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アルカディアリベル  作者: 描空


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129話 救出

 男性の仲間を探し始めた俺たちだったが、全然見つからなかった。春奈の万感リングの力で聴覚、嗅覚の性能を伸ばしても何の手がかりも見つからず、仲間の人たちがウルスに襲われた痕跡も無かった。男性のように怪我をした時に流れた血痕があれば、探しやすいのにと思っていると男性が言った。


「もしかしたらみんなもっと遠くまで逃げたのかも。俺たちがウルスと出会した時俺が殿みたいに一番後ろにいて攻撃されたからみんなは体力のある限り遠くで逃げたんだと思う。もしかしたら別の道から来た道を帰ったのかも知れない」


 男性の言い分も確かにその通りだが、霧が立ち込めていたこのダンジョン内で正確に来た道を戻ることはかなり低確率だろうから、ダンジョンの奥に逃げた方が可能性が高いだろう。そんなことを考えているとユースが聞いた。


「ウルスはあなたたちの前から襲って来たんですか? 後ろから襲って来たんですか? それによって捜索する場所を変えましょう」


「ここまで進んで来て逃げてるうちにどっちからかは正確には覚えてなくて……でも、みんなが逃げたのはダンジョンの奥だったと思う。ケータイも逃げてるうちにどっか行ったから連絡が取れなくて申し訳ない」


 男性は頭を下げた。俺たちはあなたに責任は無いと頭を上げてもらうように言った。そこから俺たちは手分けして捜索しようとしたが、ウルスという厄介なモンスターがいた以上集団でいることにした。鷲田先生も集団行動するように念押ししていたし少人数で行動はしないようにした。春奈の万感リングで捜索をしばらく続けたのだが、ウルスがいた辺りから半径百メートル範囲には人っこ一人いなかった。男性は仲間がどこに逃げたのか見当がつかないようで頭を悩ませていた。仲間がいないのはかなり遠くまでウルスから逃げたからであろう。近くに他のモンスターがいないことからここら一帯はウルスのナワバリであるため他のモンスターが入って来なかったから男性は生き残ったのだろう。だが、男性の仲間は他のモンスターのナワバリに入ってしまったということになり助けられるか分からない状況ではないかと思った。そんな絶望的な状況を男性に伝えるのは酷なため伝えられずにいると男性が言った。


「きっとこの近くには誰もいない。これ以上君たちに迷惑をかけるわけにはいかない。君たちは自分たちの攻略を再開してくれ」


 男性の言葉に俺たちはどうするかと顔を見合わせたが、すぐにユースが言った。


「それじゃあ私たちはこの先を攻略して来ますので、ついでにあなたの仲間も探して来ます。元々私たちここ攻略するつもりだったんで気にしないでください。一応お仲間さんたちの名前を教えてくれませんか?」


「あ、えっと蓮太郎と綾人と優斗です。全員俺とほぼ同じ体格の男なので見つけたら助けてあげてください」


「分かりました。もし見つけたら正しい方向教えて出口まで行けるように案内します。ですので、ウルスがいない今のうちに体力回復させておいてください。合流出来たら出口近くに光正の休憩施設があるのでそこで休憩させて貰ってください。多分ですけどちょっとは休ませてもらえると思うんで」


「何から何まで本当にありがとう。君たちがその休憩施設に戻って来たらお礼をさせてくれ。仲間が見つからなくても君たちのせいじゃないし気負わないでくれ。俺たち攻略者は常に死ぬ可能性があるんだから死ぬ覚悟は出来てる。考えたくはないが、死んでたらその場所を分かりやすいように何かでマークしておいて欲しい。仲間として俺が回収しに行く」


「分かりました。それじゃあ探して来ます」


 俺たちはダンジョンの奥に向かって進んだ。男性は俺たちが来た道を戻り休憩施設に向かった。しばらく攻略をしながら男性の仲間探しをしているとウルスのナワバリから離れ別のモンスターのナワバリと思しき場所まで来た。何となくそんな感じがするだけだから確証は無いが、みんなも何かを感じ取ったのか少し警戒心を強めていた。すると、春奈が言った。


「なんかぐちゃぐちゃって音がするんだけど何の音かな?」


「モンスターが水浴びでもしてるんじゃない?」


「そうかなぁ? でも、モンスターがいるのは確実だろうから気をつけてね」


 俺たちはどこからモンスターが来てもいいように警戒心を強めていつでも攻撃出来るように準備した。そして、春奈の聴覚を頼りに音の方向に歩みを進めた。次第にそのぐちゃぐちゃという音は俺たちにも聞こえるようになってきた。すると、春奈が言った。


「なんか変な匂いがする……ちょっとキツい匂いだから嗅覚は元に戻すね」


 春奈の感じ取った変な匂いがどんな匂いなのかは分からないが、何らかの原因があるのは間違いないと俺たちはさらに警戒心を強めた。それから少し進むと、視界の奥に何か動いている物があった。俺たちではそれが何なのか識別することが出来ず春奈に頼った。春奈は万感リングで視界の奥にある何かを見てみると急に走り始めた。俺たちはどうしたんだと追いかけると春奈が言った。


「あれ多分さっきの人の仲間だけど、狼みたいなモンスターに食べられてるの!」


 その言葉に俺は風魔法で一人だけその視界の奥で動いている狼みたいなモンスターの所に向かった。次第にその狼みたいなモンスターが男性を食べているのが分かると俺は男性を傷つけないように水魔法で狼たちを押し込んだ。狼たちは水に抵抗することなく流されていき俺はすぐに男性を助けようと治癒魔法を行った。だが、どれだけ治癒魔法をしても男性の損傷部分は治らなかった。その時になってようやくこの男性がもう亡くなっているのに気がついた。治癒魔法は自然治癒をマナの力で強引に早めているだけだから、亡くなった人には意味がないのだ。みんなが遅れて駆けつけると男性の損傷部分を見て何も言えなかったのか黙っていた。救えなかったことを嘆くより他の人がまだ助けを求めているかも知れないと思い立ち上がった。狼のようなモンスターが複数頭俺たちの方に向かって来ていたが、火魔法で全て焼き尽くした。まだ二人残っているんだと思い俺は歩みを進めた。だが、手がかかりが無い以上無闇矢鱈に進めないため春奈を頼った。


「春奈どっちに行けばいい?」


「ちょっと待ってね——この道の奥には特に何も無いし、音も聞こえない。多分この辺りにはいないと思う。多分だけど周りにある細い道にいるんじゃないかな」


「探すの結構キツいかもな」


「そうね。でも、助けてあげられるのなら助けなくちゃ」


 ユースの言葉に俺たちは周りにある細い道に入り男性の仲間を探し始めた。しばらく歩き続けていると春奈が言った。


「話し声が聞こえる!」


「どっちからだ!?」


「進行方向からなんだけど、道自体が細いから反響して分かりづらい。多分だけど枝分かれした道にいると思う」


 俺はみんなに大声で叫んで助けに来たことを伝えてもいいかと聞いた。すると、みんな了承してくれた。春奈が万感リングを解除した。それを確認して俺は大声で叫んだ。


「助けに来ましたー!! 広い道まで出て来てくださーい!!」


 俺たちが迎えに行くより来てもらう方が早いと思いそう言い大通りでしばらく待っていると男性二人が肩を貸しながら歩いて来た。一人は脚を怪我していて一人は無事だった。俺はすぐに怪我を治した。すると、二人は何度も俺たちに感謝を述べた。俺たちは一人の仲間を助けられなかった事を伝えその人の所まで案内した。二人はとても暗い表情をしていた。


「綾人……綾人……」


 二人は仲間との別れに涙を流した。俺たちはいいたたまれなくなり少し離れた場所にいた。少しすると二人が賢治という人について聞いてきた。おそらく最初に会った人だろうということで休憩施設にいることを伝えた。


「ありがとう。本当にありがとう。蓮太郎のことは気負わないでくれ。後は俺たちだけでやるから君たちはその休憩施設に戻って賢治を呼んできてくれないか?」


「分かりました」


 俺たちは賢治さんを休憩施設に呼びに向かった。休憩施設に着くと賢治さんが不安そうな顔で待っていた。俺たちは綾人さん以外は助けられたことと二人が綾人さんの所で待っていることを伝えた。すると、賢治さんはすぐに二人の所に向かった。

次回もお楽しみに


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