29話 二人のアイテム
連鎖のダンジョンに入り春奈とユースさんがアイテムを手に取った。二人のアイテムがどんな性能なのか把握出来ていない以上作戦も戦い方も練られないため二人にアイテムの説明を求めた。
「二人のアイテムってどんな能力なんだ?」
「「私のはね……」」
二人がシンクロして言うと二人は睨み合った。
「ま、まぁ落ち着いて。今から一緒に攻略するんだから仲良くして」
二人はなんだか腑に落ちない顔をしていた。このままで大丈夫なのか心配したが、二人はライバルとして互いに高め合ってくれると信じることにした。
「で、アイテムの性能教えて。春奈から」
「私の剣は振透剣箔って言うの。振動を発生させる事ができて、その振動を地面に浸透させたり相手の体内に流し込む事ができるの。振動は剣自体にも纏わせる事ができて、電動ノコギリみたいにする事もできるらしい」
「それじゃあユースさんの杖は」
「私の杖の名前は雷電応杖って言うの。この杖は雷に特化した杖らしくて、魔法の雷だけじゃなくて、私の雷王の剣の雷にも反応してくれて、雷の威力を五割り増しにしてくれるんだって。まだ雷魔法は使えないからしばらくは雷王の剣の雷を使ってからじゃないと撃てないから準備に時間かかるからよろしく」
二人のアイテムの詳細を確認したところで俺たちはどうやって戦うか話し合った。絶対、ダンジョン来るまでの車の中で話し合っていた方が良かったと思ったが、こうなってしまった以上変えられないためパパッと作戦を決めた。
「まず、春奈は勝のサポートをする形で近接戦闘を行って、ユースさんは透と一緒に魔法を撃って。俺は四人が殺し損ねたモンスターをやるから。どんどん進んでいくのはなしで、ゆっくり丁寧に行こう。それで、モンスターが強くなって来たら新しいアイテムを使うのは控えめにして、最後の方だけ使うとか最初だけ使うって感じにして。怪我なく安全第一でやろう」
みんな俺の作戦に異論なしでモンスターが出て来るところまで歩みを進めた。まだ、連鎖のダンジョンは下り道が続いており頂上からだいぶ歩いたように感じた。しばらく歩いていると次第に下り道から平坦な道に変わった。ここら辺からモンスターが出て来ると察した俺たちは警戒心を強めた。連鎖のダンジョンは山の中にあるダンジョンで、壁や地面が土や石で構成されておりダンジョンが崩壊してもおかしくないんじゃないかと感じるほどだった。その時、ゴブリンが一匹俺たちの前に出て来た。俺たちは少し驚いたが、ゴブリン一匹かと驚いて損したような雰囲気になった。
「ギャア゛ア゛ア゛」
急にゴブリンが叫び何処かに逃げて行った。その瞬間、無数の足音がこちらにやって来るのが分かった。俺たちはアイテムを構え待った。ダンジョンの中は暗く視認性が悪い。あまり広くないから無数の足音が反響し全方向から聞こえて来る。俺たちはどこから来るのは分からず背中合わせになった。すると、さっきのゴブリンが逃げて行った方に火の明かりが見えた。そっちを見ると、松明の火の明かりに照らされた無数のゴブリンがこちらに向かって来ていた。俺たちはすぐさま攻撃を始めた。俺は黎杖を使い火炎放射器のように火魔法を撃った。見えていたゴブリンは全滅したが、すぐに第二陣がやって来た。すると、次はユースさんが応杖を使い雷をゴブリンたちに向かって撃った。そこからしばらくゴブリンたちは来なかった。
「これでゴブリンは終わり?」
「そうみたいね。それじゃあ完全攻略のために隅から隅まで探索するわよ。まだ複数の逃げたゴブリンがいると思うけど、そのぐらいなら自分で対処すること。もし無理ならここに戻って来ること。見つけたアイテムはその人の物。これぐらいかしら。それじゃあ手分けして探索するわよ」
俺たちはユースさんの指示に従い手分けしてこの辺りを探索した。時々逃げたゴブリンがいたが、サクッと処理し探索を続けた。でも、アイテムや珍しい物などは特になく行き止まりまで探索したため元いた場所に戻った。俺が戻ると勝もいた。俺と勝は同じ方向を探索していたためこっちはあまり探索する所がなく仕方なく戻って来たのだろう。
「そっちも何も無し?」
「うん。さすがに何も無さすぎて退屈だ」
「俺も。逃げたゴブリン数匹いたぐらい」
そんな話をしていると透も帰って来た。
「どうだった?」
「何も無し」
俺たちは春奈とユースさんが帰って来るまで待っていた。おそらく、二人は新しいアイテムの肩慣らしみたいな感じで逃げたゴブリンに試しているだろうから少し時間がかかるのだと気長に待った。
「たーすーけーてー!」
春奈の声がダンジョンに響いた。俺たちはどうしたんだと構えた。すると、春奈がこちらに走って来た。なんと、まだかなりの数のゴブリンが残っていたのだ。春奈は一人じゃ対処出来ないと察し逃げて来たのだ。俺は魔法で一網打尽にするのもいいと思ったが、この数なら俺たちがいれば春奈の振透剣の肩慣らしになると考えやめておいた。
「このゴブリンを利用して春奈がアイテム使いこなせるようにしよう」
勝と透は頷いた。春奈にもそのことを伝えると春奈は振透剣を抜いた。俺が火の壁ゴブリンが近づけないようにすると、春奈は振透剣で振動を発生させた。その振動は三半規管に影響を与えゴブリンたちはなんだか体調悪そうにしていた。その隙に春奈は振透剣を電動ノコギリみたいにしてゴブリンたちを撫で斬りにした。ゴブリンたちは三半規管が弱いのか反撃出来ていない。ゴブリンたちは全員春奈の振透剣に撫で狩りにされた。
「さっきの振動あなたのアイテムだったのね。急にゴブリンたちが動きを止めたから何かと思ったわ。それよりアイテム見つかった?」
ユースさんが何気ない顔で戻って来た。俺たちがユースさんの問いに首を横に振るとユースさんは残念そうにしていた。
「まぁでも、こんな浅い所にアイテムある方が珍しいから進みましょうか」
ユースさんの指示で俺たちは連鎖のダンジョンを進んだ。しばらく歩いたが、モンスターが出て来なかったので小腹を満たすために少し休憩した。
「これからどうする? このままどんどん進む?」
俺がユースさんに問いかけるとユースさんはお父さんとお母さんの顔を見てから言った。
「どんどんは進まない。アイテムを慣らすためにゆっくり進む。多分次はゴブリンより少し強いモンスターが来るだろうから油断せず行くわよ」
俺たちは頷き戦闘に備え準備した。そこから少し歩くと一本道に出た。何だか嫌な予感がした俺は西田が使っていた設置型の爆発魔法が使えないかイメージした。マナに地雷のイメージを持たせ爆発魔法にならないように制御して一本道の地面にそのマナを放った。何とか地面に触れた時点で爆発しないように出来た。その時、一本道の奥からドシンドシンと複数の大きな足音が聞こえてきた。その足音は期末テストの時のガーゴイルやゴーレムよりは軽い足音だった。
「これ、オーク?」
期末テストの時にオークと戦った透が言った。
「オークがこの量はキツくない?」
俺がそう言うと春奈が俺たちの前に出た。何をするのかと思っていると振透剣を鞘から抜き一本道に剣先を向けた。すると、春奈から先の一本道の空間が激しく振動した。俺たちも耳を塞がないと三半規管がやられると自衛本能が働いた。しばらく春奈が振透剣を使い、終えるとオークの足音が止まっている事が分かった。ユースさんは今のうちにと雷王の剣を抜き体に雷を纏った。そして、応杖を一本道に向かって突き出した。その瞬間、雷が空中を迸り一本道を駆け回った。
「「「グオ゛オ゛オ゛オ゛」」」
オークと思しき声が聞こえて来た。どうやらユースさんの攻撃で全滅したようだった。俺の魔法は意味ないなと起爆して潰しておいた。そこから何度かオークと思しきモンスターの存在を確認したが、同じ戦法で二人のアイテム慣れを促進させた。何度か過ぎるとオークは来なくなった。
「もう来ないだろうししばらく休憩しましょうか」
ユースさんの指示で俺たちは長い休憩を取ることにした。その間、勝たちはトールさんとメアリーさんたちと楽しそうに話しておりこちらまで微笑ましくなった。
ゆっくりお待ちください




