114話 悪魔のダンジョン②
今日はいよいよ悪魔のダンジョンに行く当日となった。早起きをし母さんが作ってくれた栄養豊富な朝ご飯を食べ勝たちとユースの迎えが来るのを待っていた。俺と透は悪魔に対する恐怖心というか心配な気持ちがあったが、勝と春奈は競技会で戦った悪魔が弱かったことからそこまで心配はしていなかった。俺と透が足元掬われないようにねと注意をし少しすると見慣れた車が俺たちの前に止まった。
「忘れ物ないね? それじゃあ行くよ」
ユースの指示に従い俺たちは車に乗り込んだ。忘れ物は再三チェックしたので問題なし。そんなことより俺たちは悪魔のダンジョンがどの程度の強さの悪魔がいるのか、どんな魔法を使ってくるのかなど強さをずっと気にしていた。ユースに問いかけたりもして何となくの強さは把握出来てはいるが、実際に相対してみないと分からないところが大きいので早く戦いたいと思っていた。ユースの家に着き車を降りるとトールさんたちが目の前にいた。
「「「お久しぶりです!」」」
「みんな久しぶりだな!」
俺たちは元気に挨拶をした。トールさんはにこやかに笑いながら返してくれた。俺たちはトールさんの指示に従い悪魔のダンジョンに向かうためバンに乗り込んだ。俺たちは五人とトールさんメアリーさん拓郎さん未来さんそして運転手の人含め五人の総勢十人で悪魔のダンジョンに向かった。
「トールさん、悪魔ってどれぐらい強いんですか?」
俺がトールさんに聞くとトールさん少し悩んでから答えた。
「悪魔は個体にもよるからピンキリなんだけど、大体弱い個体はミノタウロスよりも弱くて強い個体はワイバーンにも匹敵するぐらいかな。まぁ健斗くんの実力なら余裕だよ。ワイバーン倒しちゃうぐらいだし」
「そ、そうですか?」
トールさんに褒められて嬉しくなった俺はテンションが上がった。すると、勝たちはずるいと言わんばかりの顔で見てきた。
「トールさん、俺たちは一年でめっちゃ強くなりましたからビックリしないでくださいよ」
勝がそう言うとトールさんは嬉しそうな表情で答えた。
「みんながどれだけ強くなってるのかは競技会の映像も見たしユースから逐一聞いてるから大丈夫だよ。それに、星座級アイテムのことも聞いてるから期待してるよ」
トールさんの言葉に春奈は少ししょんぼりとしていた。春奈はこの中で唯一星座級のアイテムを持っておらず、劣等感や自分だけ置いていかれてるというような感覚になったのだろう。そんな春奈を放って置けないと思ったが、どんな言葉をかけてあげるのが正解なのか分からずただ隣で黙っていた。すると、春奈が小さい声で言った。
「私も負けてられない」
そう言う春奈の顔はやる気に満ち溢れているようだった。揺られること二時間弱ようやく悪魔のダンジョンについたようだった。着いた場所は山の麓にある駐車場でここから歩いていくようだった。風魔法で行けばいいと思ったが、荷物が多いから安定重視なのだと思うことにした。しばらく山道を歩き山の中腹ぐらいまで来ると人一人が通れるぐらいの小さな洞穴が山肌にあった。しゃがんで通らないといけないぐらい小さいな洞穴にトールさんが入った。まさかここが入り口なのかと驚いているとみんな次々に入り俺も流れ作業のようにその洞穴に入った。すると、その中は案外広い空間で少し先まで続いているようだった。少し下り道になっているそこを歩いているとすぐにコンクリートで出来た門のようなものが現れた。そして、その門の右側にここには似つかない現代的なロック装置があった。まさかと思っているとトールさんは攻略者カードを取り出しその機械にかざした。ピピという機械音がすると門がゆっくりと開いた。
「行くよ」
さも当然のようにしているトールさんたちに比べてユースを除く俺たち四人は呆然としていた。今までこんな現代的なダンジョンの出入り口は無かった。今までのダンジョンはその必要が無かったということだろう。そして、許可された攻略者しか入れないということは悪魔のダンジョンがどれほど犠牲者が多く危険なダンジョンなのかの裏付けにもなっている。そんなダンジョンに今から行くのだと思うと武者震いが止まらなかった。
「武者震いか?」
「バレちゃいました? 実はどんな悪魔が来るのかワクワクしてるんです」
一年と半年ぶりぐらいにあった拓郎さんは前と同じように気さくに話しかけてくれた。続いて拓郎さんは冗談っぽく言った。
「もう俺より強くなってたりして?」
「自慢じゃありませんが多分強くなってると思います」
「マジで?」
拓郎さんはさっきと打って変わり真剣な眼差しで問うてきたので俺は至って冷静に答えた。
「はい。結構死に物狂いで稽古してたんで」
俺の言葉に拓郎さんは驚いていた。そして、続けて質問してきた。
「どんなことしてたんだ?」
「魔法は自分が使える魔法の最大値を作っては消してを何回も何回も繰り返して、体術という名の治癒魔法の稽古はずーっと攻撃を腕で防ぎながら治し続けるっていうのを繰り返し続けて痛みを消せるようにまでなりました。応用ってより基礎を伸ばした感じの稽古って言えばいいのかな? まぁそんな感じでしたよ」
俺の話が聞こえていたのかその場にいた人全員が俺の方を見て固まっていた。俺は何かまずいことを言ったかと焦った。でも、龍王の名前は出していないし、シクットソルも出していない。治癒魔法が使えるのはユースたちは知っているしと頭をフル回転させているとトールさんが口を開いた。
「そんな稽古を行ったのはどこの誰かな?」
「……え?」
「私は君のことを思って聞いてるんだ。そんな拷問紛いの稽古を行ったのはどこの誰だ?」
トールさんは表情に出していなかったが、確実に怒っていた。でも、龍王のことを言ってもいいのか分からずどうしようかと困っているとユースが言った。
「健斗は大丈夫だったの? そんな辛い稽古逃げちゃえば良かったのに……」
ユースの言葉に勝たちも同意見だったようで本当にどうしようか困っていると武帝の声が聞こえてきた。
(あの龍のことぐらい話しても大丈夫だろ。こいつらには一応話してるんだから)
武帝の言葉にそうだよなと思い切って話してみることにした。
「実はこの前俺が行方不明になってた時の龍に稽古をつけてもらってたんです。でも、これは俺がお願いしたことですから」
「「「はぁ!?」」」
俺の行動にみんな次々と何を考えているんだと気は確かかと罵声とは言えないが、貶すような言葉でもなく心配からくる言葉を浴びせてきた。嬉しいような悲しいような感情に陥った俺はどんな反応をすればいいのか分からず困っているとダンジョンの奥から男の声が聞こえてきた。
「貴様らうるさいぞ人が気持ち良く寝ていたというのに。騒ぐなら他所でやってくれ」
そう言う男は普通の人間のような見た目だったが、額に日本の山羊のような角が生えていた。俺たちは瞬時に悪魔だと理解した。すると、俺たちの行動を不審に思ったのか悪魔は目を擦り俺たちを凝視した。
「何だお前たち同族じゃねぇのか。それならこの怒りをぶつけられるじゃねぇか!」
悪魔は不敵な笑みを浮かべそう言った。
次回もお楽しみに




