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アルカディアリベル  作者: 描空


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131話 体育祭準備

 研鑽のダンジョンから帰って来て五月も中旬を過ぎた。体育祭は六月頭を予定しているため俺たち生徒会はもっと前から動き始めているのだ。体育祭で使う競技の器具を借りる手筈をしたり、どんなスケジュールでやるのか、ちょっと変わった競技を考案したりした。塩田先生以外にも鷲田先生や尾形先生、他学年の先生たちにも色々助言をもらったりしながら物事を進めていった。それと同時に体育祭用のポスターを作ったり保護者宛にメールと書面での開催の知らせを送ってもらったりと本当に色んなことをした。研鑽のダンジョンから帰って来てからずっと生徒会の仕事に追われ、気がついたらもう五月中旬だったという感じだった。今日も今日とても生徒会の仕事に追われていると勝が言った。


「全校生徒のためにやってるとはいえキッツイな」


 勝の本音にユースが言った。


「私たちのためでもあるし、やりたいって言ったのは私たちなんだから頑張ろ。それとももっと楽しい競技したいとか不満に思ってることある?」


 ユースがそう言うと勝が言った。


「別に不満に思ってることはないけど、この苦労してる時間は俺たちと先生以外誰も知らないし労いの言葉ぐらい欲しいなって」


 勝の言葉には俺も共感出来た。俺たちは言わば陰の功労者であり誰かから感謝されるような機会はほとんどない。学校行事はあるのが当たり前と思っているからこそ生徒会や先生たちに感謝するということが頭に無いのだ。俺も中学生の頃はそうだった。でも、今は生徒会になって運営する側だから分かる。ちゃんと運営することの大変さ、それまでの準備の膨大さ、みんなのためにやってるのに感謝されない辛さ。勝はそれを知って俺たちになら話してもいいと、思いの丈をぶつけてもいいと思って言ったのだろう。これはある種の信頼からくるものだろうと思った。そんなこと思っていると透が言った。


「僕たちがこうやって頑張ってるの先生たちは評価してくれるんだしさもうちょっと頑張ろ」


「そうだけどさー、承認欲求というか頑張りを褒めて欲しいみたいな、自己肯定感上げたいって感じするじゃん。俺たち以外の誰かが褒めてくれないかなーって」


 そうは言っても俺たちの仕事を見て褒めて欲しいなんて言うことも先生たちに俺たち頑張ってますよねって聞いて褒めてもらうのも違う。自然な感じで褒めてもらえることなんて出来ないんじゃ無いかなと思っていると塩田先生が生徒会室にやってきた。


「今のところ競技で使う器具は全部借りられるけど、何か他にやりたいこととかあるか?」


 塩田先生の話に俺たちは首を横に振った。


「そうか。それじゃあまだやることあるだろうけど頑張れよ。先生はお前たちがみんなのために頑張ってるの知ってるからな」


 照れくさそうに言う塩田先生はすぐにドアを閉めた。絶対俺たちが話してた内容聞いてて言ってくれたんだろうけど、それでも誰かから褒めてもらえるのは嬉しかった。すると、勝が言った。


「先生さ絶対俺たちの話してた内容聞いちゃったから褒めてくれたよね? まぁでも嬉しかったしいいや」


 勝は笑顔だった。塩田先生が俺たちの話を聞いていたから褒めたことに対する先生への笑みなのか、褒めてくれたことが嬉しい笑みなのかは分からなかったが、勝の気分が良くなって良かったと思った。そこからしばらく俺たちは黙々と生徒会の仕事をやり続けた。いつの間にか辺りが暗くなっており俺たちは帰ることにした。家に帰ると父さんと母さんがリビングにいた。二人に生徒会の仕事が大変だと愚痴を言うと父さんが言った。


「父さんも仕事は大変だけど、健斗のためだって思うと自然と頑張ろうって思えてくるから気の持ちようだと思うぞ。それに、自分でやろうって決めたんだからちゃんと最後までやり続けなくちゃだぞ。全校生徒の期待を背負ってるんだから」


「でも、誰も感謝してくれないからやる気無くなってきたんだよ」


「父さんもそれは分かる。この仕事誰の役に立ってるんだろうって時々思う。でもな、そういう仕事がないと社会は成り立たない。目で見て分からないことだったとしても誰かは自分の苦労を知ってくれ分かってくれる。父さんはそう思って毎日仕事してる。やりがいなんてとうの昔に無くなったけど、今でも続けてるのは健斗のためだ。仕事は誰かのためにやるのが一番活力になる。だから、友達のため後輩のためみんなのためだって思って今は耐えなさい。体育祭本番にみんながあっと驚く姿を見てやってやったって思えるぐらいの気持ちで取り組み堂々と胸を張りなさい。いつしかその経験が自信と思い出になるから」


「分かった。もうちょっと頑張ってみる」


 父さんの言葉に俺はまだ頑張れると思った。心を支えてもらっているような感じもした。褒めてもらった訳ではないが、自分の頑張りを認めてくれた感じで気分が良かった。すると母さんが言った。


「健ちゃんたちが夜遅くまで頑張ってるのは母さんたちが知ってるから大変になったらいつでも言いなさい。母さんたちが腕を振るってご飯作ったり息抜きにどこか連れて行ったりしてあげるから」


「なら体育祭終わったらお願いしてもいい?」


「もちろんよ。みんなとどんな打ち上げになるか楽しみにしておいてね!」


「うん!」


 父さんと母さんは本当に俺のことを一番に考えてくれる最高の両親だと心から思った。そこから俺は父さんと母さんの言葉を胸に毎日毎日頑張った。大変な時もあったけど、みんなと協力し合ってなんとか体育祭準備が終わった。時期は五月下旬もう体育祭まであと少しだった。俺たちはようやく準備が終わったと一安心した。そこで俺はみんなに打ち上げの話をすることにした。


「みんなさ体育祭が終わったら母さんが俺たちを労う意味を込めての打ち上げしてくれるんだけどいつなら空いてる?」


 俺が聞くとみんな自分の空いてる日を教えてくれた。その結果、体育祭の二日後ならみんな都合が良かった。


「それなら体育祭の二日後うちで打ち上げするってことで」


 打ち上げの日程も決まり母さんに打ち上げの日をメールした。すると、母さんから了解という顔文字が送られてきた。後はもう体育祭当日までゆっくり過ごして疲れを取り当日最高のコンディションを発揮出来るようにした。

次回もお楽しみに


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