161話 困難のダンジョン①
アリゾナを満喫した俺たちはホテルで目を覚ました。時間を確認してみるとアメリカ時間で朝の八時だった。同室の勝と透を起こし朝食バイキングに向かった。バイキングを食べている途中、今日の大まかな予定を教えてもらっていないことに気がつきユースにメールで聞いた。すると、少ししてユースから返信が届いた。
『十時にここを出発して困難のダンジョンに行くからそれまでゆっくりしてて大丈夫だよ。ダンジョン内での食料も準備し終えてるから体調万全にしておいて』
ユースに予定を把握した旨のメールを送信し俺たちはゆっくりバイキングを楽しんだ。バイキングの料理に舌鼓を打っているとトールさんと拓郎さんが料理を手にやってきた。
「おはようございます」
「「おはよう」」
俺がトールさんと拓郎さんに挨拶をすると勝と透はまだ眠たいのかおはようございますと口にはせず会釈だけした。何で二人はこんなに眠そうなんだと思っているとトールさんと拓郎さんが対面に座りバイキングを食べ始めた。少しすると二人が眠そうなのを見たトールさんが二人に聞いた。
「二人とも時差ボケかい?」
「……はい」
「……そうです」
トールさんの問いかけに答えたことでようやく二人が時差ボケで眠たいんだと理解出来た。そこでふと思った。二人が時差ボケで眠たいのならなぜ俺だけ時差ボケになっていないのかと。二人とはずっと同じように一日過ごしたのに何でだろうと思っていると拓郎さんが言った。
「時差ボケって言うか、普通に寝るの遅かったんじゃないの?」
「寝ようとしたんですけど、全然寝れなくて……」
「そうですよ。僕たちだって寝ようと努力したんですけど、飛行機で寝てたからか目が冴えちゃって」
「まぁ出発は十時だからそれまで寝ておきなさい。ダンジョンに着くまでの道のりもしばらくあるから十分に寝られると思うよ」
「それじゃあ俺たちは寝とくんで時間になった起こしてください。健斗、鍵ちょうだい」
「分かったけど、起こすからちゃんと起きろよ」
「大丈夫」
「任せて」
そう言うと二人は食器を返し部屋に戻った。その足取りはとぼとぼという擬音がぴったりなほど遅く眠たいんだろうなと感じ取れた。俺は二人がちゃんと起きられるか心配だったが、二人とも寝起きは悪いわけではないので信じるしかなかった。そんなことを考えているとトールさんが聞いてきた。
「小出くんは時差ボケ大丈夫なの?」
「はい。全然平気ですね」
俺が何事もなく答えると拓郎さんが続いた。
「海外初めてだったよね? 時差ボケならなくて良かったね」
「良かったです。日本からの飛行機で結構寝たんでそれでこっちの時間に合ったって感じだと思います。特に気にしてなかったんですけどラッキーでした」
「一応出発時間を十時にしておいて良かったよ。ユースは私たちと時々海外に来たことがあるから時差ボケはそこまで心配してなかったけど、小出くんたちは初めてだって聞いたから時間を遅らせてたんだ。ユースの提案でそうしたんだけど、備えあれば憂いなしってやつだね」
そう言うトールさんはホッとしたような表情だった。さすがはユースだなと心の中で尊敬しているとトールさんたちも朝ご飯を食べ終え食器を返した。ついでに俺も一緒に返し十時まで約一時間半ある時間をどう過ごそうかと思っているとトールさんが聞いてきた。
「小出くんはこの辺りでどこか行ってみたい所ってある? もし良かったら時間もあるし行けるけど」
「それならお土産が買える場所に行きたいです。キーホルダーとかそう言う小物系のお土産が欲しくて」
「それじゃあ行こうか。拓郎はどうする?」
「ついでだし一緒に行きますよ」
というわけで三人でお土産が売っている店に行くことになった。ホテルを後にし少し歩いていると昨日行った雑貨屋とはまた別の雑貨屋が目に入った。ここでは小物系や置物などが多くちょうどいい物が置いてあった。そこで、サボテンのキーホルダーやサボテンの置物などを買いホテルに戻った。時間は十時前とちょうどだった。俺は勝と透の二人に電話をかけて起こし部屋に入れてもらった。ダンジョン内での着替えやタオルなど諸々必要な物を用意し持ってきていたカバンに入れた。勝と透はまだ少し眠そうだったが用意を済ませてトールさんたちと合流した。女性陣は勝と透が眠そうにあくびをしているのを見て大丈夫かと心配そうにしていた。ホテル前で待っているとマイケルとジョンがやって来た。
「乗りな!」
マイケルの発言に俺たちはマイクロバスに乗り込んだ。困難のダンジョンに向けて出発するとジョンが話し始めた。
「ケントたちは初めて見るだろうから言っておくが、困難のダンジョンはグランドキャニオンのほぼ真下にある。世界遺産もついでに見られる超豪華なダンジョンだ。グランドキャニオンは知ってるだろ? グランドキャニオンってのは綺麗だが、あの岩に囲まれた光景が延々と続くダンジョンだから三日もすれば飽きてくる。そして、そのうち自分たちがどっちから来たのか分からなくなる。だが、世界中の攻略者が本筋の道の天井にワイヤーを張り巡らせてるからそれを目印にすれば大丈夫だ。他の道も進みたけりゃ各々目印を用意しなくちゃいけないが、大体の道は先駆者がいるから本筋の道まで戻れるから安心しな」
ジョンの話を聞いていると視界の奥の方にグランドキャニオンに近しい景色が見えてきた。岩肌が見え植物がまばらに自生しているそのテレビで見たことがある景色に心躍らせた。しばらく進みグランドキャニオン周辺に着いた。勝と透を起こすと二人は辺りの景色に驚いていた。テレビで見たことがある景色が唐突に目の前に広がっていたら誰でも同じような反応をするだろうなと思っているとマイケルとジョンが困難のダンジョンの入り口まで案内してくれた。普通の人ではこんな場所まで来ないだろうなというぐらい深い渓谷を降りて行くと辺りの岩と同じ岩で作られたであろう扉が現れた。するとマイケルが言った。
「ここが困難のダンジョンだ。俺たちはここまでだから帰ってくる時はまた連絡してくれ。健闘を祈ってる」
「ありがとう」
「頑張れよ未来の攻略者たち!」
そう言うとマイケルとジョンは去ってしまった。ここからは俺たちだけなんだと気持ちを切り替えるとトールさんが扉を開けた。中も同じ岩が続いていて境目が無く、本当にここから先がダンジョンなのかと不思議に思うほどだった。しばらく進んでいると地面が平坦になってきてここから先モンスターが出てくるんじゃないかと思っていると驚きの光景が目の前に広がっていた。なんと、困難のダンジョンは今まで行ったことがある地底型ダンジョンとは比べ物にならないほど広かった。試練のダンジョンも中々の広さだったが、困難のダンジョンは洞窟とは思えないほど天井が高くジョンが言っていたワイヤーは知らなければ見つからないほどだった。俺たちが困難のダンジョンに驚いているとトールさんが言った。
「この広さは見たことないでしょ? これが世界最大級の地底型ダンジョンだよ」
俺たちが驚いているとトールさんたちが風魔法で飛び上がり言った。
「ここから先は途方もないほど長い道のりになるから風魔法で移動するよ。食料は二週間分以上持ってきてるから安心して」
そう言うトールさんとは裏腹にそんな量の食料が入っている荷物は見られず困惑した。すると、メアリーさんが言った。
「食料のことは後で教えてあげるから今は先に行くわよ。こんな浅い所じゃ何の意味も無いからね」
俺たちはその言葉を聞き風魔法で飛びトールさんたちの後ろをついて行った。
次回もお楽しみに




