203話 後片付け
文化祭が終わった翌日俺たちは文化祭の後片付けをするべく学校に向かった。自分たちで作った物の後片付けをするのは至極当たり前なのだが、思い出を片付けてしまうような感じがしてさすがに気が引けた。でも、やらなくちゃいけないんだよなと思いながら学校に向かっていると透が聞いてきた。
「やっぱり健ちゃんもさすがに後片付けするのは気が引ける?」
「まぁさすがにな。せっかく作ったっていうのもあるけど、最初で最後の文化祭の思い出を自分たちの手で片付けるっていうのがなぁ……」
「そうだよねぇ寂しくもなるしもう少しはこのままで居させて欲しいよねぇ」
そんな話をしていると学校に着き教室に向かった。この教室も今日で見納めだからしっかり目に焼き付けて写真も撮っておいた。改めてこの一週間を振り返ると大変ではあったが、とても充実した一週間で最高だったのは言うまでもない。本当に今日で終わりなんだと思うと寂しくて悲しくて切なかった。そんなことを思っていると後ろからユースが話しかけてきた。
「何そんなに落ち込んでるのよ。シャキッと背筋を伸ばしなさい。生徒会副会長がそんなんじゃ生徒たちにも影響しちゃうでしょ」
「でもー、やっぱり寂しいじゃん……」
「寂しいのはみんなそうよ。それに、私たち攻略校生は攻略者になるのが本分なんだからこのぐらいでメソメソしてちゃダメでしょ。て言うかいつもの健斗はもっと頼り甲斐あるのにどうしたのよ」
「スイッチが入ってない日常と常にスイッチが入ってるダンジョン内とは全くの別物だって考えてくれた方がいいよ。今はスイッチが入ってないから等身大の高校生なの」
俺が本音を伝えるとユースも少し思い当たる節があるのか神妙な面持ちで言った。
「そうね。確かに私たちはまだ高校生だし、今はダンジョンにいるわけでもない。ありのままの高校生でいるのが当たり前。少し言い過ぎたわ。でもね、生徒会であることは紛れもない事実だから学校のみんなを導く存在でないといけないの。だから、ちゃんと切り替えてね」
ユースに慈愛の心は無いのかと思ったが、正論しか言っていないので反論も出来ず不満に思うことしか出来なかった。そんなことをしていると塩田先生が教室にやって来て朝のホームルームを始めた。
「今日は自分たちが作った物、教室の後片付けが終われば下校していいことになってる。クラスによれば午前中に終わるクラスもあるだろうけど、午後までかかるクラスもいるだろうからこの後予定のないやつと体力的にまだ余裕のあるやつは他クラスの後片付けも手伝ってあげて欲しい。でもこれは強制じゃないから帰りたければ帰ってもらって構わない。先生としては最初で最後の文化祭だから後片付けもみんなで協力してやって欲しいなと思ってる。それじゃあまずは自分たちのクラスから後片付け始めようか」
そんなわけで気が乗らないながらも後片付けが始まってしまった。勿体無い寂しい悲しい名残惜しいそんな気持ちで胸がいっぱいだったが、手はゆっくりと動かし続け後片付けをしていると勝が言った。
「もっと長くすれば良かったな」
「そうだなぁ……一週間と言わず二週間文化祭に時間を充てられればな」
「そんなことしたら攻略授業にもギルド・企業の採用試験にも影響するって先生言ってたでしょ」
ユースに正論を突きつけられた俺たちは黙って現実を受け入れるしかなかった。攻略授業に影響が出るのは何となく分かるが、採用試験にも影響が出るのは納得出来ずユースに聞くことにした。
「なぁ採用試験にも影響出るってどういうことなんだ? 採用試験って攻略試験受けた後だろ? 別にそこまで影響しなくないか?」
「余裕を持たせるためよ。いつものスパンで攻略授業をやって冬休みが来て、冬休みが終わって少ししたら攻略試験が来て、そこで合格した生徒だけが攻略者としてギルドや企業に雇ってもらうために採用試験を受けることになるの。無所属の攻略者になる人もいるでしょうし、私たちみたいに両親と一緒に攻略者になる人もいると思うけど、普通は採用試験を受けて攻略者になるから二週間も文化祭に使ってられないの。もう私たちが高校生でいられる時間もそう長くないの。さ、喋ってばかりじゃなく手を動かしなさい」
「はーい」
そう言われてみると本当にもう残り僅かな時間しか高校生でいられないのだなと思うと余計に後片付けをする手がゆっくりになった。この時間を一分一秒でも長く続いていて欲しいという僅かな抵抗だった。でも、そんな抵抗も虚しく俺たちのクラスはどんどんと文化祭前のいつもの教室に戻っていった。机と椅子も戻していつもの教室に戻るとついに文化祭が終わってしまったのだと実感した。すると、塩田先生が指示を出した。
「それじゃあうちのクラスの後片付けはもう終わったからみんな帰ってもいいんだけど、ちょっとでも文化祭の残り香を楽しみたいってやつは他クラスの後片付けを手伝いに行ってこい。邪魔するようなことだけはしないようにな。ユースたちは生徒会としてちゃんと後片付けしてるか見に行ってくれ」
ということで俺たちは生徒会として他クラスがきちんと後片付けをしているのかを見に行くことになった。三年のフロアから見て周り二年一年と見に行ったが、どのクラスもほとんど後片付けは終わっていた。競技場の後片付けはどうなっているんだろうと見に行ったが前日に全て終わらせており無駄足となった。それならサーカスショーのクラスの後片付けはどうかとついでに見に行った。ここもほとんど片付いており手伝いは必要ではなさそうだった。俺たちは生徒会として学校を見回りながら全クラスが後片付けを終えるまで待つことにした。しばらくの間文化祭が終わってしまうことの寂しさについて話していると、どのクラスも後片付けが終わったのか下校する生徒が散見されるようになった。俺たちはこれでもう終わりかと教室に戻った。教室に戻り帰り支度をして教室を後にした。本当に楽しく最高な一週間だったと思いながら語りながら俺たちは帰路についた。
家に帰ってからはと言うと、文化祭が終わってしまった寂しさを紛らわすためにシロと遊んだりファウトルと武帝に稽古をつけてもらったり、じいちゃんと魔法で遊んだり水戸さんに文化祭が終わって悲しいという話に付き合ってもらったりした。そのおかげが幾分か寂しさは紛れた。でも、振替休日の二日間は特に何も出来ずにただぼーっと過ごすことになるだろうなと確信していた。
次回もお楽しみに




