116話 三人の力
小休憩を終えた俺たちは悪魔のダンジョンの攻略を再開した。今までは遺骨を回収するという役割がありダンジョンをくまなく探索していたが、ある程度進んだことによってこの辺りにはもう今までのように攻略者の遺骨は無くくまなく探索することはしなくなった。それより悪魔のダンジョンという名前なのに最初の悪魔以来他の悪魔は出てこなかった。そのことを不審に思っているとトールさんたちも同じように思っているようだった。
「こんなに悪魔がいないのはおかしくないか?」
トールさんの問いかけに俺たちは頷いた。だからと言って悪魔たちに自分たちの居場所を晒すような事は出来ずどうしようかと困っていると遠くから子どもの声が聞こえてきた。子どもたちがキャッキャしているような声だったため俺たちはその場で足を止めた。出入り口に悪魔がいたことからこのダンジョンの中に人がいるわけがない。そもそも、ダンジョンに子どもは入れないため子どもの声が聞こえてくるという事自体あり得ないのだ。つまり、悪魔がこのダンジョンの中で繁殖しているというわけだ。
「これまずくないですか?」
「あぁ非常にまずい」
俺がトールさんに問うと、トールさんは今まで見たことがないほど難しい表情をしていた。子どもの声は聞く限り複数人であり自ずと悪魔の両親が複数組いることになる。人数としては一対一をすれば何とかいけるぐらいの人数だろうが、全然それ以上いる可能性は大いにある。そうなれば俺たちと言えども多勢に無勢。トールさんの判断に頼ろうと待っているとトールさんが作戦を話し始めた。
「まず悪魔がどれだけの数いるか把握するから、ユースたちは後方で待機。戻ってきて倒せそうなら全員で全力で叩く。でも、悪魔の数が圧倒的に多い場合もう一度作戦を立て直す」
トールさんの作戦を聞いて俺の独自魔法ヌラ・レフラリフレクティブが使えるのではないかと思った。俺の独自魔法は光学迷彩のように相手からは見えないが俺たちからは見える。奇襲にも使えるし偵察にも使える。今なら最大限効果を発揮する。そう思いトールさんたちを呼び止めた。
「待ってください。俺の独自魔法なら悪魔たちにバレずに近づけます」
「本当か!?」
「はい。俺の独自魔法ヌラ・レフラリフレクティブは光学迷彩みたいな感じでこっちから視認出来ますが、悪魔たちからはバレません。悪魔たちの数が少なければそのまま奇襲出来ますし、多ければ後退して作戦を立て直すのも安全に行えます」
「……分かった。それで行こう」
トールさんたちは一瞬本当かどうか疑っていたが、俺が嘘をつくわけがないと信じてくれた。偵察に行くメンバーは俺とトールさん、拓郎さんとなった。俺はヌラ・レフラリフレクティブを発動させゆっくりと子どもたちの声が聞こえてくる方に歩みを進めた。幸いダンジョンの中は暗く視認性は低くなっているため俺の独自魔法が看破されることはないだろう。しばらく進んでいると子どもの悪魔たちが鬼ごっこをしていたりするのが見えてきた。そして、その奥にはかなり広い空間が広がっており悪魔たちの住居と思しき建物が百まではいかないが数十棟見えた。
「これヤバくないですか?」
「ヤバいな……私が全力でやっても一網打尽には出来ないかもしれない」
「俺たちも頑張りますけどちょっとヤバいかもっす」
俺たちはひとまずみんなに状況を伝えるために戻った。みんなは子どもの悪魔たちよりかなり後方に待機していた。魔法を解除するとトールさんが端的に状況を伝えた。すると、メアリーさん含めユースたちは全員どうするのかと固まってしまった。トールさんが本気を出せばいけるんじゃないかと勝たちは希望に満ちた目で問いかけていた。だが、トールさんは何も言わずただ首を横に振った。トールさんのアイテムの性能はどれほどのものなのか分からないが、範囲攻撃を得意とはしないのだろう。となればじいちゃんのシクットソルが活躍しそうだが、ダンジョン内への影響はどのぐらい出るのか、天井が崩落してきたりしないか心配だった。そんなことを考えているとトールさんが作戦を言った。
「正直言って厳しいが、これ以上増える前に全滅させたいと思う。この数の悪魔がダンジョンから出てきて人里を破壊し尽くす可能性は大いにある。その場合被害を受けるのは一般人の方だけでは済まない。私たち攻略者の役割はそういった被害を未然に防ぐことでもある。作戦としてはなるべく高火力広範囲の魔法で悪魔たちを攻撃し残党を各個撃破する。それに伴い有効なアイテム魔法が使えるなら教えてくれ」
「俺が背中に担いでるこのアイテムなら悪魔どもを一度に凍らせれます」
勝は自分の凍界無別の性能を語るのではなく結果だけを語ってしまいトールさんは少し困惑していた。トールさんは追加で説明を求め勝はしっかりと凍界無別の性能を話した。
「それなら足止めは出来るな。でも、だけじゃ足りないな。凍らせた悪魔たちを一体ずつ破壊するのでは時間も労力もかかる。それに相川くんが凍らせておく時間にも限りがあるだろう」
「それなら僕の空掴の遊び人が使えるかも知れません」
透はアイテムの性能を説明するとトールさんは次第にいけるかも知れないと期待を抱いてきたようで表情が明るくなった。これなら勝と透だけでいけるかも知れないなと思っているとじいちゃんの声が聞こえてきた。
(勿体ぶらんでいいからシクットソルを使うんじゃ。日の目を浴びんと思っておった儂の魔法が健ちゃんの役に立つだけでも嬉しいんじゃ。遠慮せず使ってくれ)
じいちゃんがそう言ってくれるのならと俺はトールさんに進言した。
「トールさん俺が悪魔たちにトドメを指します」
「出来るのか?」
「はい。一部の悪魔は殺し損ねてしまうかも知れませんし、ダンジョン内に多大な影響も出るでしょうが確実に九割以上の悪魔を殺せます」
「なら三人に任せる。私たちはサポートに回るが何をすればいい?」
勝は背中に担いでいた凍界無別を二つに分け片方をトーフさんに渡して言った。
「これを悪魔たちが住んでいる場所の一番端の地面に刺してきてください。拓郎さんはもう一方をお願いします」
「その間に諸々の準備は頼んだよ」
トールさんと拓郎さんが凍界無別を悪魔たちが住んでいる場所に刺しに行ってる間、透は空掴の遊び人の使用感を確かめていた。俺はその間にマナを何乗にも上乗せした。悪魔たちが住んでいる場所光正の土地面積と同じぐらい広く生半可なマナ量では絶対に仕留めきれない。だからとは言っても馬鹿みたいにマナ量を増やせばいいという問題でもない。マナ量が多すぎればダンジョンが崩壊する可能性もあるのに少なすぎれば悪魔たちが多数残って不利な状況になりかねない。常人ならそんなマナ操作無理だろうが、俺なら出来る。じいちゃんから龍王からどれだけ魔法を教えてもらったと思ってるんだ。こんな時に失敗するようじゃ二人に顔向けできない。そんな思いを鎮めるように深呼吸をして落ち着かせ今のマナ量で足りるのかどうかしっかりと見極めた。そんなことをしているとトールさんと拓郎さんが戻ってきた。
「いけるか?」
その言葉に俺たちは頷いた。悪魔の子どもたちがさっきまでいた場所まで近づき作戦を実行に移した。勝が凍界無別を発動させると同時に空間の中央にシクットソルを出現させた。悪魔たちは凍ったこととシクットソルの出現に感情がごちゃごちゃになりその場はカオスそのものだった。そして、透が悪魔たち諸共空掴の遊び人で空間ごと掴み悪魔たちをシクットソルの真下に集めた。俺はそのことを確認してシクットソルを悪魔たちにぶつけた。俺はシクットソルが破裂する前に自分たちの前にプライシディウムを展開した。その後すぐにシクットソルが破裂というか爆発しとてつもない衝撃波が俺たちを襲った。プライシディウムで軽減していたのにこれほどとはと思っているとトールさん含め俺以外の全員がシクットソルのとてつもない高火力に唖然としていた。俺も大体これぐらいにはなるだろうなと思っていたが、想像以上で驚いた。
「悪魔が残ってないか確認しましょ」
俺は唖然としていたみんなを動かすためにもそう声をかけた。みんな行動までワンテンポ遅れるぐらい衝撃的だったんだなと少し笑えてきた。でも、悪魔が残っている可能性は十分にあるため気持ちを切り替えてシクットソルが爆発した跡地に向かった。
次回もお楽しみに




