30話 ネクロマンサー
オークと思しきモンスターを倒した俺たちは長めの休憩を取った。昼ご飯を食べ午前の疲労を取りそろそろ攻略再開しようという雰囲気になった。準備を終え一本道を進んで行くと、そこには無数のオークの死骸があった。俺たちはオークの死骸を避けて道を進んで行くと、オークが住処にしていたであろう広めの空間に出た。そこにはオークの子どもや非戦闘要員のオークがいた。俺たちはそのオークを一匹残らず殲滅した。完全攻略のため辺りにある小さな分かれ道もきちんと確認した。特にめぼしい物はなく、俺たちは歩みを進めた。変わらない景色に飽き飽きしていると先頭を歩いていたユースさんが足を止めた。
「何か嫌な予感がする」
俺たちはその言葉に戦闘体制を取った。そこは少し開けた場所でオークの時ようにモンスターがどこから来るのかなど分からない状況だった。俺たちはユースさんが向いている正面に向いた。しばらく何も起こらず警戒していると、正面から一体のスケルトンが歩いて来た。そのスケルトンは剣と小盾を持っており斥候兵のような感じだった。
「何だスケルトンかよ」
そう言い勝はスケルトンの頭を不撓の拳で粉砕した。俺たちはスケルトンなんかに警戒していたという事から油断やバカバカしいという雰囲気が漂った。そこから何体かのスケルトンが現れたが、俺たちは苦戦する事なく全て倒した。ユースさんは不思議そうな不満そうな表情をしていた。
「どうしたの?」
俺はそんな表情のユースさんを見たのは初めてだったので声をかけた。
「いや、さっき背筋がぞくっとするような感じがしたのにスケルトンだけなんておかしいなって思って」
「そっか。ちなみにゴーレムとかガーゴイルの時もそうなった?」
「なってない。今回は全く違う嫌な感じだった。悪寒というか鳥肌が立つ感じ」
「もしかしたらもっと強い奴がいるかも知れないから一応警戒は解かないように」
「「「はーい」」」
三人は返事からして油断している事が分かった。もし俺たちが勝てないモンスターに出会してもトールさんやメアリーさんがいるから安心感が違う。いい意味でも悪い意味でも攻略に緊張感がないのだ。俺はそんな現状を危惧して自分だけでもいつでも死ぬかも知れないという意識を持つようにした。スケルトンを倒してから少し歩いていると、辺りにスケルトンだと思しき骨がそこらじゅうに散らばっていた。不気味だなと思っていると、ユースさんが足を止めた。俺たちはユースさんの前を見た。そこにスケルトンが一体立っていた。そいつは深々とローブのフードを被っていた。所々ローブが破れて中の骨が露見している。その時声が聞こえて来た。
「人間よ、ここより先に進みたくば私を倒して行くがいい」
俺たちは一瞬誰が喋っているのか分からず、トールさんたちの方を見たが全員が首を横に振った。俺たちはスケルトンの方を向き直すと、そこにスケルトンはいなかった。俺たちが動揺していると、正面からスケルトンが無数にやって来た。俺たちの頭の中にさっきのスケルトンが死霊魔法使いのネクロマンサーなのではないかという考えがよぎった。ネクロマンサーは最低でも破滅級のモンスターであり、扱うモンスターと数によっては神災級にもなり得るモンスターだ。だが、ネクロマンサー自体はそれほど強くないため本体を叩く必要がある。俺がそんな事を考えていると、トールさんが言った。
「サポートはしてやるが、ネクロマンサーぐらい自分たちだけで倒してみろ。ネクロマンサー如き倒せないようでは私たちと肩を並べることなんて夢のまた夢だぞ」
ネクロマンサーだという答え合わせに絶望するのと同時にトールさんに期待されているのだと分かり、絶望が高揚感とやる気で上書きされた。
「私と春奈で本体を探すから三人は耐えてて」
「分かった!」
ユースさんはそう言うと、雷王の剣で体に雷を纏い目にも止まらぬスピードで駆け回った。春奈は銀翼の天使で空からネクロマンサーを探した。今いる場所にネクロマンサーがいない可能性もあるため、俺も本体を探しに行こうと思ったが、その間、勝と透を放っておくわけにはいかないのでユースさんと春奈の二人に任せることにした。しばらくの間スケルトンを倒していると、俺たちの後方からオークの足音が聞こえて来た。俺たちはまさかと思い顔を見合わせた。そのまさかだった。ネクロマンサーが死霊魔法でオークたちを蘇らせたのだ。オーク一体の強さはそこまでではないが、さすがに数が多いとしんどいため爆発魔法で数を減らすことにした。
「ひとまずこれで終了かな?」
スケルトンもオークも全て倒し終えユースさんと春奈がネクロマンサー本体を見つけてくれるのを祈るしかなかった。それにしても、弱いモンスターばっかりで良かったと安心していると、さっき倒したスケルトンとオークが復活し襲って来た。俺たちは油断はしていたが、腰を下ろしたりはしておらず、すぐに反撃した。俺たちはまさか復活するとは思っておらずびっくりした。そこから初めに倒したスケルトンとオークが再び復活し倒した。
「これってネクロマンサー殺さないと無限に復活する?」
勝の言葉に俺たちは苦い顔をした。スケルトンとオークとは言え、ずっと戦っていなきゃいけなく休む暇がない。休む暇がないので体力を回復させる事ができず困っていると、透が言った。
「二人とも僕にくっついて」
俺たちが困惑していると透が俺を引っ張り勝とくっつくと、透は杖を地面に突き立て大きな木を生やした。俺たちは大きな枝の上に立っており、簡易的な休憩スペースが出来た。
「ありがとう」
「助かる」
俺と勝が感謝を述べるとトールさんの声が聞こえて来た。
「私たちにも休むなら休むと言いなさい! 私たちの方にスケルトンとオークが来るでしょう! でも、作戦としては正しいです。これからも柔軟な発想で危機を脱するように」
そう言うトールさんは、選抜戦の三年の部の時に張られた保護バリアのような空間から言っていた。俺はその魔法が何なのか気になり聞いた。
「その魔法ってどんな魔法なんですか?」
俺が聞くとメアリーさんが答えた。
「これは保護魔法って言って、ある程度の攻撃から守ってくれるバリアなの。普通の魔法と比べて魔法を出現させて終わりじゃなくて、維持しておかなくちゃいけないからマナを消費し続けるっていうデメリットがあるの。でも、逆に言えば、マナさえあれば維持し続けられるから強いモンスターが来ない限り安心だよ」
「教えていただきありがとうございます」
「またいつでも聞いてね」
メアリーさんに感謝を伝えしばらく休んでいると、全てのスケルトンとオークが急に倒れた。ユースさんか春奈がネクロマンサーを倒してくれたのだと思い二人が帰ってくるのを待っていた。しばらくすると、二人が帰って来た。外傷も特になく労いの言葉をかけた。
「お疲れ様」
「本当疲れた……全然見つからなくてイライラしたもん」
「マジそれ。結局どこにいたかって言うと、ダンジョンの入り口付近よ! マジ見つけた時、コテンパンにして殺してやってわ。次会ったら速攻殺す」
二人に相当苦労させた事に負い目を感じていると、メアリーさんが二人に言った。
「根本的に疲れがなくなるわけじゃないけど、感じづらくなる魔法かけてあげようか?」
二人は一瞬の迷いもなく首を縦に振った。二人は魔法をかけてもらい、しばらく仮眠することにしたようで毛布を取り出し丸まった。メアリーさんが二人に何の魔法をかけたのか気になり聞くことにした。
「メアリーさん、さっき何の魔法かけたんですか?」
「アークシィリュームよ。学校で習わない?」
俺はチャンスだと思いメアリーさんに質問をした。
「サポート魔法ですよね。俺もサポート魔法使いこなせるようになりたいんですけど、誰かに使ってあげる時ってどんな感じなんですか?」
「自分のマナがその相手に流してループさせるだけよ。口で言うと簡単に感じるけど難しいからゆっくり挑戦してみたらいいわ」
「ループさせるって確かに難しそうですね。頑張ってみます!」
俺は二人が仮眠している間にマナをループさせる練習をしようとした。でも、その時トールさんが言った。
「私たちが起きておくから三人も寝なさい。疲れてないって感じてるかも知れないけど、体には確実に蓄積されてるから」
「「「はい」」」
俺は仕方ないなと思ったが、今度じいちゃんに教えてもらえるからその時試してみようと今は寝ることにした。
ゆっくりお待ちください




