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忘れられた記憶の断片から力を得れる俺は小出しで成り上がる  作者: 描空
学生編

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31話 ラッシュ

 ネクロマンサーを倒して睡眠を取った俺たち。初めてのダンジョンであまりぐっすり寝られず目を覚ますとトールさんたちが楽しそうに話をしている声が聞こえて来た。


「みんな強くて期待できるね」


「そうね。私は小出くんがいいと思うわ」


「俺もいいと思います」


 そんな会話をしていた。目は覚めているが、起き上がれない状況にいると、近くから足音が聞こえた。


「ユースもう起きたのか?」


 ユースさんが起きたようだった。


「おはよ。何の話してたの?」


「みんな強くて期待できるなって」


「それ、みんなには言わないようにしてね。調子乗って怪我したら嫌だから」


「そうだな」


 そこからしばらくユースさんも会話に入り楽しく話していた。選抜戦の話や期末テストの話など学校の話をするユースさんに、大人たちはうんうんと相槌を打ち聞いていた。


「ちゃんと聞いてる?」


 ユースさんはみんなが相槌しかしないからちゃんと聞いていないと思い、少し不機嫌な声色で言った。すると、みんなちゃんと聞いてるよと優しく言った。ユースさんは機嫌を直し話を続けた。授業、部活などの話をしているとユースさんは俺の話をし始めた。


「健斗ってみんなが思ってるより凄いんだよ。剣の扱い方も上手いし身体能力も高い。それに、魔法も簡単に使ってみせるんだから」


 ユースさんの言葉に恥ずかしく思っていると、大人たちがユースさんを茶化し始めた。ユースさんは受け流すように答えたが、トールさんの質問が一瞬にして場を凍らせた。


「小出くんの事、どう思ってるんだ?」


「……別に何とも」


 明らかに何とも思っていない答え方に大人たちは盛り上がりを見せた。俺はその言葉を聞いて心拍数が一気に上がった。


「んー……おはようございます」


 大人たちがうるさくした事で春奈が目を覚ましたのだ。勝と透はまだ眠っていたので俺も狸寝入りをすることにした。


「何の話してたんですか?」


 春奈の質問にザックリ話していた事を伝えると、春奈は言った。


「ユースさんって健斗の事好きって言うよりいいライバル、高めあえる同士って感じだと思ってたからちょっとびっくり。でも、健斗は優しいし一緒にいて楽しいから学生のうちは付き合わないで欲しい。その後は自由にしてくれたらいい。楽しい学生のうちはみんなの健斗ってことで独り占めしないで」


「……言っちゃったら肯定になるけど、分かったわ」


 俺が狸寝入りしている間に話がどんどん進んでしまった。この雰囲気どうするんだと思っているとトールさんがよいしょと言って立ち上がった。


「よーし、みんな起きろー!」


 トールさんの声に俺は自然と今起きたように振る舞った。


「おはようございます」


「おはよう! 眠れたかな?」


「はい」


 そんな会話をしていると勝と透も目を覚ました。二人ともまだ寝たそうにしていたが、トールさんがそれを許さなかった。


「みんな腹ごしらえをして準備を済ませるように。ダンジョンでゆっくり休憩できることなんて完全攻略した後だけだからな。今のうちに短い睡眠時間で戦うことを体に覚えさせるように」


 俺たちは力無い返事をして準備を済ませた。


「準備出来たわね?」


 ユースさんの問いかけに頷くとユースさんが先頭に立ち進み始めた。ネクロマンサーという破滅級のモンスターが出て来たこともあり、ユースさんの足取りは慎重になっていた。歩いていると、ゴブリンやスケルトンが時々襲って来たが、難なく返り討ちにした。今まで時々モンスターが襲ってくることはなく少し不思議に思っていると、次々と様々なモンスターが襲って来るようになった。ゴブリン、スライム、オーク、オーガなど強くはないが、途切れることなく襲って来た。連鎖のダンジョンという名前の通りモンスターが連鎖して襲って来ていた。


「このままじゃいつか押し負ける。健斗、火の壁出して!」


 俺はユースさんの指示通り火の壁を出した。これでモンスターは俺たちの所まで近づけず、火の壁で焼き殺すことも可能だ。一息付いていると、聞き覚えのある声が聞こえて来た。


「グオオオ!」


 その声はガーゴイルだった。それも複数聞こえて来た。ガーゴイルは体が石で出来ているため火魔法は効かない。それなら周りにいる火魔法が効くモンスターを全滅させてガーゴイルと戦える準備をした。火の壁を今いる空間の壁まで到達させたが、ガーゴイルは無傷だった。ガーゴイルは三体いて誰か一人がタイマンをしなくてはならない。その時、ユースさんが一体のガーゴイルに向かいながら言った。


「私がタイマンするからみんなは早くガーゴイルを倒して!」


 俺たちはやるしかないと気合を入れた。勝と透、俺と春奈でガーゴイルを二対一で相手にした。ゆっくり戦っていては誰かが怪我をすると考え、ガーゴイルを倒せてダンジョンに影響のない威力の爆発魔法をガーゴイルの胸の所に撃った。前と違い爆発魔法がきちんと命中しガーゴイルはかなりのダメージを負った。その隙に春奈が振透剣をガーゴイルに突き立てトドメを刺した。勝と透の方はと言うと、勝が不撓の拳でガーゴイルの攻撃を受け止めている間に透がガーゴイルに円錐型の木を四方から打ち込んで倒していた。俺たちは急いでユースさんを助けようと動いたが、ユースさんはガーゴイルの頭に剣を突き立てて息を荒げていた。まさか一人で勝っているとは思っておらず、俺たちはユースさんを労った。だが、そこで連鎖は終わっていなかった。何と破滅級のミノタウロスが現れたのだ。しかも二体も。俺たちは急いで戦闘体制を取った。


「にいちゃんこいつら強いね」


「そうだな。でも、俺たちの方が強い」


「そうだね」


 そのミノタウロスは兄弟なのか親しげに話していた。俺たちが動揺しているとミノタウロスはニヤリと笑って言った。


「お前たちは俺たちを楽しませてくれるよな?」


「な?」


 ミノタウロスが二人して急に殴って来た。俺たちは左右に避けた。俺とユースさん、勝と透と春奈に別れてしまった。俺とユースさんの方は兄のミノタウロスで勝たちは弟のミノタウロスだった。見た目だけで言えばゴーレムとかの方が強そうだが、ミノタウロスは知性を持っているのが厄介だ。無闇に攻撃してきたりせず、こちらの行動をきちんと見て行動する。これだけでかなり厄介なのだ。その時、トールさんの声が響いた。


「お前たちならミノタウロスなんて余裕だ!」


 その言葉に俺たちは勇気をもらえた。


「ふん。それだけで勝てるほど俺たちは甘くないぞ」


 そう言う兄のミノタウロスにユースさんが雷王の剣で斬り掛かった。ミノタウロスは余裕の表情で避け、ユースさんにカウンターを入れた。ユースさんはダンジョンの壁にめり込むほどの威力で蹴り飛ばされた。それを見た俺は近接攻撃は悪手だと感じ魔法主体で行くことに決めた。その刹那、ミノタウロスは俺の目の前まで迫って来ており腹に一発グーパンを食らった。あまりの痛さに悶えているとユースさんがミノタウロスの背中を斬りつけた。


「いってーな!」


 ミノタウロスはユースさんを殴った。ユースさんは何とか剣で防いでおりダメージは最小限に抑えていた。俺はその間にアークシィリュームを発動させ身体能力を底上げして距離を取った。ミノタウロスの動きが早く魔法を撃つ暇がない。それに、ユースさんに当たる可能性もあるので近接で戦う方がいいと判断した。俺は氷刃剣を抜き、ミノタウロスに勝ちたい思いと力を目一杯込めた。俺はユースさんの事を見ているミノタウロスに斬り掛かろうとしたが、ミノタウロスが待ってましたとこちらに振り向いた。俺は瞬時にガードした。ミノタウロスが氷刃剣に触れたことで右手が凍っていた。


「厄介だな」


 ミノタウロスがそう呟くと弟のミノタウロスに呼びかけた。


「コイツらからやるぞ」


 そう言うと弟のミノタウロスがこちらに来ようとしたが、勝たちがそれを許すはずもなく銀の羽で足首をブッ刺され、透の魔法のツルで動きを止められ、勝の不撓の拳で顔面を殴られた。兄のミノタウロスが弟の隙を作り出し勝たちは弟のミノタウロスをボコボコにした。兄のミノタウロスもそれを見て弟を助けに行こうとしたが、俺とユースさんが許すはずもなく、二人でミノタウロスを一刀両断にした。


「にいちゃん!」


 ミノタウロスが兄の事を嘆いた瞬間、透の木が弟のミノタウロスの胸を貫き、春奈が振透剣でミノタウロスの首を落とした。俺たちはミノタウロスを倒した疲労とダメージでその場に倒れた。その瞬間、メアリーさんたちが駆け寄って来て治癒魔法を使ってくれた。大人たちに労いと称賛の言葉をかけられ俺たちはとても嬉しくなった。


「流石だ。お前たちなら絶対勝てると分かっていた。今すぐにでもお前たちを私のギルドに迎えたいが、それは高校を卒業するまで待たないとなのが惜しい。だが、後三年でお前たちがどれだけ成長できるか楽しみにしているぞ! もしかしたらお前たちは世間の常識を覆すかもな!」


 その言葉を最後に俺は気を失った。

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