12話 特別講師
また月曜日が来た。中学までならあまり気乗りしなかった月曜日だったが、今となっては学校でどんな事を教えて貰えるのかワクワクで学校が楽しくなっている。ちょっと前まで攻略者になろうと考えていなかったのが嘘のようだ。学びが楽しくなったのはじいちゃんの存在が大きいのは明らかだ。いつも通りみんなと登校して学校に着くと、朝のホームルームで塩田先生が言った。
「今日は一日魔法の特別授業を行う。理由は一つ。光正の卒業生であり、攻略者チャート上位五パーセントに位置しているギルド『烈火の鳳仙花』の代表である間藤冬香さんが特別講師としてお前たちに授業を行ってくれるからだ。魔法使い志望じゃない奴もいるだろうが、今後この授業は絶対に役に立つから積極的に参加するように」
塩田先生が話を終えるとクラスが急に騒がしくなった。勝と春奈も驚きの表情で語り合っていた。すると、クラスを静めるように塩田先生が咳払いをした。みんなまだホームルームが終わっていないと気がつき静かになった。
「テンションが上がるのは十分理解できる。でも、本人の前でこんな失礼な事は絶対しないように。間藤さんも忙しいながらも母校の後輩のためだと時間を作ってくださったんだ。テンションが上がる気持ちを少し抑えて授業という事を念頭に置くように。最初は体育館で話を聞いてそこから校庭に出る。実戦服に着替えておくように。以上」
すると、クラスのみんなが今までに見たこともないスピードで更衣室に向かい、俺は呆気に取られた。すると、勝たちが俺のことを引っ張って連れて行った。教室から出る時ユースさんがつまらなそうな表情をしているのに気がついた。でも、勝たちの引っ張る強さには逆らえずそのまま流れに身を任せた。
実戦服に着替え体育館に向かうと、体育館の前の方は一年生で埋まっており、二階のような所にも一年生がいた。別にそんなに前に行かなくても良いんじゃないかと思っていると勝が言った。
「冬香様のご尊顔をこの目で見ることができるなんて俺たちは幸せ者だな」
「「うんうん!」」
透と春奈が首を縦に振り肯定していた。俺は間藤さんの素顔を知らないためいまいち納得できずにいると、そんな俺を見た春奈がスマホの画面を俺の目の前に突きつけた。そこには黒髪ロングの顔面偏差値八十は余裕で超えている絶世の美女がいた。そこでようやくこの人が間藤さんだということに気がついた。間藤さんはその美貌から世界中で人気を博しており、映画やドラマにも数多く出演している攻略者なのだ。間藤さんの演技は素晴らしく世界中で絶賛されている。さらに、世界トップクラスのギルドの代表であると来たものだ。そんなスターが学校にやってきて魔法を教えてくれると言うのだテンション上がらない方がおかしいだろう。
「冬香様が誰かようやく分かったようね」
「まさかこんなスーパースターが来るなんて信じられないな」
「そうよ! だからみんなこんなに必死なのよ。体育館の周りに冬香様を一目見ようと先輩たちがいるのが分かるでしょ?」
そう言われ体育館の周りを見ていると、小窓から覗いている先輩やアイテムを駆使して大窓から覗き込んでいる先が数多くいた。
「みんな必死だな……」
「分かってる? 健ちゃんの方が少数派なのよ。攻略者を目指す人なら誰でも一度は夢見るレベルにいるのが冬香様なの。そんな人から魔法を教えて貰えるんだよ本当に分かってる?」
春奈が顔を近づけて問いただしてくるので首を全力で縦に振りなんとか分かってもらえた。でも、世界の攻略者の中で上から数えた方が早い人に魔法を教えて貰える機会なんてこれっきりかも知れないから一言一句逃すまいと集中して話を聞くことにした。その時一限目が始まるチャイムが鳴った。みんな間藤さんが来ると分かり、興奮を抑えられない様子だった。
「みなさんおはようございます。烈火の鳳仙花代表間藤冬香です。今日はみなさんに私の得意とする魔法を叩き込んであげるから覚悟しててね!」
「「「フォーーー! ! !」」」
みんな担任の先生に抑えるように言われていただろうに、間藤さんを前にして自制が効かなくなったのかテンションが最高潮に上がったようだ。先生たちが体育館の端で頭を抱えていた。でも、間藤さんは先生たちとは違い笑顔になっていた。
「いいね、いいね! それじゃあ私の魔法について解説していくから、それが終わったら実践と行くからみんな気合い入れててね!」
「「「はい!」」」
間藤さんは俺が思っていたような人ではなく、結構アツい感じの人だった。見た目からしてクール系かと思っていたから衝撃が凄かった。でも、今思えばギルド名も烈火の鳳仙花って言ういかにもクール系ではないので勘違いしていた俺が悪いのは明白だ。その時、体育館のスクリーンに間藤さんが用意した資料が映し出された。
「この資料を使って説明をしていきます。もしメモしたい事とかがあればスマホでメモしちゃってください。それじゃあ始めます。まず、私が使う魔法はどうやって身につけたのかを話していきます。これはみなさんが一年生だから得だと思う人もいれば、酷だと感じる人もいるかも知れません。それは何かと言うと、実戦を何度も何度も、死にそうになっても現実から目を背けずに挑戦し続けたからです。私は今まで何度も死にそうになってきました。でも、私はその悔しさをバネに強くなりました。その結果が今の私です。私は諦めなかった。挫けなかった。だからここまで強くなれた。私みたいになりたいと思っている人もいるかも知れませんが、その道は茨の道であることを肝に銘じてください。そして、その茨の道を進んで来た人をいつしか強くなってます。自分に自信を持てます。もし変わりたいと、強くなりたいと思ってるのなら、どんな辛い道でも逃げ出すことはこの私が許しません。立ち止まってもいいから最後まで進み続けなさい。進み続けたそこはあなたの望んでいる結果が待っているはずです」
いつの間にか騒いでいた生徒たちは真剣に間藤さんの話を聞いていた。そして、間藤さんは次の話を続けた。
「次は私の魔法について話していきます。私の魔法を知ってる人も多いかも知れませんが、私の得意とする魔法は主に火と爆発魔法です。
ここで少し話が逸れるんですが、みなさん一年生で光正に入ってきてほんの数日だから教えたいことがあります。魔法はその人の性格を表していると言われています。名は体を表すと言いますが、ここでは名を魔法に変えたいと思います。そのぐらい魔法は性格や自分自身と密接に関わっています。もちろん例外もありますが、多くの人はこの傾向にあります。ですので、今日はみなさんに自分がどの魔法に向いているのかから始めたいと思っています。
話を戻しまして、私の得意な火と爆発魔法はどのようにして使うのか、威力を上げるのかですが、至って簡単です。とにかくありったけの力を込めて魔法を撃つそれだけです。私は常に全力でやってきた結論がこれです。火と爆発魔法は他の魔法に比べて威力が桁違いに高いです。ですので、その威力が高い魔法にさらにマナを使って威力を上げてモンスターを一撃で壊滅させる。これが一番です。
みなさんの戦い方がどのようなのかは知らないので何も言えませんが、私のように火と爆発魔法を使うのであれば、常に全力で励んでください。そうすれば大抵のモンスターには勝てます。自分より格上の場合は厳しいですが、その時はさらに力を込めて魔法を撃つ。そうしたら勝てます。私もそうやって勝ってきました。もうそろそろ話を聞いているだけは飽きてくると思うので体を動かしに行きましょうか」
「「「はい!」」」
間藤さんの話が終わり俺たちは校庭に出た。間藤さんの話は途中まではかなり良かったのに、最後の方は火力でゴリ押せみたいな感じになっていて間藤さんの性格が表れていた。校庭に集まると間藤さんの烈火の鳳仙花のギルドメンバーなのか周りに数人を連れてやってきた。その人たちはダンボールを持っており何だろうと思っていると、間藤さんが全員に通るような声で言った。
「自分の杖を持っていない生徒は杖を貸し出すので取りに来てください!」
俺と透は自分の杖があるので待っていると、ユースさんも待っているのに気がついた。流石にヨハネス夫婦から杖の一本や二本渡されているだろうなと思っていると、みんなが杖を手に持ち戻ってきた。ようやっと魔法をじいちゃん以外から教えて貰える機会に巡り会えた。この機会を無駄にはしまいと全力で取り組むことにした。
ゆっくりお待ちください




