表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカディアリベル  作者: 描空


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/132

115話 犠牲者

 悪魔は俺たちの前で余裕たっぷりな感じに首の骨をボキボキと鳴らし、いつでも戦えるぞと言わんばかりの態度で仁王立ちしていた。


「この怒りをぶつけられるのはいいが、さすがに多勢に無勢だな。おい、お前らの中で一番強い奴は誰だ? 俺様とタイマンはれよ。対等な相手と戦ってこそ殺し合いってのは楽しめるってもんだ」


 悪魔がそう言うとトールさんは悪魔を観察するように少しの間眺めた。悪魔は何をしているのか、誰が一番強い奴なのか分からずイライラし始めていた。右足は小刻みに震え足の隙間から見えるスペードのような形をした尻尾は左右にぶんぶんと揺れていた。トールさんに対して早く何か話してくれと、ようやくトールさんが話し始めた。


「お前ぐらいの実力ならユースがちょうどいいぐらいだろう。と言うわけでユースあの悪魔の相手をしなさい」


「は、はい」


 ユース含め俺たちは驚いたが、メアリーさんたちはそこまで驚いておらず野球選手の選球眼のように強さを見極められているのかなと思った。俺ではそんなところまでは分からず圧倒的に経験不足なんだろうなと思った。


「おいおいこんなガキが俺様と対等だって言いてぇのか? そんな舐めてるとこのガキ殺しちまうぞ」


「構わない。ユースはお前より強いから負けるはずがない。それに、まともに強くなろうと努力していない奴に努力している奴が勝てるわけがないだろ?」


「ほぉ言うじゃねぇか。後悔してももうおせぇからな!」


 そう言う悪魔は右手を大きく広げると黒い鋭利な爪が姿を現した。悪魔は足に力を入れてユースに向かって肉薄してきた。自慢の爪でユースを攻撃しようとした悪魔だったが、ユースは悪魔の爪を雷王の剣でへし折った。悪魔は爪を折られたことで少し下がったが、すぐに新たな爪を伸ばし攻撃した。だが、一度防がれた攻撃をもう一度しても当たるわけもなく、今度は悪魔の爪を綺麗に斬ってみせた。


「ちぇ、めんどくせぇな。近接がダメなら魔法を使うまでだ」


 そう言うと悪魔は両手をユースに向かって突き出した。その両手には禍々しい黒い魔法が形成され始めていた。ユースはこの得体の知れない魔法に対してどう出るのかと見ていると、いつの間にかユースは雷王の剣で体に雷を纏っていた。その瞬間ユースは悪魔との距離を一気に詰めて悪魔の両腕を見事に斬り落とした。


「うあああ! 俺様の腕がぁ! 貴様よくも——」


 ユースはそう言う悪魔の首を斬り落とした。結構圧勝だったユースはまあこれぐらいかと言いたげな顔をしていた。すると、トールさんが言った。


「あいつもうちょっと強いと思ってたけど見誤っちゃったか」


「威勢だけでしたね」


 拓郎さんは予想外だったのか残念そうな表情で言った。ベテラン攻略者とはいえ相手は生きているモンスターだし、知性を持っているのだから相手の強さは読めなくて当たり前だと思った。でも、相手がどのぐらいのレベルなのかは把握出来るようにならないとなと感じた。


「競技会で戦った奴の方がまだ強かった。あいつ今まで新米攻略者殺してたから浮かれてたんじゃない?」


「そうかも知れないな。それなら攻略者の遺骨があるか調べるぞ。ご遺族の方に遺骨だけでも返してあげよう」


 そこから俺たちは出入り口近くをくまなく探した。その結果、十数名の遺骨が見つかった。どの遺骨も俺たちと同じぐらいの背丈で高校卒業して攻略者になったばかりの新米攻略者だったのだろう。遺骨を見つけられたのは良かったが、なぜ俺たちよりも前に攻略に来た人たちが遺骨を回収しなかったのか不思議に思いトールさんに聞いた。


「あのトールさん、ここが許可制になってから以降今まで俺たち以外に来た攻略者っていなかったんですか?」


「実は私たちが遺骨の回収も含めて初めて許可が降りたんだ。今までご遺族の方が何度も許可を得ようとしていたが、頑なに許可が降りなかったそうだ。その話を小耳に挟んでね、私たちがその役を代わりに果たそうと思ったんだ。それに、みんなの成長にも繋がるからね。というわけで攻略者協会の人たちに遺骨が見つかったことを連絡するからみんなは遺骨を傷つけないようにダンジョンの外に運び出して」


 俺たちはトールさんの指示に従い遺骨を傷つけないようにダンジョンの外に運び出した。トールさんが連絡してからしばらくすると攻略者協会の人たちがやってきた。その人たちは遺骨を一つ一つ丁寧に遺骨袋に入れて持ち運んだ。全ての遺骨を持ち出すと協会の人たちは俺たちに感謝を述べ去って行った。


「これであの人たちは報われますかね?」


「きっとね」


 トールさんの表情は暗く攻略者という仕事がどれだけ過酷で危険なのかを物語っているようだった。犠牲者の方たちには悪いが俺たちもああはならないように反面教師にしないと次は我が身だと思った。そこから俺たちはゆっくりと悪魔がどこかに隠れていないかチェックしながら攻略を続けた。これには他の犠牲者の遺骨が無いか見逃さないためにも行っており、時々体の一部だったであろう遺骨が見つかった。その遺骨は出入り口近くに置いておき攻略が終わったらトールさんたちが協会に持って行くことになった。


 しばらく他の犠牲者の遺骨が無いか、悪魔がいないか確認した俺たちは少し早いが小休憩を取ることにした。腕時計で時間を見てみるともう夕方となっておりそんなに時間経ったんだと驚いた。メアリーさんたちがご飯を作ってくれている間俺たちは何か手伝えないかと聞いたが、忙しくないからと遊んでいるように言われた。俺たちはその間何をしていようかと話しているとトールさんが話しかけてきた。


「小出くん、そう言えばさっきの悪魔と戦う前に話してた龍の稽古はなぜ受けたんだ? かなり厳しい稽古だっただろうになぜ逃げ出さなかったんだ?」


「なぜって自分から強くなるために稽古をつけてもらったからですよ。それに、自分より強いモンスターに出会したら攻撃を受けてぶっ飛ばされてから治癒魔法で治して逃げる方が距離取れるからいいと思ったんです。まぁ自分から稽古つけてくださいってお願いしてすぐに逃げ出すようじゃ格好つきませんから」


「君をそこまでさせる原動力はいったい何なんだ?」


 トールさんは少し引いているような感じで聞いてきた。俺はそんなに変なことを言ったかなと思ったが本心で答えた。


「みんなを守るためです。俺は色んな頼れる人がいますからその分みんなより強くなってみんなを守れるぐらい強くなるためです。俺が強くなればみんなにも色々教えられてみんなも強くなれるんで」


 みんなにじいちゃんのことや龍王の事は言ってもいいのか分からず何とか上手くまとめたつもりだったが、ユースたちは不満というか不服そうな顔をしていた。


「ご飯出来たよ」


 メアリーさんが俺たちの何とも言えない空気を断ち切ってくれ俺はご飯を食べることにした。ご飯を食べてから少しするとユースが話しかけてきた。


「一人で抱え込まなくていいわよ。健斗には私たちがついてるんだから」


「ありがとう」


 そう言うユースの表情は優しく慈愛に満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ