありましたか?」
「もちろんあったよ。それこそミノタウロスだね。私の時は四人でミノタウロス一体を倒したから、ユース含め君たち全員、私を超える攻略者になると思ってるよ」
「トールさんにそう言ってもらえて嬉しいです」
「それは良かった」
そんな会話をしているとメアリーさんの魔法指導も終わったようだ。少し休憩をしているとトールさんが次の指示を出した。
「もう少ししたら攻略再開するけど、強いモンスター以外には自分が不慣れな方をするように。特に相川くんはなるべく魔法を使うように。中村くんも近接をするようにね」
二人はマジかよという顔でトールさんを見つめていた。トールさんはお前らなら出来ると言わんばかりのいい表情で二人に頷いた。二人は頑張ろうと目に信念が宿っているのが分かった。そこから俺たちは自分が不得意とする戦い方でモンスターを倒した。俺は超近接戦闘、勝とユースさんは魔法、透と春奈は近接戦闘。春奈は魔法が不得意だけど杖がないから近接戦闘になった。
オークやオーガといった天災級のモンスターが出て来たが、俺たちはあまり苦戦することなく倒した。勝と透以外はそれなりに戦えるため二人の不得意を伸ばすようにしようということになり俺と春奈、ユースさんは二人のサポートに回った。透がモンスターの攻撃を受けそうになったら攻撃を受け止めたり、勝が魔法を使えるようにモンスターが近くに来ないようにしたりした。二人とも最初よりかなり上手くなった。透はきちんとモンスターの攻撃を受けてからカウンターをしたり、勝は火魔法をモンスターに撃ち倒したり出来るようになった。二人とも専門外なのによくやったと褒められ嬉しそうにしていた。
「それじゃあ完全攻略のために俺と勝の二人、春奈と透、ユースさんの三人で手分けして探索しようか」
俺たちは手分けして辺りを探索した。勝が魔法を使えるように俺が前衛をやりモンスターの動きを止めている間に勝が魔法を撃つという戦法で勝の魔法を伸ばすようにした。しばらくオークやオーガが一体だけいたりしたのを倒して勝は魔法を使うのに少しは慣れたようだった。
「魔法も楽しいだろ?」
「うーんあんまりかな」
俺が勝に問うと勝は微妙な顔をしながら答えた。この顔は本当に楽しくないと思っている顔だった。勝の性格と魔法は合わないのだと理解した。
「それじゃあ勝は魔法はもう使わない感じか?」
「まぁそうだな。でも、アークシィリュームってやつはやってみたいな」
「じゃあマナ感知もっと出来るようにしないとだな」
そんな話をしていると行き止まりまでついた。アイテムの一つもないしけたダンジョンだなと思い元の場所に戻った。三人も何も持っていなかったのでアイテムはなかったのだと思った。でも、今回の攻略はアイテムより実力伸ばすためにやっているようなものだからいいやと思うようにした。
ゆっくりお待ちください




