32話 休憩と指導
俺が目を覚ますと、何やらいい匂いが漂っていた。俺はその匂いに釣られるかのように体を起こし匂いの元に歩いて行った。
「おはよ。体調は大丈夫?」
メアリーさんが火にかけた鍋を見ながら言った。
「はい大丈夫です。それより何作ってるんですか?」
俺はお腹が空いてしょうがなくメアリーさんに質問した。
「みんなのご飯だよ。ダンジョン入ってからしっかりとした休憩とってなかったからしばらく休憩。それでみんなお腹空いてるだろうから、体温まって栄養もきちんと取れるお鍋。シメはお米と麺どっちがいい?」
「米でお願いします!」
「はーい」
俺は今か今かと鍋が出来上がるのを待った。ユースさんや勝たちはまだぐっすり眠っており退屈にしていると、トールさんが隣に座った。俺は何か話したいことでもあるのかなと思っていると、トールさんが話し始めた。
「初めて会った時からユースを気にかけてくれてありがとう。ちなみに小出くんは攻略者になるのでいいんだよね?」
トールさんが事実確認のような口調で質問して来た。
「今のところそのつもりです。烈火の鳳仙花っていうギルドの間藤さんにもたくさん褒めていただいたので、自分には攻略者の素質があるんじゃないかって思ってます」
冗談っぽくも聞こえるその言い方に少し失礼かなと言った後思ったが、トールさんの反応は予想外なものだった。
「私も君には期待しているよ。と言うより期待せざるおえないって言った方が正しいかな」
トールさんの言葉に俺は気分が良くなっていると、トールさんたちと一緒に同行してくれている攻略者の一人が近づいて来て言った。
「俺も期待してるぜ。お前には不思議と余裕があるように見える。心の中にある自信というか、自分の実力を一番理解して、どう扱うのが効率的か最適解か分かってるような感じがする。お前の成長を近くで見守れないのが残念だけど、今度会う時は俺たちをあっと驚かせるぐらい成長しててくれよ」
「任せてください。皆さんも無視できないような攻略者になってみせます!」
俺はテンションが上がり相手の熱意に応えるように言った。すると、トールさんが言った。
「今でも君のことは無視できない存在だよ。いつ私たちが時代遅れと言われても不思議ではない人材だからな。だから、光正を卒業したら私たちのギルドに勧誘したいと思ってるんだ。こう見えて私は結構小心者でね。世間が自分のことをどう思ってるのか心配で不安なんだ」
トールさんの本心の吐露に驚いていると、同行している攻略者たちが口々にヤジを飛ばした。
「そんな考えで世間を引っ張ってけるのか!?」
「攻略者チャート最上位勢の本音を学生に打ち明けるな!」
「次世代を引っ張っていくのはあんたなんだぞ!」
そのような愛あるヤジにトールさんは答えた。
「そうだな。私がクヨクヨしていては次世代の攻略者の卵たちに悪影響だ。小出くん、私を手本にしなさい。もちろん小心者の私ではなく、世間を引っ張っている世界最強の攻略者をな」
「はい!」
そんな会話をしているとメアリーさんの声が聞こえて来た。
「お鍋出来たよ」
俺はその言葉に瞬時にメアリーの元に行き鍋をよそってもらった。
「小出くん……」
「やっぱり学生は食欲に正直だな!」
トールさんはガッカリしていたが、俺は何のことでガッカリしているのかいまいち理解できなかった。そこからしばらくトールさんたちと雑談をしていると勝たちが目を覚ました。だが、ユースさんはまだ眠っていた。ユースさんは一人でガーゴイルを倒したりネクロマンサーを探し回ったりと、かなり疲労が溜まっているだろうからしばらく寝かせてあげることになった。勝たちも鍋を食べ終え雑談をしていると、ユースさんが目を覚ました。ユースさんはまだ眠たそうに大きなあくびをした。
「おはよう」
ユースさんが俺たちにおはようと言うその表情はまだ寝たいと言っているようだった。
「もうちょっと寝ててもいいよ」
トールさんがそう言うが、ユースさんは首を横に振った。自分にストイックなユースさんに凄いなと思った。でも、ユースさんは眠たそうにうとうとしながら鍋を食べていた。さすがにもう少し寝た方がいいと説得して三十分だけ寝かせることにした。
「おはよう!」
追加で三十分寝たユースさんはとても元気になっておりいつものユースさんだった。逆に眠たいとあんな風になるんだと新しい発見だった。
「それじゃあみんな起きたことだし早速始めようか」
トールさんがそう言い、俺たちはダンジョン攻略に戻るのだと思い準備をした。でも、それはメアリーさんに止められた。俺たちが不思議に思っているとトールさんが説明してくれた。
「このまま攻略してもいいが、せっかく私たちがいるのだからみんなに色んなことを指導しようと思ってね。それに、指導した方がみんな成長できると思ってるから」
トールさんの言葉に俺たちは歓喜した。世界最強の攻略者から直々に指導してもらえるのだ、喜ばない方がおかしいだろう。
「それじゃあ近接戦闘は私と拓郎。魔法はメアリーと未来が指導する。前後半で分けるから先に好きな方を選んでくれ」
俺と透はメアリーさんたちの方に残りのみんなはトールさんたちの方に分かれた。
「それじゃあ交代する時に声をかけるからそれまで精一杯頑張るように」
「「「はい!」」」
早速俺と透はメアリーさんたちに指導してもらった。
「それじゃあ始めるわね。二人の魔法に対する理解度は何となく理解できたけど、二人は魔法ってどう思ってる?」
俺と透は少し考えた。でも、どう思っているかなんて考えたことがなく答えが出なかった。
「答えはないんだけど、私は魔法ってマナっていう万能な素材から作られる数多の神秘だと思ってる。到底人間には理解できないことだから神秘なの。これは私の考えだから気にしなくていいんだけど、二人が魔法に対してどう思ってるのか知りたいの。魔法を使う上で重要なのは理解度だから。もちろんマナ感知も重要だけどね」
俺たちは少し考え結論を出した。
「魔法はマナを自分の思った通りに創造できる、力の呼応だと思います」
俺がそう言うと透が続いた。
「魔法は自分の心の内を映し出す鏡だと思います」
「いいねそれじゃあ二人が教えて欲しい魔法は何かな?」
「サポート系です」
「攻撃系です」
俺はサポート系、透は攻撃系と真逆のことを言った。
「それじゃあ小出くんは私で、中村くんは未来に教えてもらって。一通り教えてもらったら交代しようか」
「「はい」」
俺は早速メアリーさんにサポート系の魔法を指導してもらった。
「まずアークシィリュームがどんな感じか思い浮かべてみて。マナが全身を駆け回ってるのが分かるでしょ。それを相手の体にもやるの。理論だけ聞いても分からないだろうからやってみましょう」
「はい」
俺はマナを全身に巡らせる感覚をそのまメアリーさんに流してみた。
「出来てるわよ。そのまま流し続けるの。前教えたようにループさせられる?」
俺はループさせる感覚がいまいち分からなかったので頭の片隅でずーっと流し続ける脳筋解決法を実行した。
「え、出来てるの?」
「他のこと始めたらすぐに切れると思いますけど、一応……」
「じゃあそのまま簡単な魔法使ってみて」
俺は言われた通り火魔法を出現させた。何とかアークシィリュームを途切れさせずに出来た。
「す、凄いわねまさか一発で出来るなんて……後は数こなして慣れるだけだから私に教えることはないわ」
「それじゃあこのまま未来さんに魔法教えてもらいます」
俺はメアリーさんにアークシィリュームをかけながら未来さんに攻撃系の魔法を指導してもらった。
「私が魔法使う時に意識してることは死にたくないっていう生存本能ね。人間の中で一番強い思いって生存本能っていう生きたいっていう意思だから。後、仲間と生きて帰りたいとかね。ここでやるとダンジョンの壁崩れたりするかも知れないからまた今度ね」
そんな話を聞いているとトールさんの声が聞こえて来た。
「それじゃあ交代しようか!」
俺たちは今度トールさんと拓郎さんに近接戦闘を教えてもらうことになった。
ゆっくりお待ちください




