127話 研鑽のダンジョン
俺たちは足がすくんでいるみんなを気にすることなく攻略の一歩を踏み出した。見た目はいつも通りの洞窟っぽいダンジョンであるためそこまでいつもと違う感じはしなかった。これは悪魔のダンジョンでもそうだった。一年の頃競技会で攻略した滅殺のダンジョンは湿地帯みたいな場所があったりして面白みがあったというか変わり種みたいな感じで今となっては貴重な経験だったんだなと思った。それにテラコーバスラヴァという溶岩を作り出すおそらく珍しいであろうモンスターとも戦えたから目が肥えてしまったのだろう。そんなことを考えているとユースが足を止めた。今までは一本道を通って来たのだから別れ道でもあったのかなとユースの前を見てみると、可愛らしい猫がいた。でも、すぐにこんなダンジョンに可愛い猫がいるわけがないと構えた。
「ファルスムフェレスよ」
「どんな特徴が?」
俺は名前だけ聞いても分からないからユースに問うた。
「見た目の通り化け猫みたいなモンスター。フェレスは今まで自分の目で見たことがあるモンスターに化けることが出来るの。多分みんなここの情報調べているうちに色んなモンスターが出てくるって情報あったと思うけど、その正体は多分だけどこいつ。でも、フェレスが化けるっていうことはそのモンスターもここにいるってことだから十分に警戒してね」
ユースの説明が終わると俺たちはどうやってこのファルスムフェレスを殺すかに移った。
「今はまだフェレスが化けてないから簡単にやれると思うよ。誰がやる?」
「僕がやるよ」
ユースの問いに透が答えた。透は空掴の遊び人を嵌めファルスムフェレスを空間ごと握りつぶした。あんな可愛い見た目の猫がモンスターなんてと思うと凄惨な現場だったが、もしかしたらやられていたのは俺たちの方かも知れないと考えると恐ろしかった。あんなトラップみたいなモンスターもいるんだし、悪魔の子どもの声も人間と全く同じだったから、いつかモンスターに騙されてしまうのではないかと思った。出来ることなら自分に向けられた嘘を破るアイテムか魔法が欲しいなと思った。もしかしたらミトロシスグリーモの中にあるかもと思い帰ったらじいちゃんに読んでもらおうと考えた。
「ファレスも倒したことだし先進もうか」
俺たちはユースの指示に従い攻略を続けた。しばらく進んでいると道の横からに変な窪みが現れるようになった。人一人がすっぽりと入るような窪みで何か仕掛けがあるのかなと思っていると道の奥からゴロゴロと岩と岩がぶつかるような音がし始めた。俺たちは何の音なのか確かめるために道の先を凝視した。すると、道幅にピッタリと合うサイズの巨大な丸い岩が転がってきているのが分かった。何で平坦な道なのに転がってきているのかなど何も気にせずその巨大な丸い岩が俺たちの所に来る前に爆発魔法で破壊した。岩が砕けると道の横の窪みに身を隠していたみんなが出てきた。その時、横にあった窪みはあの岩を避けるためのものなんだと理解した。
「何あの岩……」
「あんなトラップあるなんて知らなかった……」
「ていうかよくそんなすぐに破壊出来たな」
「いや、みんなだってすぐ窪みに避難してたじゃん。それと一緒だよ」
そんな会話をしていると砕けた岩の向こうからフンコロガシを一メートルぐらいに拡大したような昆虫がいた。俺たちはまさかあいつが転がしてたのかと思っているとユースが解説し始めた。
「あれはサクソルムボルタティオ。みんなが思っている通りフンコロガシの岩版。あいつは自分の岩で轢き殺されたモンスターとかその他の生物を食べる変わった生態なの。滅多に見ないモンスターだから出会えてラッキーだけど、見た通り結構ヤバいやつだからそのままトドメ刺しちゃって」
俺は爆発魔法でそのモンスターを殺した。こんなモンスターもいるんだと知見を深められてラッキーだなと思った。でも、もうあんなトラップみたいなことはやめて欲しいとも思った。そこから少し進んでみると上へと向かう道と下へと向かう道が現れた。これはどちらに進むかで大きく運命が傾く重要な決断だと誰もが理解していた。
「どうする?」
俺たちはどちらに進むべきか決めかねていた。道の先がどうなっているのかここからは分からず勘で決める他ない。それなら俺が風魔法で一瞬だけ道の先を見てきたらとも考えたが、それならみんなで行く方がいいと言われそうだなと思い言わなかった。みんな考え込み誰もどっちに行くか発言しない時間が続いた。俺はこの状況を変えるためにも自分の考えを話すことにした。
「なぁさ俺が道の先風魔法でちゃちゃっと見て来ようか?」
俺の提案にみんな少し考えてから頷いた。俺はとりあえず上への道に行くことにした。万が一の場合があってはならないためヌラ・レフラリフレクティブで隠れながら風魔法で道の先に進んだ。道の先は特に変わった雰囲気はなくモンスターも近くにはいないようだったので下への道にも行った。下の道は霧が発生していて視界が悪かった。普通に攻略するのなら下への道は絶対に選ばないだろうが、みんなは下の道を選ぶんだろうなと思いながらみんなの元に戻った。ヌラ・レフラリフレクティブを解除してみんなに姿を見せるとどうだったか聞かれた。
「上の道は普通のダンジョンって感じだった。でも、下の道は霧がかってて視界が悪かった。どっちの道もモンスターがすぐ近くにいるような感じじゃなかったから安牌取るなら上の道だけど、どうせ下の道行くんだろ?」
みんな俺の言葉によく分かってるじゃんみたいな顔で首を縦に振った。まぁそうだよなと半ば諦めのような感情とみんなのやる気をそのまま伸ばしてあげたいという感情で脳内が支配された。俺がそんなことで立ち止まっているとユースを先頭にみんなが歩みを進めていた。警戒はしているのだろうが、わざわざ危険だと思われる道を進むのは自分の成長を促すためなのかなと思っていると、霧が見え始めた。
「本当に霧がかってる」
「ていうかなんで霧がかってるんだ?」
勝の疑問に透が答えた。
「霧は十分な湿度がある場所が急激に冷やされるから発生するんだ。だから、湿度を上げる水がどこかにあって、それを急激に冷やすことが出来るモンスターがいるのかも」
その言葉を聞いた俺は先に攻略している攻略者の可能性もあるんじゃないかと思っているとユースが言った。
「氷系のアイテムを使える攻略者がいる可能性もある。健斗の氷刃剣みたいな。もしかしたら珍しいけど氷系の魔法を使える人がいるかも」
ユースの言葉に氷系の魔法を使っている人は見たことがないことに気がついた。氷刃剣や勝の凍界無別など氷系のアイテムは結構あるのに何で魔法は使い手が少ないんだろうと思った。気になったら聞かないと気が済まない俺はユースに聞いた。
「ていうか何で氷系の魔法って使える人が少ないんだ?」
「そもそも人間に使える基礎魔法は火、水、風、雷、爆破、サポートの六つで、健斗みたいにマナ感知に長けてら人なら独自魔法とか使えるの。それ以外に透の杖で木を生やしたり出来る自然系の魔法が使えたり選抜戦で土魔法を使ってた宮村くんとかはアイテムか先天的なものなの。マナは大抵の自然現象を再現出来るから氷魔法も使えるんだろうけど、氷魔法は殺傷能力がそこまで高くないしマナ感知に長けてないと勝の凍界無別みたいには出来ないから使う人が多くないんだと思う」
「なら俺が使いこなしてみるしかないな」
俺の次の目標が決まった。もしかしたらこの先にいるかも知れない氷魔法が使える攻略者がいた時はその人に教えてもらおう。でも、普通にモンスターだった場合はじいちゃんに教えて貰えば解決だと思った。




