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アルカディアリベル  作者: 描空


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22話 選抜戦③

 今日はいつもより早く集合して学校に向かった。学校に向かうまでの間、ユースさんのお宅にお邪魔して見られなかった昨日の二年生の選抜戦の詳細を勝たちに聞くことにした。


「昨日の選抜戦どうだった?」


 俺がそう聞くと三人が待ってましたと言わんばかりに俺を問いただした。


「昨日何してたの!? どこ行ってたの!?」

「連絡つかないし心配してたんだから昨日の詳細教えて!」

「流石に俺も心配したぞ。選抜戦の詳細はその後だ」


 何だか懐かしい気分になりそれほど悪い思いはしなかった。でも、ユースさんのプライベートなところもあるので大事なところは隠しつつ事実を伝えることにした。


「実はユースさんの相談に乗ってて、そこからユースさんの自宅に上がらせてもらってご両親とちょっとだけ話したんだ。本当にそれだけ」


「「「それだけ!?」」」


「それがどれほどの事か分かってる!?」

「ずるい私もヨハネス夫婦に会いたい!」

「それは見過ごせないな」


 そこから三人の興味はヨハネス夫婦に向いた。ユースさんの事から興味を逸らすことができたためそのままヨハネス夫婦について話すことにした。


「会ったと言ってもほんの数分だよ。でも、やっぱり普通の人とは何かオーラが違ったね」


「どんな感じ!?」


「まず、何と言うか……強そうって言うか、人としての格が違う感じがしたね。纏っている強さ、オーラが常人のそれじゃなかった。多分会った時の衝撃はトップアスリートとかよりも凄いだろうな。本当に生き物として強いって感じがした。後、カッコイイ。シンプルに見た目が良過ぎる。テレビとかで見るより良かったな。会えたっていう特別感とか嬉しさでそう写ってるだけかも知れないけど良かったな」


「「「いいなー」」」


 とは言ったものの実際にはそんなこと思えるような状況でなかったため思い出しながら何となく語っただけだ。それでも、超有名人と出会ったことに変わりはなくスラスラと口から言葉が出てきた。


「俺も話したんだからそっちも昨日の選抜戦どんな感じだったか教えてくれよ」


 俺がそう言うと三人が覚えていることを都度話してくれた。一回戦目は全然本気を出している雰囲気はなかったが、二回戦目から徐々に力を見せてきて三回戦目までなると、数分間に渡りアイテムの力を発揮し続けたり、ほぼノンストップで魔法を撃ち続けたりとそれは凄い迫力だったそうだ。俺たち一年生がどれほど初心者なのか思い知らされる結果なのは言うまでもない。実戦場は俺たち一年の部の時より人が大勢押し寄せており人が溢れかえりそうなほどいたそうだ。今日は三年の部だからより一層多くなると予想されている。通りでいつもより早く学校に向かっているわけだ。でも、ホームルームとかで意味ないんじゃないかと思い三人に聞いた。


「早く行って意味あるのか?」


 すると、透が答えてくれた。


「席取りをするんだよ。お花見だって朝早くから場所取りしてる人いるでしょ? あれと同じで先に座っとくんだよ。ホームルームの一回欠席するだけで成績に影響することなんて無いし、三年の先輩たちの技術見て盗む方がよっぽど成績に影響するよ」


「確かにな」


 透の説明もありいつもより早いのにも納得できた。学校に着くと、もうかなりの人数が実戦場にいた。電車通学の人たちは起きる時間などで厳しいところもあるだろうから自転車通学と徒歩通学の人だろう。例に漏れず俺たちもそのうちの一人だから何も言えない。家が近くて良かったと思った。俺たちはどの席が一番見やすいか、より鮮明に見えるかなど話し合い席を決めた。俺たちは選抜戦が始まるまで暇なためゆっくり話しながら待っていると、実戦場にスーツを着た人が数人やってきた。その物々しい雰囲気にそちらを見ていると、そこに現れたのはユースさんだった。ユースさんなら納得だとその場に居た者たちが納得していると、ユースさんが俺たちの方に近づいてきた。何かの偶然だろうと思いたかったが、ユースさんは俺としっかり目線を合わせているためこっちに来るのは確定しているようなものだった。


「おはよう」


「お、おはよう」


 ユースさんの挨拶に答えると、ユースさんは何も言わず俺の隣に座った。


「ここの眺め良いわね。先輩たちの戦いぶりがハッキリ見える。あなたたちは向上心の塊のようね」


 ユースさんは俺を含めみんなにそう言った。三人はユースさんが話しかけてくれたことが嬉しいのか目を見開き返事をした。各々ユースさんと話し仲を深めているとホームルームを終えたであろう生徒が実戦場に流れ込んできた。俺たちは先に席を取っておいて良かったと心底思った。


「さぁ光正選抜戦も最終日となりました。本日は三年の部です。三年生は今年が高校生活最後ということでこの日のために膨大な時間を費やしてきたことでしょう。その結果を大いに見せられるよう頑張ってください!」


「今日は企業やギルドのスカウトも来ていますからね精一杯頑張っていただきたいですね」


「大学に進学する生徒も多いでしょうが、この機会を逃す手はありません。大学では高校よりも人数が多くスカウトのお目にかかる機会が減るかも知れませんからね。今日のために三年間努力してきたと言っても過言ではないのではないでしょうか」


「そうですね。有名攻略者となる一歩を踏み出す生徒がいるのか見ものですね」


「そんな話をしていたら準備が出来たようなので光正選抜戦三年の部開幕といきましょう!」


 そこからの実戦場は名前の通り実戦場だった。先輩たちが本気でアイテムや魔法を使うためその影響で天候が変わったり実戦場にヒビが入ったりなど大変だった。俺たちは先輩たちの技を盗むどころの話ではなく、見るので精一杯だった。午後の休憩が挟まる前に鷲田先生があまりにも三年生が本気なため実戦場に保護バリアを張ることになったとアナウンスした。昼ご飯はユースさんを含めた五人で食べた。三年生の実力は凄まじいと感想を言ったり、保護バリアってどんな感じなんだろうと話をしていた。昼ご飯を食べ終え実戦場に戻ってみると、目の前にほとんど完璧な透明だが、少し違和感のある何かがあった。一番前の席だからどうしても保護バリアと思しきそれに目が釘付けとなった。


「これ触っても大丈夫なやつ?」


「やめといた方がいいんじゃない?」


 そんな会話をしながら保護バリアと思しき物を観察していると再び鷲田先生のアナウンスが流れた。


「保護バリアを張りました。最前席で観戦している生徒は気になると思いますが、少し離れればあまり違和感なく対戦を見られると思います。透明度はなるべく上げて気にならないように努めてますので文句等は言わないでください。先生たちが悲しむので。後、保護バリアにもたれ掛かるようなことは控えるように。もし、三年生の対戦時に保護バリアが破れ落ちてしまい怪我を負っても当人の責任としますので。ちなみに、過去何度か保護バリアが破れ寄りかかって見ていた生徒が落ちた事がありますので注意するように」


 俺たちは鷲田先生の注意事項をきちんと守り席に座って観戦した。午後の選抜戦が始まると、金田先輩の対戦が始まった。三年生はシードが実施されており数人がシード枠にいる。金田先輩もそのうちの一人で午後まで対戦がなかったのだ。


「「金田先輩頑張れー!」」


 俺と勝は同じ部活なので金田先輩を精一杯応援した。金田先輩は相手の先輩をものの数秒でノックアウトさせた。あまりにも早いスピードに俺と勝は驚愕した。いつも部活で見ている先輩とは違いすぎたからだ。本気の金田先輩がこんなに強いとは思っていなかった。でも、シードにいるのだから強いのは当たり前だ。


「強くね……?」


「強過ぎるな……」


 俺たちは金田先輩の強さに少し引いていた。でも、あそこまで強くなれるのだと思うと興奮してきた。そこから俺たちは金田先輩が優勝できるように声が枯れるまで応援した。金田先輩のトップ10入りが確定した。後は優勝あるのみだと残りの力を振り絞って応援した。準決勝で少し危ない場面もあったが、魔法使い相手に快勝を収め決勝戦へと臨んだ。


「最終決戦は金田先輩と森田先輩、因縁の対決です。昨年の選抜戦では金田先輩が負け惜しくも二位になり、一位は森田先輩となりました。昨年の敗北をバネに金田先輩が勝つのか、森田先輩が今年も一位となるのか見ものです!」


 鷲田先生の合図で三年の部最終決戦が始まった。金田先輩が刀を抜き森田先輩に詰め寄ると、森田先輩も剣を抜き応戦した。そこから目にも止まらぬスピードで二人は打ち合った。見えるのは互いのアイテムの効果だけだ。金田先輩の爆斬刀・真の効果により森田先輩は爆発を避けながら戦わなくてはいけない。だが、さすが昨年優勝者の森田先輩だ。金田先輩のアイテムの効果を全て見切っており紙一重のところで回避している。金田先輩はアイテムの都合上なるべく鍔迫り合いになるのを避けているのが動きからなんとなく分かる。爆斬刀・真は斬った所を爆発させるというものであるため鍔迫り合いだと効果を出せないのだ。鍔迫り合いになると金田先輩は苦い顔をした。


「「金田先輩頑張れー!」」


 俺と勝は全力で応援した。金田先輩は何とか鍔迫り合いを制した。森田先輩は押されているように見えるが表情は至って冷静だった。金田先輩は少し苦しそうでこのままでは金田先輩が負けてしまう。そう思った刹那、森田先輩の剣から陽炎のような物が見え始めた。金田先輩は悔しそうに少し後退りをした。


「森田先輩が去年金田先輩を打ち負かした炎熱灼剣(えんねつしゃっけん)・炎が温まってきたようです。金田先輩に打つ手はあるのでしょうか」


 金田先輩は熱さに耐えながら刀を振り続けた。でも、熱さからとてもしんどそうにしていた。森田先輩はこのまま金田先輩をダウンさせるつもりのようで反撃はせず防御に徹していた。しばらく時間が過ぎると観客席まで暑くなってきた。炎熱灼剣が熱の発生源となっているのだろう。観客席でここまでの暑さなのだから、金田先輩はどんな高温に耐えているんだと想像すると恐ろしかった。金田先輩の動きが止まりついに膝をついてしまった。でも、鷲田先生は対戦を止めなかった。森田先輩がそれを確認すると金田先輩に剣を振り翳そうとした刹那、金田先輩が最後の力を振り絞り森田先輩に一太刀を浴びせた。そして、爆斬刀・真の効果で後から爆発し金田先輩は森田先輩に勝利を収めた。


「勝者は金田先輩だー! 森田先輩が油断したところに会心の一撃! 昨年の敗北を胸に金田先輩が勝利を掴んだ!」


 実戦場は割れんばかりの声援に包まれた。金田先輩は本当に体力を削られているのか俺と勝に作り笑顔を見せ、先生たちに治癒魔法を使ってもらっていた。その間金田先輩はピクりとも動かなかった。おそらく全身火傷状態で指一本動かすのも辛い状態だったのだろう。先生たちの治癒魔法で怪我を治してもらい今度は本当の笑顔を俺たちに見せてくれた。あまりにもカッコイイ金田先輩に俺たちは言葉が出なかった。その時鷲田先生が事務報告をした。


「トップ10入りした各学年の生徒は明日アイテムを受け取りに来るように。今日はこれで解散。部活も休みだ。やりたいやつは勝手にやるように。以上」


 俺たちは金田先輩に色々話を聞きに行きたかったが、さすがに戦った疲労もあるだろうから次の部活の日に聞くことにした。帰っている最中も金田先輩と森田先輩の戦いを思い出し興奮冷めやらぬ感じだった。武帝に今日の事を話したかったが、色々できるようになったらまた稽古してやるという言葉を思い出し、父さんと母さんに聞いてもらうことにした。

ゆっくりお待ちください

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