117話 トールさんの実力
シクットソル爆発跡地に向かった俺たちは残っている悪魔がいないか辺りを確認した。勝は凍界無別を回収してからこっちに来るようだった。シクットソル爆発跡地は半球状に地面が抉れており威力の高さを物語っていた。ここにあったはずの悪魔たちの家や悪魔の残骸は何一つ残っておらず爽快感すらあった。
「えげつないね……まさかこれほどとは思ってなかったよ」
トールさんの言葉にみんな共感出来るのか小さく頷いていた。これもじいちゃんと龍王のおかげだと少し誇らしいような感情になった。俺が褒められることで二人も間接的に褒めらていると思うと少しは二人の役に立てたかなと思った。そんな時男の声が聞こえてきた。まさか殺し損ねた悪魔がいるのかと俺たちは戦闘体制をとった。
「みんな下がってて」
トールさんの指示に従い俺たちは少し下がった。少しすると声の主が俺たちの前に現れた。その悪魔は身につけていた服の大部分が燃えて無くなっていた。悪魔の肌は火傷の傷は多数見られたが、そこまで重症ではなかった。おそらく勝の凍界無別の範囲外にいて透の空掴の遊び人で捕まえられずシクットソルの爆風だけくらったのだろう。だからか、火傷は腕と足に集中しており服は腰辺りから胸のところまで残っていた。運のいい奴だと思っていると悪魔が話し始めた。
「貴様らかこんなことをやった外道は!」
明らかに怒りをあらわにした悪魔は俺たちの方を見ながら言った。その怒気と迫力に俺たちは一瞬臆した。でも、トールさんは違った。悪魔と俺たちの間に入り悪魔に対して言った。
「私たちは自衛のためにやったまでだ。そして、その指示をしたのは私だ。言いたいことがあるのなら全て私に言え」
「なら言わせてもらうが、何故貴様ら人間はただ静かに暮らしている我ら悪魔を殺すんだ!? 過去何度も我らが同胞は貴様ら人間に殺されている。貴様ら人間は我らを殺してなんとも思わないのか!」
悪魔の言い分はくるものがあった。だが、トールさんは至って冷静に答えた。
「私たち人間にとってモンスターはたとえ知性があったとしても害をなす存在だ。農作物を食い荒らす猪や鹿を放っておく農家がどこにいる? 私たちは至極当たり前のことをしているにすぎない」
トールさんの言葉に悪魔は食いついた。
「我らは知性を持っている対話で解決することもできたであろう! なのに何故こんな非人道的なことをした!」
悪魔の言葉にトールさんは冷たく言い放った。
「お前らモンスターは知性を持っているとは言えその知性は極めて悪性寄りだ。生かしておく意味がない。それに、私たち人間がお前らモンスターにどれほど殺されてきたか分かっているのか? 私たちは自衛のために殺すが、お前らは快楽のため暇つぶしのため弄ぶように殺す。だから、お前らモンスターは人間から嫌われ知性があるお前らでも共存は叶わないのだ。そして、お前らが改心したと言い共存を持ちかけたのにそれすら利用して何人の人が犠牲になったと思ってる! これのどっちが外道だって言うんだ!」
トールさんは話していくうちに語気が強まり感情がこもっていた。何か悲しい過去でもあったのかと思わせるような話し方に思うものがあり黙っていることしか出来ずにいると悪魔が言った。
「それの何が悪いって言うんだ! 弱者を食い物しにして強者が利益を得る。これがこの世の摂理だ! そして、今から貴様らは俺の手によって殺されるんだよ!」
さっきまで被害者面をしていた悪魔は不敵に笑いながら言った。やはりモンスターはモンスター何だと理解させられた。知性はあるとは言え極めて悪性寄りで人間のことなんてこれっぽっちも考えていない。トールさんがあれほど感情をあらわにした理由が分かった。知性を持ってるモンスターは普通のモンスターより厄介で尚且つ残忍。人間の敵でしかない。そんなことを思っていると悪魔が自慢の爪を伸ばしトールさんに襲い掛かろうとした。トールさんはミョルニルを構えていつでも戦える体勢をとった。
「何ビビってるんだ? 悪魔は弱者である人間に立ち向かえないほど弱くなったのか?」
「貴様っ!」
トールさんの煽り文句に悪魔は頭に血が上り一直線に距離を詰めてきた。トールさんはそんな悪魔の攻撃を余裕たっぷりな様子で躱しミョルニルで悪魔の顎を下から押し上げるようにカウンターを入れた。トールさんのパワーで悪魔は空中に飛ばされた。だが、悪魔も一方的にやられている訳ではなかった。悪魔は空中に飛ばされている間に魔法を準備していた。悪魔の独自魔法であろう黒い魔法が見えるとトールさんはミョルニルから悪魔に向かって雷を放った。悪魔の悲痛な叫びがその場に響いた。悪魔は雷にやられ力無く地面に落っこちた。トールさんはその落っこちた悪魔に近寄った。
「ま、待て……見逃して……く」
「案外弱かったな。小出くんのあの魔法から生き残ったんだからそれなりに強いと思ってたんだがな」
悪魔の言葉が終わる前にトールさんはその悪魔の頭をミョルニルで打ち砕いた。なんだか呆気ない勝利に呆然としていると俺たちの後方から女の声がした。
「おい! あんたたちかい、アタシらの同胞をこんな酷い目に遭わしてくれたのは」
俺たちが振り返ると女の悪魔が勝の首に爪を当てながら話していた。一人で凍界無別を取りに行かせるんじゃなかったと後悔した。でも、今は後悔より勝をどう助かるかの方が重要だ。
「何が目的だ」
トールさんが女の悪魔に問いかけた。すると、女の悪魔は勝の首に爪を少し食い込ませながら言った。
「目的? そんなもの無いよ! 今アタシの心の中にあるのは復讐心それだけ! この子を返して欲しければ全員自分の腹裂きな! 攻略者なんだから刃物の一つや二つ持ってるだろ? 早くやりな! それともこの子どうなってもいいのかい?」
俺たちは要求に従うしかないかと思っていると女の悪魔の頭が一瞬にして無くなった。女の悪魔の体は力を失いその場に崩れた。何が起こったのか理解できないでいると透が言った。
「ふー、何とか制御出来た……」
まさか空掴の遊び人で的確に悪魔の頭だけ潰したのかと思っているとトールさんが透に駆け寄り言った。
「助かった! 本当に助かった。ありがとう。ほら、みんなの感謝を言葉で伝えなさい」
俺たちはトールさんに言われるがまま透に感謝を伝えた。勝は自分が死ぬかも知れないという恐怖心と悪魔が透のアイテムによって一瞬にして殺されてしまったことによる感情の起伏により何とも言えない表情をしていた。安堵と困惑、恐怖、感謝この四つ全てが混ざっているような表情だった。その表情を見た透は笑いが込み上げてきたのか必死に笑うのを抑えようとしていたのに全然抑えられていなかった。みんな透が何で笑っているのか分からないでいたが、とりあえずみんな無事で良かったと安堵しあった。
次回もお楽しみに




