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アルカディアリベル  作者: 描空


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128話 攻略者

 俺の次の目標が氷魔法に決まりみんなでここに霧を発生させた犯人を探し始めた。仮説としては先にいた攻略者が水魔法を使い氷魔法か氷系のアイテムを使った。元からここは湿度が高く氷系のモンスターがいるかなどが考えられる。もちろん他にも可能性はあるだろうが、この霧を発生させた氷系を扱う何者かがいるのかは確定している。それが攻略者なのかモンスターなのかが問題なのだ。攻略者なら心強いがモンスターなら初めて戦う相手な以上対策も知らないため厄介だろう。もしかしたら勝の凍界無別のように凍らせられる可能性もあるため警戒は怠らないようにした。しばらく霧で視界が悪い道を進んでいると地面から水音がし始めた。さすがにこの霧では視界が悪く先も見通せないため火魔法を使っていいかとユースに聞くことにした。


「なぁユース、この霧火魔法で晴らしていいか? さすがに視界悪いだろ」


「ダメ。ここはまだそこまで霧が濃くないから霧を発生させてる本人がいないことが分かる。でも、霧を晴らしちゃうとその本人が近くにいるのに分からないかも知れない。この霧は重要な情報なの。だからまだしばらくはダメ。攻略者ならいいけどモンスターなら私たちがいることを知られること自体良くない。だから、ここからはなるべく静かに進むよ」


 俺たちはユースの指示に従いなるべく静かに歩みを進めた。地面にある水たまりが次第に数が多くなっていくのと同時に霧の濃さも増していった。もうそろそろこの霧を発生させた本人がいるだろうと思っていると人間の息遣いのような音が聞こえ始めた。一定のリズムで息を吸い込むような音だったため勝たちはすぐにその人を探そうとしたが、ユースは止めた。それと同時に口に指を当てて静かにするようにジェスチャーした。勝たちは何でかというような表情だったが、悪魔のダンジョンで子どもの声が聞こえてきたと思ったら子どもの悪魔だったように、人間の息遣いに似た音を出せるモンスターの可能性も十分あるためユースは最大限警戒しているのだろう。勝たちはユースの指示に従い静かにしていた。少しずつ歩みを進めその息遣いが聞こえてくる方に歩いて行くと、壁際に右腹部が大きな三本の線で引き裂かれたような男性がいた。


「大丈夫ですか!?」


 春奈が少し大きな声で言うと怪我でぐったりしていた男性がすぐに静かにするようにジェスチャーした。俺はとりあえずその人の怪我を治してあげ何があったのか話を聞くことにした。


「何があったんですか?」


 なるべく小さな声で男性に問いかけると男性は同じぐらいの声で答えた。


「ウルスだ。それも複数」


 ウルスというモンスターがどんなモンスターなのか気になったが、それよりこの人は一人で攻略していたのか聞いた。


「あなた一人ですか? 仲間はいますか?」


「三人いるはずなんだが、どうなったかは分からねぇ……ウルスに見つかった可能性もあるし、隠れてるかもだが、何も分からん。さすがにウルス複数体はまずいってなって霧を発生させたんだ。そのおかげで俺は今まで見つからずに済んだ。この怪我は逃げる前仲間を探してくれなんて虫のいいことは言いたくないが、お前らがいいって言うなら頼む。俺たちが渡せるもんは何でも渡す。だから、あいつらを助けたいんだ……」


 その人の必死の訴えに俺たちは迷うことなくその願いを引き受けた。俺たちはその人がどこで仲間とはぐれたのか、ウルスがいたのはどの辺りなのか話を聞いた。だが、がむしゃらに逃げてきたため仲間とはぐれた場所もウルスがいた場所もよく分からないらしい。とりあえず俺たちは霧を晴らすことなくゆっくりと歩みを進めた。俺はウルスがどんなモンスターなのか知るために男性に小さい声で問いかけた。


「ウルスってどんなモンスターなんですか?」


「ヒグマみたいなモンスターだよ。頑丈で大きくて攻撃力が高い厄介なモンスターだよ。肉食性でどんな相手でも襲いかかる獰猛なやつだよ。でも、熊をそのままモンスターにしたようなやつだから爪の攻撃以外無いのが救いかな。だから、ウルスには魔法が有効なんだ。だからと言ってゆっくりしていられるわけじゃない。ウルスは普通のモンスターと同じかそれ以上のスピードが出るから気をつけてね」


「分かりました」


 そんな話をしていると春奈が言った。


「この先から獣臭がするわ」


 春奈の万感リングのおかげで近くにウルスがいるのに気が付けた。もし、ウルスを倒せなかった場合を考えると、熊をそのままモンスターにしたようなやつということは追われる時は時速六十キロにもなる可能性がある。だから、この人たちは霧を発生させてウルスが追ってくるのを阻害したのだろう。熊に追われるなんて絶対に嫌だなと思っていると春奈の言葉通り獣の息遣いが聞こえてきた。


「ウルスだ」


 男性の声に俺たちはすぐに魔法を使えるように構えた。勝は凍界無別を透は空掴(くうきゃく)の遊び人を用意した。すると、霧の奥からウルスと思しき影が見え始めた。透が俺たちに視線を送ってきたので俺たちは頷いた。透が空掴の遊び人でウルスたちを捕まえると、ウルスたちは咆哮のような警告音のような声を上げた。透がウルスたちを捕まえている間に俺とユースは爆発魔法と雷魔法で攻撃をした。最後のトドメてして勝が凍界無別でウルスたちを凍らせた。俺たちは凍ったウルスたちの所に近づいた。そこには三体のウルスがいたが、本当に死んでいるか疑問だったので心臓に氷刃剣を突き刺しきちんとトドメを刺した。すると、男性が言った。


「強いな君たち……って、競技会で二年連続優勝した光正の子たちか! そりゃ強いわけだ。まだウルスがいるかも知れないけど、君たちなら安心だな」


「そんなに油断しないでください。いつウルスが襲って来てもおかしくないんですから」


 そう言うと春奈が道の奥を急に警戒し始めた。どうしたのかと思っていると俺たちに静かにするようにジェスチャーした。耳の後ろに両手を当ててより音を拾えるようにして道の奥の音を聞いていた。


「さっきより多いよ。多分五体ぐらいいると思う」


 俺たちはさっきと同じ戦法でウルスを殺すために息を潜めた。しばらくするとウルスたちがこちらに歩いて来た。そして、透の空掴の遊び人の範囲内に入ったウルスたちは再び捕まえられた。そして、俺とユースが魔法で攻撃をした。でも、さっきよりも個体数が多いからさっきよりも魔法の出力と数を増やしてちゃんと有効打になるようにした。そして勝の凍界無別で凍らせ心臓を突き刺しトドメを刺した。春奈が近くにいるウルスがいないか確認したが、この近くには他のモンスターもいないとのことだった。それならと俺はこの霧を晴らすために火魔法を使った。霧が晴れると俺たちは男性の仲間を探すことにした。

次回もお楽しみに


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