186話 手練れのダンジョン②
崩落現場を探しながら攻略を続けることにした俺たちは一度休憩施設に戻りその場にいた人たちにさっきの音がどっちから聞こえて来たか聞き込みを行った。一般の攻略者は口を揃えて東方向から聞こえて来たと言っていたが、同級生たちに聞くと同じグループ内でも違う方向から聞こえて来たと言ってる人がいて聞き込みでは方向は特定出来ないなと思った。その時ユースが言った。
「光正のみんなはバラバラな方向から聞こえてるのになんで攻略者だけ一人として違う方向から聞こえてないの?」
「確かに……」
俺たちはどういうことなのか考える前に一般の攻略者に話を聞くことにした。
「どうして東方向から音が聞こえて来たって分かったんですか?」
俺が攻略者に問うと男性が答えてくれた。
「俺たちと同じタイミングで来た他の攻略者がヤンチャな奴でな、ヤンキーって言うかイキリって感じで何かやらかしそうな感じがしてたんだよ。そいつらが向かった先が東方向で揺れもそっちから来たからほぼ確実に崩落現場は東方向だって予測出来るんだ。こういう洞窟タイプのダンジョンじゃ音より振動の方が頼りになるから覚えておきな」
「教えていただきありがとうございます」
「いいって。有名人の小出健斗に一つ助言出来たこと自体俺たちからすれば自慢話になるんだからよ。まぁ頑張りなよ」
「はい。先輩たちも頑張ってください」
俺たちは振動が伝わって来た東方向に向かって進み始めた。その時後ろからさっきの男性の声が聞こえて来た。
「あの探究心って言うか知的好奇心が強さの秘訣なんだろうな」
その言葉に俺はついニヤけてしまったが、ここはダンジョンの中なんだと気持ちを切り替えた。東方向に進み始めてから少しすると透が勝者の帳簿を見ながら言った。
「お、帳簿にモンスターの名前記録されてる」
俺たちはその言葉に勝者の帳簿を覗き込んだ。どんな感じで記録されどんなふうに思念体が戦ってくれるのか未知数な部分が多いから気になって仕方がないのだ。だが、帳簿には見たことも無い文字でモンスターの名前と思しき物が書かれていた。現代使われている文字とも神代文字とも全く異なる文字に首を傾げているとシロが言った。
(獣人文字だな)
獣人文字と言われてもピンと来なかった俺はシロにもっと詳しい説明を求めたかったが、近くにみんながいる状態で話すのは変に思われるため口に出せないでいるとシロが続けた。
(現代で獣人なんて見る機会無いだろうからピンと来ないだろうけど、このカクカクとした数字みたいな文字は獣人文字だ。多分だけど獣人語じゃないと思念体も召喚出来ないんじゃないかな?)
それじゃあ思念体が戦うところが見られるようになるのは当分先かと思っていると透が言った。
「ケェロウナ」
透が訳もわからない言葉を発すると、少し前に風魔法で飛びながら倒した亀のようなモンスターが半透明の状態で目の前に現れた。その亀のようなモンスターは三メートルほどの巨大で、目の前に突然現れたものだからかなり驚いた。
「え!? これが思念体!?」
俺が驚きながら透に問うと透は不思議そうな困惑のような表情をしながら答えた。
「多分そうだと思う……なんか出来ちゃった」
その言葉に俺たちはその亀のようなモンスターの思念体をジロジロと観察した。モンスターだった時と同じように襲われたりしないのかなと思っているとユースが透に問うた。
「なんで帳簿に書かれてる意味の分からない文字読めたの?」
「なんか頭の中でふりがなが振られたような気がしてそれをそのまま読んだら合ってたって感じかな」
「アイテム自身が使用者に必要な情報を与えてくれたっていうことね。それじゃあこの思念体を戦わせる方法とか頭の中に浮かんでたりするの?」
「どれがどれか分からないから試してみるね。キィーミス」
透がそう言うと亀のようなモンスターの思念体が動き始めた。俺たちは踏まれたりしないように少し離れて見守った。
「これが動く指示か……それじゃあこっちのはどうかな。プロスタテーボ」
透が指示を出すと思念体は甲羅の中に頭と手足を引っ込めた。自衛の指示だろうなと思っていると透が続けた。
「それじゃあ次は、エピーテシィ」
次の指示を出された思念体は自衛をやめて口から水魔法を撃った。一つ一つ指示する感じがロボットみたいだなと思っていると透が続けた。
「こっちはどうかな。エレフェリア」
思念体は指示を出されたにもかかわらず何の動きも見せないでいると透も不思議そうにしていた。一体何の指示なんだろうと思っていると道の先からオークが数体現れた。その時、思念体が口から水魔法を撃った。俺たちは思念体が勝手に攻撃したと思ったが、さっきの指示がそういう指示だったのかと透を見た。すると、透は納得したように言った。
「エレフェリアって自動攻撃とかそういう感じなんだろうね。オークに勝手に攻撃したのもそのせいだろうし」
透の説明に納得していると透が続けた。
「それじゃあ最後の指示出すよ。アポドシィ」
そう指示を出すと思念体は勝者の帳簿に吸い込まれるように姿を消した。五つの指示しか無いのはちょっと少ないなと思ったが、基本的な指示しか無い方が戦ってる時に考えることが少なくていいのかなと考えているとユースが言った。
「勝者の帳簿の確認も出来たことだし先に進みましょうか」
俺たちは風魔法で飛びながら手練れのダンジョンを進んだ。俺たちのやることは崩落現場を見つけること以外特に決まっておらず、勝者の帳簿もどんなものか確かめられたため早く崩落現場を探しに向かった。しばらく道を進みながら勝者の帳簿に記録出来るモンスターを倒しながら進んでいると、再び崩落が起こったのか岩が崩れ落ちる音と振動が伝わって来た。崩落現場に近づいていることが分かった俺たちは手分けして手掛かりが無いか辺りを探索した。少しすると勝の声が響いて来た。
「こっちにモンスターの死骸がある!」
勝以外の俺たちは一度集まり勝が探しに行った方に向かった。少し道を進むと勝が浮遊しながらモンスターの死骸を指差しておりこの先に崩落現場があると踏んだ俺たちはその道を進んだ。しばらく進みながらモンスターの死骸を辿っていると目の前が大小様々な岩で道が塞がれていた。ここが崩落現場だと一目で分かったが、この先に人がいるのかこの下か上に人がいるのか判断出来ないでいるとユースがスビティスシィを鳴らした。俺たちはすぐに崩落現場を知らせるために鳴らしたんだと理解し何もせずに待っていると、塩田先生や尾形先生、その他多数の同級生たちが俺たちの元までやって来た。すると、ユースがその場に来た塩田先生に事情を説明し始めた。
「ここが件の崩落事故に場所だと思います。私たちもさっき着いたばかりですので詳しいことは分かってないんですけど、道中モンスターの死骸があったことからこの先に攻略者がいるはずです」
「分かった。尾形先生は協会の人に連絡を。手の空いてる生徒たちは更に崩落が起こらないように慎重に岩の撤去を。ここから休憩施設までの道が分かる者は休憩施設にいる先生たちを呼んできてくれ」
「「「はい!」」」
俺たちは塩田先生の指示に従い崩落現場の対処を始めた。しばらく岩の撤去などを行っていると協会から届いたメールに書いてあった一部地帯が封鎖されている文言を思い出した。だが、封鎖されていた感じはせずどういうことなのかと塩田先生に聞くことにした。
「塩田先生、一部地帯が封鎖されてるって話だったと思うんですけど、どこが封鎖されてるんですか?」
「それがだな、この道のかなり先の方まで崩落が続いてるらしくて封鎖されてるのは反対側らしいんだ」
「てことは結構大変な作業になるってことですか?」
「正直言って攻略授業どころじゃないかも知れん状況だ」
その言葉にどれだけ大規模な崩落事故があったのかと恐ろしいとさえ思った。
次回もお楽しみに




