142話 五度目の攻略授業
間藤さんと零弥さんに会ってから一週間が過ぎもう六月も終わりそうになってきた頃塩田先生から五回目の攻略授業の話がされた。
「はい、みんななんとなくもうそろそろ攻略授業くるんじゃないかなって感じてきた頃だと思うので次の攻略授業の話をしたいと思う。次の攻略授業で行くダンジョンは試練のダンジョンて言うダンジョンだ。前回行った研鑽のダンジョンと同等レベルの攻略難度を誇るダンジョンだからしっかり準備して臨むように。それと、試練のダンジョンは一般の攻略者も多数いることで有名だ。ベテランから新人攻略者まで幅広い攻略者がいるから迷惑をかけないように。
後、攻略者が多いダンジョンだからヴェナトレスのような攻略者狩りをしているようなクズ共もいるかも知れないから、光正以外の人とは極力関わらないように。たとえ助けを求めていたとしても助けなくていい。それを罠にお前たちを陥れることを考えているような連中だからな。もちろん本当に助けを求めている攻略者もいるだろうが、そういう時はモンスターを魔法で倒すだけとか先生を呼んでから助けるということを徹底するように。相手も攻略者としていつでも死ぬ可能性があることを念頭に置いているはずだ。
ちなみにお前たちは来年から相手の立場になる可能性があるからダンジョン内では常に緊張感を持って見知らぬパーティを信用しないこと。特に競技会で有名になったような奴は世間に顔が割れてるから攻略者狩りの被害が遭いやすいってデータもあるから特に気をつけるようにな」
塩田先生はいつも以上に冷酷に俺たちに無情にもダンジョンの現実を突きつけるように言った。ダンジョンはアイテムをゲットできたりと華々しい一面があるが、その裏には数多ものドス黒い一面があることを再認識させられた。間藤さんと零弥さんの言葉とも重なるところが多くこれは攻略者の中では一般常識なんだと認識した。まだ俺たちは学生で攻略者の常識が分からないから先生たちが知ってることはきちんと教えてほしいものだと思った。それと、世間に顔が割れるというのもデメリットになるのは面倒だなと思った。だから強いアイテムを競技会は譲渡しているのかなと思った。そんなことを思っているといつの間にか塩田先生は教室から出て行っていた。クラスでは今年の選抜戦はどうなっているんだろうという疑問が出ていた。その話を聞いて例年ならもう終わっている時期であるため不審に思いユースに聞いた。
「なぁユース、今年の選抜戦どうなったんだ?」
「今年から競技会の校内選抜と選抜戦を同時に出来ないかって試行錯誤してるらしいの。選抜戦の方式で一年二年三年で分かれてトップ10を決めてそのトップ10同士で校内選抜をしたらどうかってのが一番有力なんだって。でも、まだ決まってないし選抜戦は光正だけでやってることだから時期ずらしても誰にも迷惑かけないから一旦保留にしてるんじゃない?」
そんな話をしていると教室に塩田先生が戻ってきて言った。
「言い忘れてたから今のうちに言っておくからちゃんと聞いてくれ。今年から選抜戦は競技会の校内選抜と同時にやることになった。今はそうなっているけどもし、不都合とか生徒たちからの反発が多かったりしたら別の時期にずらすから確定ではない。もし、時期をずらして欲しかったら生徒会の意見箱に入れてくれとのことだ。ユースたちに聞いても何も答えられないから無闇に問い詰めたりしないであげてな」
そう言うと塩田先生は教室を後にした。ゲリラ豪雨みたいに短時間で大量の情報量を伝えるだけ伝えてそのままにしておくという一番タチの悪い行動にクラスのみんなはポカンとしていた。そこでユースがみんなに話をした。
「みんな訳分からない状況だと思うから私が知ってることを話すね。今年から選抜戦が競技会の校内選抜になるっていうのはそのままで、普通に選抜戦をやって各学年のトップ10が決まったらその各学年十人の合計三十人で校内選抜をやるって感じ。で、選抜戦と校内選抜を一緒にやることに反対の人は意見箱にその旨を書いて出してって意味。私たち生徒会もあんまり詳しい内容は知らされてないから質問されても答えられないの。私が今知ってるのはこれだけだから鷲田先生とかに聞くのが一番いいと思う」
クラスのみんなはある程度理解出来たのか納得したような表情をしていた。もちろん聞きたいことはあるのだろうが、生徒会も知らされていないことだらけなのだろうと聞けずにいた。先生たちも事前にもっと知らせてくれていたらと思っていると春奈が言った。
「ねぇ健ちゃん、あんな話聞いてた?」
「いや聞いてない。さっきユースに教えてもらったばかり」
「生徒会長だから先生たちも教えてたのかな? まぁ今年は体育祭と文化祭やるってなってるから予定詰めないと大変なんだろうね」
確かに春奈の言う通りかも知れない。体育祭に選抜戦、競技会、文化祭とやることが多い。二年生は修学旅行もあるし、三年生は攻略授業が多くなってるしかなりスケジュールを詰めないといけないのは事実だろう。何の報告も無しなのは先生たちも本当に大変だったからなのかなと思った。トイレに行くために廊下に出てみると他のクラスも選抜戦の件を先生から聞いたのかざわざわしていた。先生反対意見は意見箱に的なこと言ってたけど、なるべく反対意見は少なく済みますようにと心の中で祈った。
そんなことがありつつも一日が始まった。授業の合間に試練のダンジョンについて調べたりしながら一日の授業を終え生徒会の仕事に向かった。意見箱に反対意見があるだろうと回収してみたが、当日ということもあり反対意見は入っていなかった。とりあえず今日は一安心だが、これから先反対意見がある度に先生に報告するか、逐一記録して報告するという仕事が増えることが面倒だなと思った。
塩田先生から試練のダンジョンについての説明があった週末意見箱を回収してみると五件の反対意見が入っていた。内容としては同時に行うことで生徒たちの成長の機会が減ってしまうというものだった。確かに戦う回数が減ることは成長の機会が減ることと同義であるためもっともな指摘だ。でも、これだけの数の反対意見では圧倒的に足りないと言わざるを得ない。
そんな感じで生徒会の仕事を終え週末を迎えた。少し前に試練のダンジョンがどんなダンジョンなのか少し調べたが、それだけでは足りないと思いもっとちゃんと調べてみることにした。試練のダンジョンは一階層二階層三階層と階層ごとに分かれているいわゆる階層ダンジョンと呼ばれるダンジョンらしく、階層が深まるごとにモンスターは強くなっていき環境も劣悪なものになっているそうだ。一階層はあまり難易度の高くないダンジョンと大差なく、二階層からはかなり難易度の高いダンジョンのようになるらしい。三階層は上位ギルドや攻略者チャート上位でないとまともに攻略出来ないと言われるほどらしい。つまりモンスターは破滅級がデフォルトの状態なのが三階層なんだろうなと思った。そんな難易度のダンジョンに攻略授業として行くのはいかがなものかと思ったが、おそらく三階層まで到達するのにも苦労するだろうし、先生たちが三階層に行かないように止めるだろうからそもそも挑戦すら出来ないんだろうなと思った。
次回もお楽しみに




