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忘れられた記憶の断片から力を得れる俺は小出しで成り上がる  作者: 描空
学生編

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11話 じいちゃん

 日曜日、明日は学校がある。特に用事はない。今日は何をしようかと考えていると、机に置いていた忘れられた記憶の断片(アルカディアリベル)に目が止まった。俺はそれを手に持ちじいちゃんに教えてもらったようにアペルタと唱えた。


「健ちゃん!」


「やっほーじいちゃん。遊びに来たよ」


 じいちゃんはとても嬉しそうな表情をしていた。


「そうかそうかゆっくりしていくといい」


「でも、ここって時間進まないんだから修行し得じゃない?」


「そ、そうじゃが……」


 じいちゃんはまた俺がすぐ帰ってしまうと考えているのか寂しそうな表情になった。俺はじいちゃんを安心させるために言った。


「心配しなくても大丈夫だよ。そんなに早く帰ったりしないし、じいちゃんに魔法教えて貰えるんだから頻繁に来るよ」


「そうか! なら良いんじゃ。儂は健ちゃんに会えるだけで嬉しいんじゃから」


 本当のおじいちゃんみたいだなと思っていると、じいちゃんが椅子に腰掛けた。その椅子は木をそのまま椅子の形にしたような椅子だった。俺はどうやってそんな椅子作ったのか気になり聞いた。


「こんな所でどうやって木の椅子作ったの?」


「簡単じゃよ。自然と関わりが深い杖を持っておるからそれでひょいっとやっただけじゃ」


「へー面白い杖だね。俺にも見せてよ」


「ちょっと待っておれよ」


 そう言うとじいちゃんは懐をゴソゴソと漁った。何かがぶつかる音が絶えず聞こえていたためじいちゃんの懐は何でも入る四次元懐なのかななどと思っていると、じいちゃんが目当ての物を見つけたのか懐から出すと、その杖は到底懐に収まっていたとは思えない大きさだった。


「え!? じいちゃんその懐どうなってるの?」


 俺の口は頭より先に動いた。


「ん? あぁこれはそういうアイテムなんじゃ。儂にもどういう原理、魔法なのか何にも分からんから神様の誰かが作った物じゃと思っとる。まぁその神様は今どこにいるのか分からんから確かめようも無いがな」


 俺はじいちゃんがどんな人生を送ってきたのか気になり少し聞くことにした。


「じいちゃんってもしかして凄い人?」


「うーん……まぁここにおる時点で世界から忘れられとるしそこまで凄くはないんじゃと思うぞ」


「なんか悲しいね。でも、俺はじいちゃんの事忘れないから!」


 じいちゃんは何も言わずそっと俺を抱きしめた。俺はじいちゃんを抱き返した。その瞬間、じいちゃんの筋肉に気がついた。俺はじいちゃんと離れ腕やお腹を触った。


「な、何じゃどうしたんじゃ?」


 じいちゃんは俺の行動に戸惑っていたが、俺は顔を見上げて言った。


「じいちゃん筋肉凄いね! 何でこの筋肉量を保ててるの? どんなメニューやってるの? 俺にも教えて!」


 じいちゃんは見た目からして筋肉が削ぎ落とされていると思っていたからその秘訣について知りたく問いただした。じいちゃんは落ち着くように言い話してくれた。


「儂みたいな老耄がこの肉体を保ててるのはアイテムのおかげじゃ。ひょっとしたら健ちゃんも似たようなアイテムを知っておるんじゃないか?」


「それって膂力増強リング?」


「そうじゃ。儂ぐらいになると普通に過ごすのも大変じゃからアイテムの力を借りないとなんじゃ」


「それでも筋肉凄くない? 筋トレとかしてるの?」


「まぁな。そうでもしないと衰えていく一方じゃからな」


 歳をとると大変なんだなと初めて実感した。雑談もこのぐらいにして今日も魔法を学ぼうと話しかけた。


「ね、今日も魔法教えてよ。俺まだまだ成長できるからさ。いつかじいちゃんを超える魔法使いになれるかもよ」


「儂を超えるのは厳しい道のりになるぞ」


「任せてよ。俺頑張るから」


 そこから俺はじいちゃんに魔法を叩き込んでもらった。前は火と水、風魔法だけだったが、今回は土、氷、爆発、治癒魔法など様々な魔法を教えて貰った。でも、魔法を使い始めて一週間も経っていない初心者がそんなにポンポン使えるわけもなく、今日は火と水、風魔法の精度を上げるためにひたすら練習した。隣でじいちゃんが見てくれ、都度コツを教えてくれたり間違っている所を訂正してくれた。そのおかげで前までは魔法を使うのにいちいちマナを杖に必要な分だけ集中させるということに集中しなければいけなかったのが、今では何となくこのぐらいのマナって感じで魔法を発動させることができるようになった。


「やっぱりじいちゃん凄いね! 教えるのも上手いし色んな魔法知ってるし!」


「そ、そんなこと……ありがとうな褒めてくれて」


 結構時間も経ったため少し休憩することにした。と言っても普通に休憩するだけじゃ退屈だということで魔法で遊びながら休憩した。火の玉でジャグリングをしたりブーメランのような形にして遊んだりしていた。すると、それを見ていたじいちゃんも暇なのか立ち上がり言った。


「現代にはテニスという物があるんじゃろ? その火の玉でやってみんか?」


「やろっか!」


 じいちゃんが火魔法でテニスのネットを出現させ、各自でテニスラケットを作った。じいちゃんも準備できたようなので俺からサーブをした。俺たちはテニスのルールなんて分からないからただの娯楽としてやっていた。でも、スポーツというものはやっていくうちにボルテージが上がっていき、いつしか俺たちは真剣にやっていた。最初のうちはまだテニスらしさがあったが、ボルテージが上がりラケットを巨大化して思いっきりスマッシュしたり、じいちゃんは風魔法でボールの軌道を変えたりと超次元テニスと変わった。一点取っては取られてを繰り返していると、最終的にじいちゃんが十点を先に取り俺たちはそこで終わらせた。テニスを終えてすぐにじいちゃんが話しかけてきた。


「さっきのテニスをしてる時何を考えておった?」


「え、特に考えてないけど」


「そうじゃ。魔法もそうやって考えればいいんじゃ。ただ相手に勝ちたい。そうやって魔法を自分の手足のように使えるまで極めるんじゃ。その上で一番いい経験は実戦じゃ。無我夢中で戦い自然と魔法がアイテムの使い方を体が勝手に覚えるんじゃ。じゃが健ちゃんはまだ子供じゃ。そこまでする必要はない。現代は平和になっておる。無理に結果を求める必要はない。ゆっくりその感覚を体に覚えさせればいい」


「分かった。ありがとうじいちゃん」


 そこから俺はマナの事、魔法の事を考えずに魔法を使うようにしてみた。でも、意外とそれは簡単じゃなかった。さっきのテニスの時のように無意識で行えなかった。さっきはゾーンに入っていたから出来たのだろうが、今は平常時なので出来ないのだろう。俺の目標は平常時でもゾーンに入った時のように魔法を使えるようになる事だ。ひとまず目標が明確になりやることが決まった。後はひたすら練習あるのみだ。


「じいちゃん今日はもう戻るよ」


「そうか。またいつでも来い。じいちゃんが待っとるからの」


「うんまたねじいちゃん! キール」


 現実世界の時計を見ると入った時と同じ時間だった。どういう原理でこうなってるのか疑問しかないが、俺のような素人に説明されても理解できないだろうから深く考えないようにした。じいちゃんから教わったことを頭の中で反芻しながらどういう感じだったか振り返っていると、いつの間にか火魔法が出現しており俺は急いで引っ込めた。一瞬焦ったが、今魔法を出現させたのは完璧に無意識であり、少しずつだが、着実に魔法の腕前が上がっているのを実感した。このまま一生懸命に努力すればいつかじいちゃんを超える魔法使いになれると自分に言い聞かせ今日も俺は努力する。

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