126話 四度目の攻略授業
ユースと英語の勉強を始めてから一ヶ月が経った。ある程度英語が身につきユースにも褒めてもらえるようになってきた頃、四度目の攻略授業が始まることが塩田先生より知らされた。
「来週から三年生になって初めての攻略授業に行く。ダンジョンの名前は研鑽のダンジョン。今までのダンジョンをモンスターの等級で表すのなら天災級ぐらいだったが、研鑽のダンジョンは破滅級だ。今までより気を引き締めて臨むように。そして、迂闊な行動や油断は禁物だ。これだけだと心配になるだろうから言っておく。破滅級に相当するダンジョンとは言え、そこまで急に強いモンスターが出てきたり数が増加するなんてことはない。攻略を続けてどんどん進んでいくと強いモンスターが出てくる傾向にある。ただ、その傾向があるというだけで出入り口に近い所に強いモンスターがいる可能性もあるから十分に警戒して攻略に取り組むように。質問があれば受け付けるがどうだ?」
みんな特に質問はないのか手を挙げなかった。みんなそこまで心配していないのか、今の時代大体のことは調べたら出てくるから聞くまでもないと判断したのだろう。塩田先生が教室を後にするとみんな研鑽のダンジョンについて調べ始めたのか一斉にスマホをいじり始めた。みんなそんなにすぐ調べ始めるのなら先生に質問したらいいのにと思ったが、先生のためを思ってそうしているのかなと思うことにした。そんなこと思っていると透が話しかけてきた。
「健ちゃんはどんなモンスターが出てくるか調べたりしないの?」
「まぁ別に大丈夫かな。それに事前に情報収集して戦うようにしたら誰も見たことないモンスターが出てきた時対処のしようがないだろうから、情報を基に戦うのを癖付けないようにしてるって言えば聞こえはいいけど、実際は面倒なのとモンスターの数が多すぎて覚えられないから。メジャーなのは覚えられるけど、一年の時に競技会で行った滅殺のダンジョンにいたテラコーバスラヴァとか逆さのダンジョンにいたアラネアとかいちいち覚えてられないっての」
俺の話を聞いていたユースが俺に対して言った。
「ちょっとは覚える努力しなさいよ」
「分かってるよ。実際戦ったことのある奴らは大体覚えてるから」
「そう。それならいろんな奴らと戦ってもらわなくちゃね」
そんな話をしていると授業が始まった。ユースは自分の席に着いた。でも、実際ちゃんとモンスターの特性とかは覚えておかないと命取りになるだろうから覚えておかなくちゃなと思った。俺は攻略授業が始まるまでの間に研鑽のダンジョンにどんなモンスターが出現するのか調べた。出現するモンスターはかなりまばらでミノタウロスが出てきたという情報もあれば、悪魔が出てきたという情報もあった。そして、調べていくうちに個人ブログに書かれている内容に目が止まった。そこに書かれていた内容は、研鑽のダンジョンはその人もしくはそのパーティにあったモンスターが出てくるというものだった。ダンジョンでそんなゲームみたいなことがあり得るのかと疑問に思ったが、ダンジョンについては分からないことだらけなため否定も出来ないのだ。もし、その個人ブログに書かれている内容が本当であった場合俺にはどんなモンスターが出てくるのか気になった。逆さのダンジョンで戦ったデュラハンみたいな強いモンスターが出てきた場合厄介だなとも思った。
そんな感じで情報収集をしているとあっという間に一週間が過ぎた。明日が研鑽のダンジョンに行く日だったため、毎度のごとく攻略授業に行く準備を進めていると勝からメールが届いた。珍しいなと思いメールを開くとそこには、研鑽のダンジョンでは健斗はなるべくサポートに回って欲しいという旨のメールが届いていた。どうしてだろうと思ったが、少し考えてみればいくつか候補が思い浮かんだ。俺が戦ってしまうとみんなの成長が阻害されること、俺がサポートした状態で戦ってみたい、俺のサポート魔法を伸ばして欲しいなど他にもたくさん理由はあるだろう。俺もたまにはそういうのもいいかと思い勝にいいよと返した。
翌日俺たちはいつも通り学校に向かい研鑽のダンジョンへと気合を入れていた。いつも通りバスに乗り込む前に鷲田先生の話があった。
「みなさん聞いているとは思いますが、今回行く研鑽のダンジョンは今まで行ったダンジョンに比べて少し難易度の高いダンジョンとなっています。今までの調子で挑み怪我をするなんていうことにはならないように常に警戒しながら攻略してください。そして、少しでもヤバいと思ったらすぐにスビティスシィを吹くか逃げるかしてください。あなたたちは攻略者の卵であるのに間違いありませんが、それ以前に一人の高校生です。命の危険を感じたら逃げて私たち教員に報告してください。あなたたちを守るのは私たちの役割です。遠慮せず頼ってください。現役の攻略者もヤバい時は逃げますので逃げることは恥ずかしいことではないことを覚えておいてください。それでは研鑽のダンジョンに向かいます」
鷲田先生の話が終わると俺たちはバスに乗り込み研鑽のダンジョンに向かった。研鑽のダンジョンは今までのダンジョンより遠く、行くまで半日ほどかかる。そのため今までより攻略する時間自体は少し短い。攻略難易度の高さからもそこまで長居はするべきではないという考えもあって、攻略する時間が短くなっているのだろう。今までは七日間みっちり攻略していたが、今回は二日短い五日間となっている。短い時間で攻略をしなければならないと焦って進む生徒がいないのを願う他ない。研鑽のダンジョンに着くまで半日もかかるとのことでクラスの大半はもう眠っている。ユースたちも寝ているため俺も寝ようと目を閉じたその時、シロの声がした。
(健斗今回行く研鑽のダンジョン気をつけてね。なんだか嫌な予感がする……気のせいならいいんだけど、多分気のせいじゃない。もしかしたら強いモンスターが現れるかもだからヤバいって思ったらすぐ逃げてね)
久しぶりのシロの警告に本当にヤバいんじゃないかと思ったが、今から対策出来ることなんて限られているし、どんなモンスターが出てくるのかも分からない。死の危険が迫って来た時は死嫌のリングが知らせてくれるが、今まで龍王の時にしか反応したことがないからそこまでアテにできない。というより死嫌のリングが反応した時は本当の本当にヤバい時なためヤンウェイですぐに逃げることも考えておかないとなと考えているといつの間にか眠ってしまった。隣に座っていたユースに起こされバスを降りた。そこは辺り一面山でどこかの山脈かなと思った。そんな所にあるダンジョンよく見つけたなと思っていると鷲田先生が話し始めた。
「今から研鑽のダンジョンに入る。みんな途切れることなく着いてくるように」
鷲田先生の後をついて行くと山の麓に自然とは対照的な人工物があった。その人工物とは悪魔のダンジョンの出入り口のようなコンクリートの扉であり、鷲田先生が側にある機械にカードキーのような物をかざすとその扉が開いた。これがあるということは本当に難易度の高いダンジョンなんだと思った。鷲田先生から離れないようについて行くと、そこには今までの休憩施設とは比べ物にならないほど頑丈そうなコンクリート製の休憩施設と壁があった。どんなモンスターが今までに出たんだと思っていると先生たちがスビティスシィを配った。そして、最後に鷲田先生がもう一度言った。
「ヤバいと思ったらすぐにここまで逃げてくること。攻略より命優先。単独行動はせず集団行動をする。今回の目標は無事に帰ること。それでは気をつけて攻略してくるように」
鷲田先生の異常なまでの警告にみんな足が止まっていた。でも、俺たちは違った。成長のチャンスだと一歩を踏み出したのだ。




