110話 新たな試み
龍王の稽古からしばらく時が経ち学校が冬休みに入ろうとしていた。孤立のダンジョンが終わってからは普段の授業以外特段イベントも無ければ面白そうな行事も無かった。文化祭でもあればいいのになと思っているとユースが話し始めた。
「そう言えば冬休み終わったらすぐ生徒会選挙だけど、みんな立候補する気ない? 私ちょっとやってみたいんだよね」
生徒会なんて全然考えてなかったし先生の話も流してたから俺はやるつもりなんて無かったが、ユースみたいに有名人で多忙な人がやれるのかなと思っていると透が言った。
「僕はやってもいいよ。生徒会なんてやったことないけど、高校生活最後だし」
まさか透が一番に名乗りを上げるとは思ってなく少し驚いた。でも、勝と春奈はそこまで積極的じゃないだろうなと思っていると、二人とも嫌だとは思っていなさそうな顔をしていた。まさかやることになるんじゃないよなと思っているとユースが言った。
「二人はどう? 透が合うように高校生活最後なんだし、光正卒業したら大学か攻略者だって考えたらやってた方が良くない?」
ユースの言葉に二人は少し悩んでいたが、やっても良さそうな顔をしていた。この流れだと俺も誘われるやつじゃんと思っていると、勝と春奈が俺の方を見てきた。俺がやるなら二人もやるんだろうなと思うと責任重大な気もした。でも、光正を卒業したら攻略者になるか大学に進学するかの二択だから高校生らしいことを出来るのは来年が最後だ。そう考えたらやってもいいかなと思えてきた。
「健斗はどう?」
「やってもいいかな」
「やった! それじゃあ五人で誰が何をやるか決めよ。会長と副会長、会計と書記があるけどやりたいのある?」
ユースがそう聞くと春奈と透は会計と書記に立候補して勝は副会長に立候補した。俺は会長って感じじゃないから副会長を選んだ。したがって、ユースが会長をやることになった。ユースが生徒会立候補用紙なるものに俺たちの名前を記入し塩田先生に提出しに行った。職員室から帰ってきたユースがこれからどうなるのか説明してくれた。
「冬休み明けに生徒会選挙があるからそこでスピーチして生徒の過半数が賛成なら生徒会になれるんだって。だから、冬休みの間にどんなスピーチするのか内容考えておくようにだって」
「それじゃあしばらくやることはないんだな」
「うん。ちゃんとスピーチの内容は書いてね。冬休み明けに先生たちがスピーチの原稿チェックしてくれるから」
「オッケー」
そんな感じで俺たちの生徒会立候補が決まった。そこから俺たちは生徒会になったら何をやるのか話し合った。
「生徒会になって何やるんだ?」
「分からないけど、攻略授業で行くダンジョン決めたり? まぁ何やるのかまでは知らないから何とも言えないわ」
その時ふと思った。生徒会なら学校行事を開催することが出来るのではと。それなら今まで無かった体育祭や文化祭も行える。攻略校だからと無いと諦めるのではなく、無いなら新しく作ればいい。高校生の間しか出来ないことは山ほどある。そんな機会をみすみす見逃すわけにはいかない。
「みんなでさ体育祭とか文化祭やろうよ。生徒会ならその権限あるだろ? 今まで無いものだって諦めてたけど俺たちの代で変えてやろう。攻略校でも普通の高校生らしい行事くらいしたいってみんな思ってる。俺たちが変えるんだ」
俺の言葉にみんな共感してくれた。そこから俺たちは冬休みが始まるまでの短い期間でビラを作り公約を全校生徒に伝えるために動いた。先生たちにも許可を取り各クラスにも掲示してもらった。ビラを貼り始めて少し経った頃全校生徒が俺たちの公約を見て嬉しそうに話をしていた。俺たちも廊下で誰かとすれ違うたびに応援されることが日常となってきた。冬休みの間にこの熱量がどれだけ下がるか分からない部分が大きいので、冬休み明けの立候補スピーチが肝心だと分かっていた。だから、今のうちから内容を考えておいた。冬休みの間は軽微な調整を行うだけでいいぐらいまで内容を書き起こし後はスピーチの練習に時間を充てることにした。
そんなことをしていると冬休みに入った。俺は副会長ながらも手を抜くようなことは一切せずスピーチの練習やどんな話し方がいいのか調べた。冬休みはあっという間に終わってしまった。冬休み明け登校初日俺たちは生徒会のスピーチ緊張するねなど話していた。学校に着くと俺たちは塩田先生にスピーチの内容を確認してもらった。俺たち全員直すところはないと言われた。スピーチをするまで二日間あるので俺たちはそれまでの間に互いにいいところと悪いところを確認するようにスピーチを見せ合った。
「いい感じだね。これならみんな過半数割れすることは無いと思うから自信持っていこう」
ユースの言葉に俺たちはスピーチまで自信を持ってもっとスピーチを良くするために練習を重ねた。いよいよ生徒会選挙当日となった。全校生徒が体育館に集められ俺たちは壇上に登った。全校生徒の前というのはとても緊張したが、ユースは会長に立候補しているからか堂々とした態度を全校生徒に見せスピーチを始めた。
「みなさんはじめまして。私はユース・ヨハネスと申します。私が生徒会長になった暁には、体育祭と文化祭を開催致します。今まで攻略校だからと諦めていた私たちですが、来年度からは違います。もちろん体育祭と文化祭を開催する分他のところに皺寄せがあるのは事実ですが、そんなこと感じさせないほど光正をより良くするため尽力致しますのでどうかよろしくお願いします」
ユースのスピーチが終わると体育館は割れんばかりの拍手が鳴り響いた。次は勝のスピーチだ。
「私は相川勝と申します。私が生徒会副会長になりましたら、会長となるユースさんを支えてまいりたいと考えております。そして、体育祭文化祭を最高のイベントに出来るよう働いてまいりますので応援のほどよろしくお願いします!」
勝のスピーチも終わり拍手が体育館にこだました。次は俺の番だ。
「はじめまして。小出健斗と申します。私が生徒会副会長に就任しましたら会長のユースさんを支えるとの同時に生徒のみなさんからの意見を聞けるような副会長になりたいと考えております。会長に意見を言うのは少し気が引けると思いますので、副会長の私か相川に遠慮なく申してください。よろしくお願いします」
俺のスピーチも終わり次は透の番になった。
「中村透と申します。私が会計になりましたらみなさんが体育祭文化祭を全力で楽しめるように裏から支えたいと思います。目に見えるような形でみなさんを支えることは出来ませんが、確かに私がみなさんを支えていることを知っていていただきたいです。どうかよろしくお願いします」
最後は春奈のスピーチだ。
「羽栖春奈と申します。私が書記になりましたら他校より盛り上がる体育祭文化祭にするべく地域に宣伝いたします。そして、地域の皆様も楽しめるような行事にするべく努力してまいりますのでよろしくお願いします」
俺たちのスピーチが終わり最後は今まで以上の拍手が体育館を覆った。全校生徒が俺たちにどれほど期待してくれているのかが目に見えているようだったが、その期待の大きさに潰されるのではなく、その期待に応えることが楽しみで仕方がなかった。
次回もお楽しみに




