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忘れられた記憶の断片から力を得れる俺は小出しで成り上がる  作者: 描空
学生編

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28話 ダンジョン巡り

 期末テストが終わり一学期も残り一週間となった。期末テストの結果はもちろん最高評価を貰えた。具体的にどれが何点だったという評価の仕方ではなく、全てのテストを加味して評価を行う方式なのだ。AからEまであり、俺と春奈、ユースさんはA。勝と透はBだった。勝と透は相手がオークだということもあり全力を出せずに終わり、評価に不満を持っていた。塩田先生にそのことを伝えると、二人の実力は選抜戦できちんと評価されているから大丈夫とのことだった。


「ねぇねぇ、みんなは夏休み何するの?」


 春奈の問いかけに俺たちは各々予定を言った。


「俺たちは部活だな」


 俺と勝は近接戦闘部ということもあり、夏休みは部活が多い。次は透が答えた。


「僕は家族と旅行に行くぐらいかな」


「私は両親とダンジョン巡りね」


 ユースさんの予定に俺たちは正直引いた。せっかくの夏休みなのにダンジョンに行くということは俺たちにとって考えられないことだったからだ。それに、俺たちのような高校一年生はほとんどのダンジョンに入ることすらできないから機会すらないのだ。


「みんな予定があるのね……せっかくだからユースさんと一緒に遊びたかったけど仕方ないか」


 春奈の言葉にユースさんが言った。


「それなら私と一緒にダンジョン巡りする?」


 俺たちは何でそうなるんだとユースさんを見つめた。ユースさんは何か変なこと言った? と言いたげな顔でこちらを見つめている。俺たちが何も言わないでいるとユースさんが続けた。


「沈黙は肯定と取っていいかしら?」


「ち、ちょっと待って」


 さすがにこのままの勢いでダンジョン巡りに付き合わされる事は避けるために話し合う時間を貰った。


「俺と勝は部活あるしさすがにキツイと思う」


「私は楽しそうだと思うけど」


「僕は基本暇だからなしではないかな」


 いつメンの中で意見が割れてしまった。賛成の二人だけダンジョン巡りに参加させて、実力が天と地ほど離れてしまうのはどうしても避けたいが、部活をやってダンジョン巡りをして、また部活をやるということを考えるとどうしても首を縦に振れなかった。その時、ユースさんが言った。


「部活休めばいいじゃない。私たちとのダンジョン巡りの方がよっぽど成長できるわよ」


 それもそうだ。でも、金田先輩にはお世話になってるし、部活の一年生が夏休み来ないっていうのは避けたい。俺がどうしようか悩んでいると、金田先輩が教室を訪れた。


「小出、相川、夏休みの日程表。それと、ニ、三年は夏休みダンジョン行く奴とか結構いるから人少ないと思うけど頑張れ」


「はい。ありがとうございます」


「俺も夏休みは競技会に向けてダンジョン行くからほとんど部活顔出せないから」


「あっ、はい」


 そういうと金田先輩は去って行った。日程表を見ると、お盆を含めた約二週間が休みとなっていた。さらに、一日の部活の時間も午前か午後のみとなっておりスケジュールを組みやすい。おそらく、先輩たちが休む事が多いからそんなに活動できないのだろう。思いの外休みが多くこれならユースさんとダンジョン巡りに行けると確信した。


「俺たちもダンジョン巡り行けそう」


「本当!? それじゃあユースさん、お言葉に甘えてもいい?」


「いいわよ。日程は決まり次第メールするわ」


 そんな感じで俺たちの夏休みの予定が決まった。夏休みが始まると、春奈からメールが届いた。内容は俺と勝の休みに合わせてダンジョン巡りをするとのことだった。さらに、ダンジョン巡りは連日行うらしく一つのダンジョンを完全攻略するまでやるらしい。だから、衣服の着替えや必要な物を全て持ってこいとのことらしい。必要な物はユースさんがリストアップしてくれた表を送ってくれたためそれに従い準備した。


 そして、ダンジョン巡り当日となった。父さんと母さんにはきちんと説明し、ユースさんの両親が同伴してくれることを伝えるとそれならと安心して送り出してくれた。俺たちはいつも通り勝の家に集合すると、一台の車がやって来た。みんなは少し驚いていたが、俺は一度乗った事があったため、すぐにユースさんだと理解した。


「準備出来てるみたいね。それじゃあ行くから乗って」


 俺たちは車に乗り込んだ。車が発進するとユースさんが説明し始めた。


「それじゃあ今回私たちが完全攻略するダンジョンについて説明するね。名前は連鎖のダンジョンって言って、モンスターが一定数連鎖するように襲って来るからその名前がつけられたの。でも、モンスターの強さはそこまでじゃなくて、持久力を求められるダンジョンなの。今回は持久力を伸ばそうと思ってここに決めたの。それで、完全攻略するにあたって大事な事があって、モンスターが襲って来る所と襲って来ない所があるの。簡単に言うとエリア分けされてる感じね。だから、そのエリアを一つずつ完全攻略していって、本当の完全攻略にするの。何か質問ある?」


 俺はユースさんに質問した。


「勝とかユースさんは近接のみだけど体力持つ?」


 勝もその事が心配だったのか聞いた。勝はマナ感知に乏しいから魔法も使えないため厳しいと感じた。でも、ユースさんは安心させるように言った。


「それは大丈夫。そのためにサポーターがいるの。それに、今回は私たちを成長させるためのダンジョン巡りだから。私たち以外にもサポートしてくれる攻略者がいっぱいいるから安心して。万が一って時は助けてくれるから心配しなくていいよ」


 俺たちはそれなら大丈夫かと胸を撫で下ろした。そのまま雑談をしていると車が止まった。俺たちは着いたのかと車を降りると、そこは山の中にある自然公園のような感じだった。いい所だなと思っているとユースさんが言った。


「案内するから着いて来てね」


 俺たちはユースさんの後ろをついて行った。しばらく歩いていると、山道に入った。ハイキングに使われていそうな感じの山道を歩いていると、山の頂上まで来てしまった。俺たちがどこにダンジョンがあるのか不思議に思っていると、大人の人が複数人いるのが見えて来た。そこにはユースさんの両親を含んだ十名程度の大人がいた。勝と透、春奈の三人はユースさんの両親を見つけた瞬間二人に飛びついた。三人があーだこーだ言葉を投げかけていると、ユースさんが三人を静止した。三人は落ち着きを取り戻し、何度も謝った。超有名人だから慣れているのかトールさんとメアリーさんは平然としていた。


「三人ともこれからダンジョンに入るんだから浮かれてないでしっかり気を引き締めてよ」


「「「はい」」」


 三人は気持ちを切り替えた。ユースさんは両親にダンジョンに入っていいか聞き了承を得ると、俺たちを連れてダンジョンに入った。連鎖のダンジョンは山の頂上にあるため下って行くような構造になっていた。少し下ると大人の攻略者さんたちもダンジョンに入って来た。俺が大人の攻略者さんたちを気にしているとトールさんが話しかけて来た。


「そんなに気にしなくていいよ。私たちは今回、君たちのサポートをメインに行うだけだから。いないものとして扱ってくれ」


「そ、そう言われても無理な気がします」


「あはは、まぁそうだよね。私たちは保険だとでも思ってのびのび攻略してくれたらいいよ」


 その言葉がスッと頭の中に入って来た。保険がある安心感と同時に緊張が少し解れた。前を向き自分と向き合おうとしていると春奈とユースさんが何か言い合っているのが見えた。二人とも右手に見た事ないアイテムを握っていた。まさかアイテムのことで言い合いになっているのかと思い勝と透に説明を求めた。


「これどういう状況?」


「あぁ……二人とも選抜戦でアイテム貰っただろ、それを今回のダンジョン巡りで実戦に使えるぐらいまで慣れるために持って来たのに、二人とも自分が先だって譲らなくて」


「別に譲らなくてよくない?」


 俺が本心から思っていることを言うと、言い合っていた二人がこっちを見た。そして、二人が俺の目の前まで来ると言った。


「みんなの負担が大きくなるけどいいの!?」

「みんなの負担が大きくなるから嫌なの!」


 ユースさんは俺たちの負担なんて気にしておらず、春奈は俺たちの負担を気にしているようだった。こういう価値観のズレがパーティの問題なんだなと思った。二人をよく見ると、春奈は剣を持っておりユースさんは杖を持っていた。これなら教えながらダンジョン攻略出来るのではないかと思った。


「ユースさん、最初ってそんなに強いモンスター出て来ないでしょ? それを利用したらいいんじゃない?」


 ユースさんは納得したようで春奈との言い合いをやめた。春奈はどういう事かいまいち理解していないようだったので俺が説明した。


「最初って弱いモンスターが多いだろ? そこで、勝が春奈に近接を教えて、透がユースさんに魔法を教える。俺なら二人とも教えられるからどっちも平等に教えるって事」


 春奈も理解し、ようやく状況が好転した。最初からこんなにグダグダで大丈夫かと少し心配になった。

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