155話 新たな独自魔法
尾形先生に教えてもらったモンスターを従わせる魔法の訓練を始めた俺は早くも壁にぶつかった。そもそもどうやってマナで相手を従わせるられるのかが分からなかった。ディオレンテカプティオーニスの場合、自分のマナ感知によって相手のマナを操作出来るというものであり、作用しているのはマナだけである。相手の魔法には影響を与えられるが、体には影響を与えられない。どうやればマナで相手の体を自由に操作出来るのか思考を巡らせた。
まず、体に影響を与える魔法で俺が知っているのはアークシィリュームとスペチーフィカだけだ。だが、この二つの魔法は体を動かすこと自体は出来ず、体の動きを補助するような魔法だ。つまりこれだけでは相手を従わせることは出来ない。よって、体に直接影響を与えられる魔法が必要である。必要な魔法は分かったのだが、体に直接影響を与える魔法を俺は知らない。だからと言ってじいちゃんや尾形先生に聞くのは自分の成長にならないし、すぐに退屈になってしまうだろう。思考を巡らせるのはここまでとし実際にやってみることにした。
ここには実験台になってくれるモンスターや人はいないため、まずは自分の体で体に直接影響を与えることが可能なのか調べることにした。俺の考えとしては体に直接影響を与えるためには実際に脳が電気信号を送って体を動かすように、マナを使って電気信号を再現し体を動かすことしか方法は無いと考えた。そのためには治癒魔法で痛みを消すために莫大なマナを使ったのと同様に莫大なマナが必要であろう。だが、莫大なマナを流すだけでは体を動かすことは出来ない。きちんと神経に作用させる必要がある。莫大なマナを用いて神経を自分のマナで侵食するイメージで右腕に莫大なマナを集中させた。そして、マナを通して右腕を前に突き出し神経に侵食させたマナを使って火魔法を撃ってみるとなんと出来てしまった。まさかこんなに簡単に出来るとは思っておらず自分の才能に驚いた。しかし、自分の体だから出来たのかも知れないと思い透に実験台になってもらうことにした。
「透、ちょっと俺の新しい魔法に付き合って」
「え? 何か変なことしたりしないよね?」
「大丈夫。ちゃんと俺の体で先に実験したから」
「……心配だけど、本当に大丈夫なの?」
「うん。体を俺の意思で動かすから力抜いておいて」
「まぁ、分かった」
透は心配そうにしていたが、ちゃんと俺の指示に従ってくれた。透が力を抜いて立っているところに俺は透の右腕だけに莫大なマナを流し神経をマナで侵食させた。そして、右腕を前に突き出し今度は水魔法を撃った。透の体でも成功し俺は歓喜した。
「よっしゃ出来た!」
「「ん?」」
喜ぶ俺とは真逆で透と春奈は不思議そうにしていた。だが、二人の不思議なベクトルは全く異なる。春奈からしてみれば俺が真剣な顔で何かやっていると思ったら透が水魔法を撃っただけなのだが、透からしてみれば何もしていないのに勝手に右腕が前に突き出て水魔法が出現したのだ当然不思議に思うだろう。俺は二人に説明することにした。
「二人とも何やったのか分からないと思うから説明するよ。俺は今、透の右腕をマナによって俺の意思で動かしたんだ。どうやったかは内緒ね」
「え、何サラッとバケモノみたいなことしちゃってるの? 健ちゃんもっと自覚持った方がいいよ。自分が常人とはかけ離れた天才だって」
「そうだよ。なんか普通に出来たみたいな感じで言うから感覚おかしくなってたけど、他人を操るなんて普通出来ないからね。私たち以外には絶対に言っちゃダメだよ。手の内は隠しておかなくちゃだから。それと、健ちゃんはもっと危機感を持って。そのまま攻略者になっちゃったら健ちゃんの魔法悪用されちゃうよ」
「……なんかごめん」
まさか二人からお叱りの言葉が出てくるとは思っておらず、なんだか悲しい気持ちになった。凄いねとか褒めてもらいたかっただけなのになと思っていると二人が言った。
「私たちは健ちゃんの凄さを知ってるから心配してるの。ヴェナトレスとかに捕まったりしたら大変でしょ?」
「そうだよ。健ちゃんを思ってのことなんだ。だから、健ちゃんも気をつけてね」
「……うん」
二人とも俺を思って注意するように言ってくれたんだと思うと、ちゃんと俺のことを認めてくれているんだなと嬉しくなった。そんなことをしていると組み手をしていた勝とユースが俺たちの元にやってきた。
「何してたの? なんか話してたけど」
「俺の独自魔法だよ。まだ全然未完成だけど、他人の体を動かせる魔法だ。凄いだろ?」
「……何その魔法と別次元の魔法」
「もう魔法って言うかアイテムの領域じゃん」
「え、でも尾形先生は昔モンスターを操る魔法見たことあるって言ったけど」
俺がそう言うとみんなそんなわけないでしょという顔をした。みんなの反応に俺は尾形先生に騙されたのではと思った。でも実際、未完成だが体を動かすことには成功している。ということは尾形先生の発言はハッタリなどではなく実際に目にした魔法なのだろう。だが、その魔法は透の蒼紋の杖のようにその杖固有の魔法ではないかと推測しみんなに話すことにした。
「俺の考えだけど透の蒼紋の杖が使える植物の魔法みたいにモンスターを操れる魔法があるんじゃないかな?」
「だとしても、その魔法を再現した時点でバケモノだって言ってるの。だから、私たち以外に話しちゃダメって言ったの。て言うか私何の話してるの?」
「ははは! 確かにな。て言うか何の話したんだ?」
俺と透と春奈は何の話をしてたんだっけと顔を見合わせたが、同じような話しかしていないなと別に気にすることはないなと結論づけた。
「別にそんなに大事な話はしてなかったかな。俺にもっと危機感持てって話ぐらい」
「そう。なら健斗の独自魔法の名前を決めなくちゃね」
「て言ってもどうするかなぁ……」
俺たちはどうしようかと考えているとじいちゃんの声が聞こえてきた。
(オペラティオなんてどうじゃ? 操作するって意味なんじゃが、ピッタリじゃろ?)
確かにピッタリだ。語感もいいし短くて覚えやすい。でも、すぐに言ってしまったらどこから知見を得たのか、参考にしたものは何かと聞かれそうだなと感じた。もちろん適当だと言えばいいのだが、少し怪しいところもあるので今は言わないようにした。すると、透が言った。
「うーん、名前って考えるの難しいね」
「ね。俺はこの魔法の訓練しているからみんなも訓練戻っていいよ」
俺がそう言うとみんな訓練に戻った。名前もじいちゃんに考えてもらったしこれで心置き無く訓練に励める。俺は攻略授業が終わるまでずーっとオペラティオの訓練に励んだ。その結果、右腕だけしか無理だったのが両腕まで出来るようになった。でも、これだけじゃ到底実用化は難しいためもっと訓練が必要だと感じた。それなら家に帰ってじいちゃんの所で訓練をしようと決めた。
次回もお楽しみに




