188話 手練れのダンジョン③
崩落事故の復興作業から解放された俺たちはベッドで目を覚ました。筋肉痛などにはなっていないが、疲労感はまだ少し残っておりだるさがあった。とりあえず今はお腹が空いているため朝ご飯を食べることにした。でも一人で食べるのは寂しいため勝と透を起こすことにした。二人とも最初はすっと起きてくれず苦労したが、今が攻略授業四日目の朝十時だと伝えるともうそんな時間かと起きてくれた。朝ご飯を食べている間崩落現場を見つけるのと復興作業で三日も経ったことや崩落現場にいた攻略者が意図的に崩落を起こしたのかなどを話しているとユースと春奈も起きて来て一緒に朝ご飯を食べた。崩落現場を探している時に一般の攻略者に聞いたイキってる奴らがどうも引っかかっており、崩落現場にいた攻略者のことが気になっていると剛田が俺たちの元にやって来た。どうしたのかと思っていると剛田が言った。
「昨日の夜塩田先生に聞いたんだけどよ、あの崩落事故攻略者が死にたくないからって意図的に起こしたのものだったんだとよ。自分のケツぐらい自分で拭けよなって。まぁそれだけだ。またな」
剛田の情報に俺たちの間に一瞬の静寂が訪れたが、すぐに意図的に崩落を起こした攻略者の話に切り替わった。どんなモンスターと戦っていたら崩落を起こすかしかなくなるのかやもっと狭い範囲だけの崩落に出来なかったのかなどの愚痴の話が多かったが、それは俺たちが復興作業をしていたから言えることで当事者になれば変わると思ったが、俺たちならそんな状況になる方が珍しいし、なったとしてもヤンウェイで逃げられるためやはり愚痴が多くなってしまった。しばらくそんな話をしていると隣に久しぶりに見る顔が現れた。
「ちわーッス小出さんお隣失礼します」
「「「しまーす」」」
隣にやって来たのは真島たちだった。逆さのダンジョンで共闘してから時々顔を合わせるようになった。真島たちは今でも変わらず一昔前のヤンキーやギャルのような見た目をしており威圧感というかインパクトが凄いのだが、話してみると案外普通で楽しいため最初に抱いていた苦手な感じはいつの間にか無くなっていた。俺たちはしばらく雑談をして復興作業で溜まった鬱憤を晴らした。真島たちと話していると前田や宮村なども話の輪に加わり楽しく雑談を続けた。時間も忘れて話し込んでいると先生たちも前田たちと同じように話の輪に入って来たのでみんなで楽しく話した。さすがにもうそろそろ攻略に戻れよと先生に言われたので話を切り上げ攻略を再開することにした。真島たちに一緒に攻略しようと言われたが、真島たちの実力を伸ばすのに俺たちがいたら抑制してしまうと断った。
攻略を再開した俺たちはまずどの程度進むのか決めることにした。攻略授業は残すところ三日となりそこまでまで時間に余裕があるわけではない。最悪の場合ヤンウェイで帰ること自体は出来るが、それはあくまで最終手段でしかない。なるべくヤンウェイを使わないでいい攻略にするには具体的な目安が必要なのだ。だが、一日でどれぐらい進めるのかなどは分からない。したがって、時間を逐一確認し戻る時間も考慮した攻略にする必要があると結論付けた。さぁ攻略しに行くぞとなったものの手練れのダンジョンは全方位に進むことが出来るためどこの道から行くかも決めなくてはならなかった。多数決を取ることにしたが、候補が多すぎるため東西南北で道を一本ずつ決めて多数決を取った。その結果俺たちは南へと進むことになった。
南の道を進み始めてすぐ分かれ道が現れた。真っ直ぐ今の道を進むか下りの道を進むかという二択だったが、先頭を歩いていたユースは迷うことなく下りの道に進んだ。ここでは話し合ったりしないのねと心の中で思っているとユースが言った。
「私がこっちって思った方進むから嫌だったら言って。後、春奈は精霊水晶で精霊生み出して行かなかった方の道探索させたりしてくれるとありがたい。いつもよりペース上げて行くから見落としも増えるだろうし精霊で二重確認もしてもらいたいけど出来る?」
「分かった」
春奈は精霊を二体生み出し一体ずつに指示を出した。一体には別の道の探索を、もう一体には俺たちの後ろで見落としがないかのチェックを指示した。二体の精霊はすぐに行動に移した。ユースはそれを確認すると歩みを進めた。しばらく歩いているとモンスターが全然出てこないことに疑問を持ち始めた。初日の方は結構出てきていたのにおかしなと思っているとユースが歩みを止めた。どうしたのかと前を見てみたが何もなく不思議に思っていると勝が問うた。
「どうしたんだ? 何もないところで止まって」
「全然モンスターが出てこないしモンスターの死骸も無いからこの道は少し前に誰かが通ったのかなって」
「確かに全然いないね。さっきの道戻る?」
透が聞くとユースは少し考えてから答えた。
「そうしましょうか。このまま進んでも多分意味ないでしょうし」
俺たちが来た道を戻ろうとしたその時来た道が無くなっていることに気がついた。
「はぁ!? 来た道が無くなるってどういうことだよ!」
勝の言葉に俺も動揺しているとユースが声を張り上げた。
「みんな落ち着いて!」
俺たちはユースの言葉を聞き黙った。ユースは俺たちが表面上だけでも落ち着いたのを確認すると話し始めた。
「おそらく幻覚を見せてくるモンスターデチペルよ。体から幻覚作用のある匂いを放出してるからその匂いを嗅いでしまったのだと思うわ。モンスターがいないのも幻覚だと思うわ」
「そんなのどうやって倒すんだ?」
俺がユースに問うとユースは眉間に皺を寄せながら言った。
「幻覚を掻い潜ってデチペル本体を倒すしかないの。幻覚作用なんて治癒魔法でもどうともならないから元凶を叩く他ないの」
どうすればデチペルを倒せるんだと思っていたその時春奈が言った。
「私の万感リングなら第六感も向上させられるからいけるかも」
その言葉に俺たちは歓喜した。対処のしようがないと思っていたところに一筋の光が差し込んできたのだ。俺たちはその希望の光を最大限有効活用するために作戦を立てた。ユースの話によるとデチペルは体内に毒液を持つタコやイカのような触手を持つモンスターらしく、壁を自由に移動出来るためどこにいるのか見つけるのが困難らしい。なら火魔法で道全体を焼き尽くすことを提案したが、デチペルは魔法への耐性を持っており直撃でないと有効打は与えられないそうだ。それならいっそのこと逃げる手もあったが、デチペルの幻覚作用を透の勝者の帳簿で使えるようになるのは捨てがたいとなり結局地道に春奈の第六感に頼るしかなかった。俺たちがデチペルを探してるのがバレないようにヌラ・レフラリフレクティブを使って探し始めること十分が過ぎた。その時春奈が一点を見つめた。
「そこにいるんだな?」
俺が小声で聞くと春奈は頷いた。俺たちは一歩も動かず春奈が攻撃出来るようにヌラ・レフラリフレクティブを解除した。春奈は剣箔を抜き壁に突き刺すとギィという変な声が聞こえてきた。俺たちはまだ幻覚を見ていてデチペルの姿が見えていなかったが、春奈は確実に殺した感触があったのかふぅと息を吐いた。俺たちは早く幻覚作用が治るように風魔法でデチペルが発していた匂いを風魔法で吹き飛ばした。
次回もお楽しみに




