150話 二つのアイテム
テネブラアデスを倒した俺たちは一階層の休憩施設に戻りしっかりと休憩をとった。目を覚ますと五日目の昼前でありこんなにぐっすり寝てしまうとはとみんなを探した。休憩施設から出て辺りを見渡してもみんなは見つからなかった。昼前だしご飯食べてるのかなと思い食堂に行ってもみんなはいなかった。もしかしたら誰かがスビティスシィを鳴らしたから助けに行ったのかなと思い休憩施設で待っていることにした。シロの所で寝て満足して現実で睡眠をちゃんと取らなかったのが原因でこんなに寝てしまっていたのかなと考えた。そんなことを考えているとクラスの男子たちが休憩施設に戻ってきた。一瞬勝と透かなと思い残念に思った。すると、クラスの男子たち四人のうち一人が俺に向かって言った。
「あれ? 小出じゃん。何してんの?」
「ついさっきまで寝ててみんながどこにいるのか分からないから待ってるんだ」
「そっか。多分そのうち帰ってくるぞ。ちょっと前に誰かがスビティスシィ鳴らしたから」
「やっぱりそうだったんだ。俺、置いて行かれたかと思ったわ……」
「あはは! まぁ寝て起きて仲間いなくなってるとか攻略者になってからじゃ洒落になんねぇからな。でも、あいつらが小出のこと放っておくような奴じゃないって一番分かってんのはお前だろ」
「いいこと言ってくれるじゃん」
「まぁな。もし良かったらなんだけどさ、あいつらが帰ってくるまで俺たちに稽古付けてくれねぇか? もちろん報酬は用意する。新作ゲームでも焼肉でも。さすがにアイテムを渡すことは出来ねぇけど出来る限りの礼はする。だから頼む」
一人が先に頭を下げると他の三人も続いて頭を下げた。ここまで言われちゃ断れないなと思い返事をした。
「分かった。いいよ。報酬は新作ゲームでお願いね」
「よっしゃ! それじゃあ先に欲しいゲーム教えてくれよ。ちゃんと報酬を渡す証拠と稽古付けてもらう確約だ」
俺は今気になっている新作ゲームの名前を伝え、その男子はインターネットでそのゲームを注文してくれた。これで報酬は俺の物となり後は四人に魔法を教えるだけだ。俺たちは早速魔法の稽古を付けるために休憩施設の近くであまり人がいない場所に移動した。
「それじゃあ始めるけど、みんな基本的なことは出来るだろうし、どんな魔法を使いたいかで稽古内容変えるから教えて」
「ド派手なの!」
「高火力!」
「大爆発!」
「ロマン!」
「オッケー。それじゃあみんなまず魔法使う時にどんなふうにマナを集めてる? 基本的に利き手に集めるのがオーソドックスなやり方なんだけど、その集める課程というか集める時に俺が意識してることを教えるね。普通の人は高威力の魔法を使う時ってそれに見合ったマナ量が必要だからいっぱい集めてようとするんだけど、俺は一度集めたマナに上乗せするように何度も集めてる。どういうことかって言うと、指数みたいな感じ。普通にたくさんのマナを集めるのが足し算だとしたら、俺のは掛け算って感じかな。マナ感知とかで向き不向きはあるだろうけど、俺はそうやってるからみんなもやってみて」
俺が指示を出すとみんな指示通りマナを集めようと集中し始めた。目を閉じマナを感じやすいように集めやすいようにすること二分ほど経った。みんなどうなんだろうと思いディオレンテカプティオーニスで確認してみようかととも思ったが、さすがにやめておいた。もう少し待っていると一人が言った。
「なんか微妙に上乗せ出来ないんだよなぁ……」
「なら、左右の手に同じ量のマナを集めてそれを一つにするってのはどう?」
「やってみる」
他の男子たちも同じように両手にマナを集め始めた。みんな肘から先を前に出し直角を保ったままマナを集めていた。だらんとぶら下げていると逆にマナを集められないから直角を保ち両手に意識を向けているのだろう。少しすると一人が両手を握り合わせてから右手にバランスボールサイズの火魔法を作り出した。
「出来た!」
他の三人は負けてられるかと再び集中してマナを集めた。少し待ってみると三人とも同じぐらいの大きさの火魔法を作り出すことに成功した。全員がちゃんと俺の指示で魔法の腕が上がって良かったと思った。
「これでいいかな?」
「はい。それじゃあ報酬は学校で渡すので。俺たちはこれで。ありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!」」」
四人は休憩施設に戻った。俺はみんなが帰ってくるのがすぐに分かるように休憩施設の近くにあるベンチで待つことにした。しばらく魔法で手遊びしながらみんなを待っていると鷲田先生と勝と剛田が生徒をおんぶして休憩施設に戻ってきた。おんぶしている生徒たちを休憩施設の中に運び入れている間にユースたちが俺の前にやってきて言った。
「おはよ寝坊助さん」
「大丈夫っぽそうで良かった。それとおかえり」
「珍しいよね健ちゃんがこんなに遅くまで寝てるの」
透がそう言うとユースが言った。
「天井裏で休憩してた時健斗魔法の訓練してたからほとんど寝てなかったからね」
「え、そうだったの!? 言ってくれればちゃんと交代で寝かせてあげたのに」
「いやいや、あれは俺が勝手にやったことだからさ。気遣ってくれてありがとう」
春奈の優しさに俺は感謝を伝えた。そんな話をしていると勝たちが戻ってきた。勝は男子生徒をおんぶしていたから疲れたのか少しだるそうにしていた。鷲田先生と勝は風魔法で飛べるんだから歩かなくても運べただろうにと思ったが、勝はまだ慣れ始めた頃だから下手に飛んでバランスを崩したりするとまずいからそれが最善だったと結論づけた。そんなことを考えていると春奈が言った。
「健ちゃんも起きたんだしアイテムの確認しに行こうよ」
「そうね。確かめるって言ったものね。みんなお腹空いたりしてない?」
ユースが確認を行い俺たちは春奈の懐中時計とバンダナのアイテムの確認に向かった。一階層の奥の方まで行き人災級のモンスターがいないかどうか探しているとゴブリンが三体いた。春奈はポケットから懐中時計を取り出しカバーを開いた。そして、自分の体に起こる変化を確かめるために剣箔でゴブリンたちと相対した。春奈は颯爽かつ美しくゴブリン三体を薙ぎ倒した。
「どうだった? 懐中時計とバンダナ付けて何か変わったところは?」
俺が春奈に聞くと春奈は少し考えてから言った。
「うーん……いつもより体は軽い気がするけど、劇的に変わったって感じはしないかな。でも、確実に言えるのはプラシーボとかではないわ。なんか、精神的に誰かに励まされたり応援されたりしてるみたいな感じで勇気が湧いてきた感じがした」
「それは懐中時計の方?」
「多分。バンダナの方はちょっと分からない」
俺と春奈がそんな話をしているとユースが言った。
「懐中時計の副作用みたいなのは無い感じ?」
「今のところは無いね。長時間使い続けたら出てくるかも知れないけど、今は大丈夫」
「そう。それじゃあこの後もアイテム試す?」
「そうしようかな。時間もあるし」
というわけで試練のダンジョン五日目は春奈のアイテムを確かめるために使われた。
次回もお楽しみに




