194話 冥霊剣
手練れのダンジョンから帰って来た翌日デュラハンのの冥霊剣を忘れないうちに性能の確認をすることにした。と言ってもモンスターを倒しに行ったりするわけではなく、忘れられた記憶の断片の中でどんなものか試すことにした。久しぶりに武帝にも会えるしちょうどいいと思い武帝の所に向かった。
「久しぶり武帝」
「久しぶりだな。それで今回は何用だ?」
「今日はデュラハンの冥霊剣を試したくて来たんだ。エクシィミート」
冥霊剣を取り出した俺はその剣の禍々しさに驚いた。剣から黒いモヤと言うか霧のような物が出ており、剣を手にした右手は何だか分からないが強張っており疑問に思った。そんな俺を見て武帝が言った。
「よくそんな剣を手にして平気でいられるな」
「どういうことですか?」
俺が今右手から感じているよく分からない何かのヒントになるかもと思い聞いた。
「その剣から出ている黒いモヤのような物はその剣によって殺された者たちの怨念や恨みが具現化したものだ。右手も変に強張っているのは体が勝手に反応しているからだろう」
武帝の話にそうなんだと納得していると、冥霊剣から出ている黒いモヤが人と同じぐらいの大きさになった。その黒いモヤは俺と武帝の間に立つように一直線になったかと思っていると、黒いモヤからデュラハンが現れた。
「「お!」」
急に現れたデュラハンに二人して驚いていると青白い目をしたデュラハンが俺の両肩を掴み言った。
「何故忘れていた……あんなにも熱い戦いと約束をしてどうして忘れていた! 貴様なら我を何な退屈なダンジョンから解き放ってくれると信じていたのに! 何故我をこんな何も無い虚無の空間へと放り込み忘れていた! 我がどれほど貴様と共闘することを楽しみにしていたか分からぬだろう……」
「ごめんデュラハン……忘れたくて忘れてたわけじゃないんだ。ただ色々忙しくて次から次へと色んなことがあったから忘れちゃってたんだ。本当にごめん」
俺はとにかくデュラハンに許してもらえるように謝った。俺が頭を下げて少しするとデュラハンが口を開いた。
「ここから貴様がどれだけ忙しかったかは見ていた。龍王にカイルムに連れて行かれて、修学旅行とやらに行って、様々なダンジョンに行っていたのを見ていた。正直羨ましかった……我も覚えててもらえていたらと思うと怒りでどうにかなりそうだった。だが、さすがに龍王のインパクトには勝てないし、修学旅行とやらは健斗にとって重要な出来事なのは理解出来た。悪魔のダンジョンや困難のダンジョンでは健斗も大変だったのは知っている。だから、逆に思い出してくれてありがとうと言いたい。まだ完全に怒りが収まったわけではないが、それでも我を思い出してくれて嬉しいのだ。これから先一緒に戦えると思うと」
デュラハンの話を聞いているといつの間にか冥霊剣から出ていた黒いモヤは出なくなっていた。右手も強張っていたのが和らいでいたため、あの黒いモヤはデュラハンがそれほど怒っていたのを表していたのだと思うと申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになった。その時武帝が言った。
「とりあえず思ってることは言えたな。それじゃあさっさと俺様と戦え。暇してたし二人の連携を鍛え上げてやろう」
武帝の言葉に俺は冥霊剣をデュラハンに渡し豪嶽砕を取り出し擦り合わせた。その刹那俺とデュラハンは全力で武帝に立ち向かった。豪嶽砕の二刀流とデュラハンの剣捌きを受けた武帝は致命傷になる攻撃は防ぐか回避して軽傷で済む攻撃は受け治癒魔法で治療しながら戦い続けた。その人間離れした戦い方にデュラハンは少し驚いていたが武帝の反撃を受けたことで、これが武帝の戦い方なのだと理解して全力で戦った。もちろん俺も全力で戦っていたが、これは連携を鍛えるという目的の稽古であるため、武帝に傷を負わせるのは最小限にしてデュラハンが攻撃した後隙に攻撃を合わせて互いをカバーし合うことに重点を置いた。しばらく戦っているとデュラハンの動きが悪くなって来たのに合わせて武帝も動きを遅くした。アルカディアリベルの中では体力は減らないのにと不思議に思ったが、何か理由があるのだろう。そんなことを考えていると武帝が言った。
「一旦休憩だ。二人とも互いの行動を噛み合わせるのが初めてとは思えないほど上手い。休憩したら次は前衛と後衛に分かれての稽古だ。色々話しておけ」
「はい」
武帝の指示に従いデュラハンと次はどう戦おうかと話そうとした時デュラハンが言った。
「さすがに二人とも強いな。これでは我が置いて行かれるだけだ」
「デュラハンは別に強い方だと思うよ。それに、片腕で頭持ってるんだし仕方なくない?」
デュラハンというモンスターの性質上どうしても片腕は頭で使えなくなってしまうため必然と行動が制限されるのだ。これはどうしようも出来ないアイデンティティのようなものだと思っていたその時デュラハンが呟いた。
「インテルヴォス・アダイレッテ」
何を言ってるんだと思っているとデュラハンは頭を首の上に持って行った。
「そんなことしたらデュラハンとしてのアイデンティティが……」
思っていたことが口から出てしまった。まずいと思い口を塞ぐとデュラハンが言った。
「我のデュラハンとしてのアイデンティティなんて、貴様に倒された時から無くなっておる。我はただ強くなるために最善の選択をしたまで」
それじゃあデュラハンと呼ぶのはやめて別の名前を付けてあげたほうがいいのかなと思っていると武帝が言った。
「お前はデュラハンとして健斗の隣に立つのではなく、健斗を支える一人の戦友として隣に立つのだな」
「はい」
「ならお前の名はファウトルだな。俺様たちが健斗の隣で一緒に戦うことが出来ない分お前が隣で健斗を支えるのだ。分かったな?」
「この命を賭しても」
「これからよろしくなファウトル」
「それじゃあ次は前衛と後衛に分かれての稽古だ。ファウトルは俺様を攻撃するのと同時に健斗を守るという役割もこなさなくてはならない。健斗ならその必要はほとんど無いが、これもお前の役目だからな」
「はい!」
そこから俺たちは武帝相手に稽古を何時間も何日も続けた。現実ではどのぐらい時間が経ったのかなと思っていた時、シロの声がした。
「健斗、さすがにそいつを構いすぎじゃないか? 白狼とは言え嫉妬はするんだぞ」
「今行きますよー。それじゃあ俺はシロの所行ってくるんでファウトルは武帝に稽古つけてもらっといて。コンベルタ」
シロの所に行くと、シロは俺を見つけた瞬間走り出し俺に飛びついて来た。
「毎月遊びには来てるのにそんなに嫉妬することある?」
俺がそう言うとシロは俺に体重を預けながら言った。
「あんなに楽しそうにしてたら羨ましく思うのは普通でしょ!」
やっぱりシロはかわいいなと思い一緒に寝転がったり遊んだりした。一緒に遠吠えもやってみたりと楽しい時間を過ごした。シロは満足してくれたようでぐっすり眠ってしまった。ファウトルは武帝に任せてるしじいちゃんにでも会いに行こうかなと思ったが、逆に会いに行かないとどんな反応になるんだろうとイタズラ心が働きあえて会いに行かないことにした。
次回もお楽しみに




