125話 生徒会の仕事
俺たちが三年生になってから一ヶ月経った。一年生たちはもう俺たちを見慣れたのか入学初日のような事は無くなった。少し寂しいような感じもするが、こんなものだろうと思った。それに廊下を歩くたびに一年生たちに囲まれていた頃は毎日大変だったから無くなって良かったとも思った。放課後生徒会の仕事をしていると塩田先生が俺たちに一枚の紙を持ってきて話し始めた。
「今度の四回目の攻略授業で行くダンジョンの候補を持って来た。毎回生徒会の意見も取り入れて攻略授業に行くダンジョン決めてるからみんなもアンケートみたいな物だと思って答えてくれ」
生徒会はそんなこともしてるんだと思い塩田先生が持って来た紙を見てみると、そこには十個程度のダンジョンの名前が挙げられていた。この中から次に行くダンジョンが決まるんだなと思っているとユースが言った。
「私は研鑽のダンジョンがいいと思います」
初めて聞くダンジョンだなと思っていると塩田先生が言った。
「他の生徒たちにしては難易度高くないか? 孤立のダンジョンでも結構危なっかしいことあったし」
「そうですか? 私たちのクラスなら全然いけると思いますけどね」
「他のクラスがな」
会話の内容からして研鑽のダンジョンは少し難易度が高いダンジョンで他のクラスがちゃんと攻略出来るか心配なのだろう。でも、いずれは攻略出来るようにならなくちゃいけないのだからと思ったが、三年生の初めからレベルを上げてしまうとそれ以降もレベルを上げなくてはいけないため少し心配だった。おそらく塩田先生も同じ気持ちなのだろうと思いユースに言った。
「他のクラスがいけるか心配なレベルのダンジョンならもうちょっと後からでもいいんじゃない? 今回は少し低いレベルで様子見するって感じで」
「でもそれだとみんなの成長が遅くならない? 攻略試験もあるんだし強くなれるのなら強くなった方が良くない?」
ユースの発言に塩田先生が言った。
「そうかも知れないけど、他の生徒たちにはちょっとレベルが高いだろうから怪我したりして先生たちの負担が増えるだろうから」
「そんなの当たり前ですよ。ダンジョンってそう言う所じゃないですか。常に死ぬかも知れない場所なんですから。卒業して攻略者になって強いモンスターに出会してすぐに死ぬぐらいなら、今のうちから自分のレベルより少し上のダンジョンに行って成長を促す必要があると思うんです」
塩田先生にユースがガツンと言った。ユースの言い分は正しいかも知れないが、人によっては攻略者になってもそこまで難易度の高いダンジョンに行かない人もいるだろうしなと思ったが、塩田先生は違うようだった。
「ユースの言う通りだな。常に自分より下か同等のレベルのダンジョンに行っても自意識過剰になるかも知れないしかえって危険だな。これからは少し上のレベルに挑戦するように先生たちに言ってくるよ。それじゃあまた生徒会の仕事振られたら来るから」
そう言うと塩田先生は生徒会室を後にした。ということは塩田先生が他の先生たちを納得させたら次の攻略授業で行くダンジョンは研鑽のダンジョンになるということだ。今のうちから調べておくことも可能だが、さすがに公平性に欠けるためやめておいた。そんなことを考えていると唐突にユースが言った。
「突然だけどみんな英語の勉強してる?」
俺たちはなんでそんなこと聞いてくるんだと疑問に思った。まだテスト期間でも無いし攻略者になる上で必要性も無いため学校での授業以上に勉強してる攻略者なんてほとんどいないだろと思った。すると、ユースが続けた。
「みんなその様子だと学校以外で英語の勉強してないね。そんなんじゃ海外のダンジョン行けないよ? 春奈たちは私たちに着いて来ない時もあるだろうからそこまで必須て訳じゃないけど、健斗、あなたは私の夫として生涯隣に居続けてもらうんだから英語話せるようになってね」
「ん?」
ユースの言っている意味が分からずもっと詳しい求めるように言った。すると、ユースは呆れたような顔を一瞬見せたが話を続けた。
「だから、私が攻略者になったらお父さんたちと世界中をまわりながらダンジョン攻略するんだから、英語ぐらいは話せるようになっててねってこと。私の夫になるんだから当然でしょ」
「は、はい。頑張って英語勉強します。夫としての自覚が足りてませんでした」
俺がユースに謝ると春奈が言った。
「私たちに着いて来ない時もあるだろうけどってどういうこと? 私たちもユースたちと一緒にダンジョン攻略行っていいの?」
「逆に来ないの? 私てっきりこのまま五人パーティでやっていくものだって思ってたから。お父さんたちもそのつもりだったんだけど……」
ユースの発言に春奈たちは驚いていたが、すぐに言葉を紡いだ。
「俺たちなんかがトールさんたちと一緒に攻略者になれるって最高じゃん!」
「僕たちで良ければぜひ!」
「私たち頑張るわ!」
みんなの肯定的な反応を見てユースは笑顔になった。みんなと一緒に攻略者になれることが嬉しいのだろう。ユースの笑顔を見ているとこっちまで嬉しい気持ちになってきた。それからというものの俺たちはユースにみっちり英語を叩き込まれることとなった。授業の合間や生徒会の仕事がひと段落した後、さらに、実戦授業の最中に誰がどの魔法や攻撃をするかの指示まで英語で行うようになった。そんなスパルタな勉強法で英語を叩き込まれた俺たちはある程度英語が話せるようになった。俺は何故ユースがここまで英語を話せるのかなと思い聞いてみることにした。
「なぁユース、なんでそんなに英語話せるんだ? トールさんとメアリーさんが日本語以外喋ってるの見たことないけど、バイリンガルだったりするのか?」
「正しくはトリリンガル。日本語、英語、ドイツ語を話せるの。父方のおじいちゃんがドイツ人でおばあちゃんがアメリカ人だからどっちも話せるの。母方のおじいちゃんおばあちゃんはどっちもアメリカ人だから英語が一番得意なの。日本語には結構苦労したから健斗たちの苦労も理解出来るわ」
ユースの話を聞いてより疑問が浮かんできたので聞いてみた。
「なんでアメリカとドイツのハーフなのに日本語話せるようにしたんだ? トールさんたちも日本に住んでるっぽいし」
「日本って攻略者のレベルが高いの。ダンジョンの平均レベルも高いからお父さんとお母さんが日本で私を育てようってことになったんだって。私が物心ついた頃には日本にいたから二人はもう日本に来て二十年ぐらいでしょうね。二人とも人生の半分は日本で過ごしてるからもう帰れないとか時々言ってるわ」
「へーそういうことだったんだ。なんかこういう話するの初めてだったから新鮮だな」
「生涯を共にしようとしてる人に話せないことなんてないから気になったことがあったらいつでも聞いてね」
なんかユースが男の俺より男前でちょっと自分が情けなく思えてきた。でも、そんな自分じゃユースに相応しくないと思い自分に自信を持てるようになるためにさらに英語の勉強に励んだ。毎日英語を勉強しユースたちと話していくうちにいつの間にか自分の言いたいことはある程度英語で話せるようになった。でも、まだ難しい単語や長文は苦手なため継続していかないとなと決めた。
次回もお楽しみに




