145話 試練のダンジョン②
俺たちは試練のダンジョンの探索を始めた。一階層は人災級にも満たないスライムやゴブリンなどが多く、出てきたとしても災害級までのモンスターがほとんどなので特にモンスターのことは気にせず探索をメインにすることにしたのだ。試練のダンジョンの探索を始めてすぐに試練のダンジョンがあみだくじのように道が入り組んでいることに気がついた。一本の道を進んでいるのにかなり頻繁に左右に道が現れたからが。とは言え無闇に左右の道に進んだりしたら自分たちがどこにいるのか把握できなくなるため真っ直ぐ進んだ。しばらく進むとその道は行き止まりとなり俺たちは引き返すことにした。休憩施設まで戻りコンパスで方角を確認すると俺たちは左右の道を進むことにした。まず一番最初にどっちの道に進むか多数決で決めることにした。その結果右が三票左が二票で右の道に進むことになった。少し歩いていると勝が言った。
「こんなに広いダンジョン歩いて探索するのしんどくね? みんな風魔法使えるんだから風魔法で移動しようぜ」
そう言う勝は俺は言ってやった。
「勝はRPGゲームで探索することなくストーリー進めてすぐ終わらせるような淡白な人間なのか? 俺は違うね。せっかくの古代遺跡みたいなダンジョンでモンスターも弱いんだから探索メインでやろうって言ってるのに、風魔法で移動なんていうロマンのかけらもない発言は謹んでいただきたい!」
俺がそう言うと三人もうんうんと頷いていた。すると、勝が言った。
「暇なんだよ。ゲームなら少し進んだらモンスターがいて戦闘イベントが起こるのに、ここはモンスターも全然出てこないし宝箱もない。ただ歩いてるだけだから暇なんだよ」
勝の言い分は理解出来るが、風魔法を使ってすぐに探索を終えしてしまっては物足りないので勝に風魔法を教えながら進むことにした。
「それじゃあ俺が風魔法教えるから勝はそれで暇つぶししてくれ。勝も風魔法使えるようになったら逃げる時に勝を担がなくていいからな」
「よしきた。教えてくれ!」
「て言っても風魔法はどこから出すかが一番重要だと思ってるからいつもみたいに手にマナを集まるんじゃなくて両足と両手に集められるようにして。どこかのマナが多かったりしたら安定して飛べないから全部同じぐらいでな。それが出来たら飛行機とかロケットみたいにエンジンが機体を押し上げるみたいな感じでやったら出来る」
「オッケーやってみる」
俺たちは探索を続けながら勝は風魔法の訓練をしながら歩いていると勝がゆーっくりと地面から浮遊し慎重に飛んでいた。素のマナ感知が乏しい勝でも万能の賢杖でマナ感知を高めているからそこそこ早く風魔法の原型は出来ていた。このまま続けていけば普通に飛ぶぐらいは簡単に出来るだろうなと思っているとユースが足を止めて言った。
「また左右に道あるけどどうする?」
「一回曲がったらとりあえずその道直進でいいんじゃない? 道出てくるごとに曲がってたらどこにいるのか分からなくなりそうだし」
「そうだね。それじゃあとりあえずこの道真っ直ぐ進もうか」
もうしばらく進み続けていると勝は風魔法を安定して使えるようになってきていた。最初の方は少し危なっかしい感じだったが、今では見ていて失敗したりはしなさそうだった。それを踏まえて俺は勝に指示を出した。
「勝、自分でも分かってると思うけど風魔法安定して使えるようになってきたから今よりスピード上げてみて。倍ぐらいのマナ量でいいからそこまで急がなくていいから」
「分かった」
勝はゆっくりとマナ量を増やしていき浮遊しているだけから一定のスピードで飛べるようになった。
「なぁこれ出来てるよな!?」
「出来てるぞ。その調子で頑張れ。もっと速く飛びたい時、俺は足と胸ぐらいから風魔法出して上体を支えるようにして飛んでるから自分のやりやすいやり方を模索しとけよ」
「おう分かった!」
そう言うと勝は徐々にスピードを上げて飛び始めた。かなり広い通路ではあるが、ずっと飛んでおくにはいささか狭い空間であるためぶつかったりしないかと心配して見ていると、案の定通路の壁にぶつかった。
「いてて……」
「大丈夫か?」
「なんとか大丈夫」
「シャトルランみたいに一直線に飛んで帰ってきてってやる方が安全だと思うぞ」
「そうやるわ」
勝は少し痛みが残っているようだったが、気を取り直しシャトルランの要領で風魔法に慣れるようにずーっと飛んでいた。しばらく進みながら他愛もない話をしていると少し先に行っている勝が言った。
「もう行き止まりだ。モンスターもいなけりゃ宝箱もない。平和すぎだし、何のイベントも起こらない。さすがに物足りなくないか?」
俺もさすがにダンジョンに入ってから何もなしでもうそろそろ何か起こってほしいなと思っていたから同意見だと思っているとユースが言った。
「それじゃあ一度休憩施設に戻って二階層に行こうか。宝箱も今まで来た攻略者に取られてるだろうしね」
つまり、ユースは試練のダンジョンの一階層には宝箱が無いのを分かっていながらずっと歩き続けていたのだ。勝が風魔法をやり始めたからしばらく時間を取っていたのか、シンプルに試練のダンジョンの内装が気に入って満足するまで歩いていたのかは定かでは無い。そんな考え巡らせているといつの間にか休憩施設まで戻ってきていた。荷物を持ち再び集まるとユースが少し待っててと休憩施設の中に戻りすぐに帰ってくるとユースは二階層に向かって歩き始めた。俺たちは今の一瞬で何をしたんだと思ったが、ユースは二階層に向かうためにずっとスマホを見ていた。俺は何を見ているのか気になり聞いた。
「ずっとスマホ見ているけど何見てるんだ?」
「二階層までの道順。休憩施設に攻略者が二階層に向かうための道に迷わないように書いてあったから写真撮ったの」
俺たちはユースの行動に納得した。そのまましばらくユースの後をついて行ったが、ゴブリンの一匹も出てこず不思議に思っていると道中で前田のグループと出会した。
「前田くんたちも今から二階層に?」
「はい。ユースさんたちもですか?」
「そうなの。一緒に行きましょうか」
そんな話をしながら二階層に向かう俺たちだったが、やっぱりモンスターが一匹もいないのはおかしくないかと思っていると、二階層から大勢の人の声が聞こえてきた。二階層に降りてみると、そこには光正の生徒と一般の攻略者たちで溢れかえっていた。この量の人間がいれば人災級のモンスターは怖くて出てこないだろうなと思った。俺たちは絡まれても面倒だからと風魔法で空中を飛んで移動することにした。前田たちに別れを告げ勝のペースに合わせて飛び二階層に無事着いた。休憩施設の近くは大勢の人がたむろしていて近づけないためこのまま二階層の攻略をすることになった。
次回もお楽しみに




