112話 保護者説明会
俺たちが生徒会役員になってから一週間が経った。その間に俺たちは体育祭と文化祭を開催するために保護者説明会をする手筈と説明する文章、くるであろう質問に対する答え、一家庭が負担する金額、生徒たちが体育祭と文化祭をしたいかのアンケートなど必要だと思われるものは全て用意した。塩田先生からもこれ以上必要なものはないと言われた。そんな保護者説明会は今週末に行われる。それまで俺たちは他に必要なものはないか、保護者側に立った際説明不足に感じることはないかなど粗がないか徹底的に探した。クラスの何人かにデモンストレーションに付き合ってもらい質問もしてもらった。大体想定通りの質問がきたので俺たちの考えは間違っていないと安心できた。デモンストレーションを終えるとクラスメイトから絶対説得してよと強く言われた。俺たちは力強く返事をした。みんなが思っているのと同じぐらい俺たちの体育祭と文化祭に対する熱意が自然とそうさせた。
そんなことをしていると保護者説明会前日になった。俺たちは保護者説明会で使う教室と机、イスの準備などに追われた。もちろん塩田先生も手伝ってくれたのでそこまで大変ではなかったが、いよいよ明日だと思うと少し緊張してきた。PTA会長や他の保護者の前で説明するのは会長であるユースだが、緊張しないというのは無理があった。龍王の稽古で身体的精神的に鍛えられたと思っていたが、緊張はするんだなと思った。でも、そこまでガチガチになるほど緊張しているのではなく適度な緊張だったからこのぐらいの緊張はした方がコンディションが良くなると思い気にしないことにした。
帰り道明日はどうなるかなと話していると透のお母さんとバッタリ出会した。透のお母さんと会うのは久しぶりで中学の文化祭ぶりだった。透をそのまま大人の女性にしたと言っても過言ではないほどそっくりな顔に本当にそっくりだよなと思っていると透のお母さんが言った。
「みんな久しぶりね。透から聞いたけど明日体育祭と文化祭をやるための保護者説明会するんですってね。大変だと思うけど頑張って。私と勝くんのお母さんは
一応PTA役員だから明日保護者説明会に参加するけど、気にしないでね。何なら私たち体育祭と文化祭やることに賛成だから味方してあげられるわよ」
「母さんそんなこと言わないで大丈夫だから。僕たちのこと信用してるでしょ? ちゃんと上手く出来るから」
透は少し恥ずかしそうにしながら言った。
「でも、心配だから」
「そうかも知れないけど、僕たちが色々準備してきたの知ってるでしょ。毎日遅くまで学校に残って頑張ったんだから大丈夫だって」
透の説得で透のお母さんは少し安心したような表情になった。透はそのままお母さんを連れて行くように一緒に帰って行った。ここにユースがいれば挨拶出来たんだけどなと思ったが、明日保護者説明会に来るのならその時にも出来るかと思い俺たちもそのまま何事もなく家に帰った。家に着くと母さんが明日の保護者説明会を心配してくれたが、大丈夫だと言って安心させた。母さんは俺を励ますつもりでその日の晩ご飯を俺の好きな唐揚げにしてくれた。これで明日の説明会頑張れるぞといい栄養になった。
いよいよ保護者説明会当日になった。とは言っても説明会は放課後であるためまだしばらく時間がある。俺たちは休みの時間を使って他にもきそうな質問や説明不足なところはないかと探した。でも、何も思い浮かばず保護者説明会の時間までもうすぐとなった。俺たちは説明会を行う教室で待っていてると透のお母さんと勝のお母さんが一番に教室に入ってきた。すると、二人はユースに向かってきて言った。
「あなたがユースさんよね。私は透の母の澄子って言うの。いつも息子たちと仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしくね」
「私は勝の母の雅子。私からもよろしくね。健闘を祈ってるわ」
「ありがとうございます。精一杯頑張ります」
透のお母さんと勝のお母さんはそう言うと後ろの方の席へと座った。しばらくすると他の保護者たちも続々と教室に集まってきた。そんな中一人だけ明らかにオーラというか雰囲気が違う女性が現れた。高級そうな服を見に纏っているが、それ以上に立ち振る舞いの上品さと言うか身から溢れ出るカリスマ性のようなものがあった。見るからに会長を進んでやってそうなその人は予想通り会長の席に着いた。もう少しすると最後の保護者と共に塩田先生が教室の扉を閉めた。いよいよ保護者説明会が始まる。そう思っているとユースが話し始めた。
「本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。時間も限られていますので早速本題に移りたいと思います。本日お集まりいただいたのは体育祭と文化祭を開催するためです。私たちは来年度三年生になり高校生活最後の年です。ですが、私たちはこのまま卒業するのは勿体無いと思い光正を変えるべく生徒会に立候補し今この場にいます。
まず最初は何故体育祭と文化祭を開催したいかについて話させていただきます。光正は攻略校であることから普通科の高校に比べてやらなくてはいけないことが多く、その分行事も少ない傾向にあります。ですが、私たちは高校生です。修学旅行以外にも楽しい思い出が欲しいのです。光正を卒業し攻略者となる生徒は大勢います。その生徒たちにもっとより多くの楽しい思い出を残してあげたいと思い体育祭、文化祭を開催したいと考えました。
そこで私たち生徒会は全校生徒にアンケートを取りました。これはもう卒業を控えている三年生の先輩方にもアンケートを行いました。一、二年生には体育祭、文化祭を開催して欲しいかして欲しくないかのアンケートを。三年生には体育祭、文化祭があって欲しかったか否かのアンケートを。その結果、九割近い生徒が体育祭、文化祭に肯定的な意見でした。そこから私たちは来年度からの保護者負担額がどの程度増えるのか試算してみました。その結果、一家庭が破綻する額は千円にも満たないことが分かりました。もちろん保護者の皆様からしたら金額は一円でも少ない方がいいのは分かっていますが、自分の子どもたちのためだと思ってどうかよろしくお願い致します」
そこから質疑応答の時間となった。体育祭の費用と文化祭の費用の正確な金額やいつ行うのかなど大体予想通りの質問に答えたが、会長は口を開こうとせず少し不審に思った。粗方質問が出尽くしたところで会長が口を開いた。
「あなたたちの学校行事に対する熱意は確かに伝わりました。ですが、体育祭および文化祭を行うことで授業と先生方にかかる負担はかなりのものだと思います。その点は大丈夫ですか塩田先生」
まさかの塩田先生に対する質問だとは思っておらず少し驚いた。
「はい問題ありません。教員共々その点については会議で話し合い合意に至っております」
「それでは先輩方はどう思っていらっしゃるかはどうですか?」
想定外の質問に答えられないでいると塩田先生が金田先輩に電話をかけるように言った。俺は金田先輩に電話をかけた。すると、すぐに金田先輩が電話に出た。俺は簡単に事情を説明して金田先輩に質問に答えてもらった。スマホをスピーカー状態にしてその場にいる人たちに聞こえるようにした。
「金田先輩は俺たち後輩が体育祭と文化祭をやるってなったらどう思いますか?」
「全然いいと思うぞ。楽しそうだし。俺からしても光正は行事少なかったなって思うし」
「とのことです。金田先輩ありがとうございます」
金田先輩との電話を切ると会長が続けた。
「それでは最後に、体育祭および文化祭を開催する以上光正の名を汚さないようにしないといけません。様々な対策に追われると思いますが、あなたたちはそれでもいいのですね?」
「「「はい」」」
会長の質問に俺たちは真っ直ぐ目を見て答えた。
「分かりました。体育祭と文化祭を開催することを許可しましょう」
俺たちは喜びが態度に出そうになったが、ギリギリで耐えて保護者説明会を終えた。保護者たちが帰宅すると俺たちは全力で喜んだ。光正の歴史を変えたんだと思うと感慨深いものがあった。塩田先生が保護者たちを見送り戻ってくると共に喜びを分かち合ってくれた。これで最高の思い出が出来ると考えただけでワクワクが止まらなかった。後日俺たちは体育祭および文化祭が保護者説明会で賛成多数で可決されたことを学校中に知らしめた。全校生徒から俺たちに対する感謝の言葉はしばらくとどまるところを知らなかった。
次回もお楽しみに




