187話 救助活動
崩落現場を見つけたユースはスビティスシィを本来の使い方ではなく場所を知らせるために使い先生たちと同級生を集めた。そして、崩落現場に着いた先生たちの指示によって俺たち生徒は崩落現場に巻き込まれた攻略者がいないかどうかの救助活動兼ダンジョンを元の状態に戻す復興作業を行っている。アークシィリュームで身体能力を向上させて復興作業をしやすくしたりアイテムを使って岩をどかしたりしているが、一向に終わりが見えてこない状況だった。塩田先生の話によれば俺たちの方と封鎖されているエリアの二つがあるため終わりは明確なのだが、道の先は岩岩岩で本当にこの復興作業に意味があるのか疑問に思うほどだった。しばらくすると先生たちに何で俺たちがこんなことやらなくちゃいけないんだと愚痴を漏らす生徒も増えて来た。すると、塩田先生が言った。
「みんな攻略者はモンスターを倒してダンジョンを攻略してそれだけで終わりだと思ってないか? もちろんそれも合ってるが、攻略者は一般人の方がモンスターに怯えることなく安心して暮らせるようにモンスターの数を減らすという役割もある。攻略者を助けることも長い目で見ればモンスターを減らすことに繋がるからこういう救助活動も行うんだ」
塩田先生の話が終わると生徒の一人が言った。
「それじゃあダンジョン全部崩落させてモンスターが出てこないようにしたらいいんじゃないんですか?」
確かにダンジョンを埋めてしまえばモンスターも出てくることはほとんどないだろうし、攻略者が命を落とす数も大幅に減少する。いいことしかないと思った。だが、現実はそううまくいかないらしい。
「先人たちは何度もダンジョンを封鎖したり埋め立てたりしようとしたらしいんだが、その度にモンスターが大量に出現しダンジョン自体が崩壊しモンスターが解き放たれるということが幾度となく起こったらしいんだ。先人たちは神の怒りとしてダンジョンを埋めたりするようなことを禁忌とし、モンスターの数を物理的に減らすことで人間への被害を最小限に抑えて来たそうだ。近代になってその教えが嘘じゃないかって思った集団がダンジョンを埋め立てたことがあるんだが、結果として一般人の死者数百人にも上る悲惨な事故が起こったんだ。その事件からダンジョン自体の研究を数多の機関がやってきたが数多至るまでどうやってモンスターが発生しているのかもダンジョンがどうやって生まれかのかも分かってないんだ。触らぬ神に祟りなしとは少し違うが同じような感じだ。だから、今こうしてダンジョンの復興作業を行ってるんだ。この崩落事故を放置した結果、モンスターの大量発生なんか起こったら嫌だからな」
そんな理由があったんだと思っていると同級生たちもそんな事情があったとは知らなかったようで何も言えないでいた。そんな時塩田先生が気を遣ってみんなに作業に戻るように声掛けをした。その声掛けで俺たちは再び復興作業に戻った。透の空掴の遊び人などで大胆かつ丁寧に作業を続けていた俺たちはさすがに疲れたと休憩をすることにした。それを見た塩田先生がパーティ毎に休憩をとるように指示を出すとしばらくの間復興作業を止めて休憩の時間となった。普段の攻略では魔法かアイテムを使ってモンスターと戦うため長時間体を動かし続けるということはあまりないため、ずっと体を動かし続け絶えず魔法も使い続ける復興作業にかなり体力を持っていかれたのだ。その持っていかれた体力を回復させるために寝ようとしていたその時ユースが手招きをしてきた。俺は何だと思いユースの元に行くとユースが小声で言った。
「他人から見えなくなる魔法使って」
「何で?」
「いいから」
俺は何の理由があってヌラ・レフラリフレクティブを使わせようとしているのか分からなかったが、とりあえず俺とユースだけに使った。
「使ったよ」
「おいで」
ユースは両手を広げてそう言った。まさか抱きついて寝かせるためにヌラ・レフラリフレクティブを使わせたのかと思ったが、俺にとって何もマイナスになることはなくユースの胸に飛び込んだ。
「上向いて」
ユースのお腹あたりに顔を埋めていた俺は上を向くとユースが優しく頭を撫でながら子守唄を唄ってくれた。ユースの体温と子守唄、頭を撫でてくれる優しさに俺はものの数秒で眠りに落ちた。
「健斗起きて」
ユースの声に目を覚ました俺は大きなあくびをした。そのあとすぐして塩田先生の声が響いた。
「休憩終了! 作業に戻るぞー!」
もう再開かと伸びをして体を起こし復興作業を再開した。アークシィリュームで身体能力を向上させて岩を運び出したり、運んで来た岩を爆発魔法で小さい石にしたりと地道に復興作業を続けていると一人の生徒が叫んだ。俺たちは何があったのかと近くに駆け寄ると、そこには岩に潰され生き物としての形が微塵も残っていないモンスターの死骸があった。俺たちは人じゃなくて良かったと安堵していると塩田先生が言った。
「モンスターも巻き込まれてるってことは戦ってる最中に崩落事故が起きたのか? それとも、モンスターから逃れるために意図的に……」
死にたくないからと意図的にダンジョンを崩落させてモンスターを下敷きにしたのであれば命が惜しくてやったことなため責めることは出来ないし、本当にたまたま崩落事故が起きたのであれば責める理由もないため生存者がいれば真実を話して欲しいなと思った。誰であっても死にかけたら咄嗟に命を守る行動に出るだろうから崩落事故を起こしても仕方がない。ただ、悪びれる様子もなく死にかけたんだからこのぐらい許してくれよなどというスタンスであれば一発ぐらい殴っても構わないだろう。そんなことを考えながら復興作業を続け休憩前から合わせて二時間が経過した。そろそろ何か進展があるのではないかと考えていたその時、生徒の一人が塩田先生に伝えるために大声で言った。
「せんせー! なんかデッカい穴がありまーす!」
塩田先生がその生徒のところに向かうのと同時に俺たちもその穴を見に行くと、直径二メートルほどの大きな穴が空いていた。どういうことだと思っているとユースが言った。
「ここで身動きが取れなくなった攻略者の中に地面を掘ったりするアイテムを持ってる人がいて別の場所に移動したって感じかな? 一回追加の崩落が起こったからその時にここも岩で全部埋まっちゃっただけで、元はここにある程度の空間があったんじゃないですか?」
「確かにその可能性もあるな。先生たちでこの穴の中調べて来るからみんなは引き続き復興作業を続けててくれ。尾形先生は生徒たちのこと頼みます」
というわけで塩田先生は男性教師二人とその穴の中を調べに行った。俺たちはまた復興作業かと落ち込んでいると尾形先生が言った。
「みんなずっと同じ作業続きで退屈かも知れないけど、みんなが頑張ったおかげで次の人や協会の人たちの仕事が減るんだから頑張って。それに、攻略者になってもこういうことは変わらずやらなくちゃいけないから頑張ろう」
尾形先生の言葉を聞き俺たちはやるかと作業を再開した。しばらく作業を続けているとさっきの穴から塩田先生たちが戻って来て言った。
「崩落事故に巻き込まれた攻略者たちは無事だったようで、今協会の人たちが事情を聞いているそうです。それと、残りの復興作業は崩落の危険性などから協会の人たちだけで行うそうです。ということでここで復興作業は終わりとします。みんな疲れてるでしょうから休憩施設へと戻りましょう」
俺たちはようやく終わったと休憩施設へと戻ることにした。みんな疲労感マックスのようでトボトボと歩いていた。俺たちもそれは同じで喋る気力もなくため息をつきながら歩いた。休憩施設に戻るとご飯を食べるよりも疲労の方が耐えられずすぐにベッドに向かい眠りについた。
次回もお楽しみに




