108話 稽古前
龍王からヤンウェイやカイルムについて教えてもらってから一ヶ月近く経った。季節はすっかり冬に変わりもうそろそろダンジョン攻略三回目が始まる頃かなと思っていると朝のホームルームで塩田先生が言った。
「みんなもうそろそろまたダンジョン攻略やるんじゃないかなって思ってるだろう。みんなの期待通り来週からまた一週間ダンジョン攻略があります。今回行くダンジョンは孤立のダンジョンって名前で毎年二年の最後に行ってるダンジョンだ。名前の通りこのダンジョンでは、一人になることを強制されるような仕組みになっている。極端に道が狭かったり複数人で行くと大勢のモンスターが出てきたりと一人で攻略させようとしてくるそんなダンジョンだ。もちろん複数人で攻略してもいいが、学校側がなぜ孤立のダンジョンを選んでるかを考えてくれ。それと、今回は一人行動を前提としてるからスビティスシィは全員分配布する。もしヤバくなってスビティスシィを吹いたとしても、ダンジョンの構造上助けに行くのが遅れるから勝てないって思ったらすぐに逃げること。逃げる時は壁破壊してでも逃げればいい。そのぐらいしないと一人での攻略は危険だ。話さなくちゃいけないことはこれぐらいだが、質問あるか?」
塩田先生の言葉に対して誰も手を挙げなかった。塩田先生は本当に聞かなくていいのかとそわそわしていたが、クラスのみんなは本当に聞きたいことがないのか平然としていた。
「何か聞きたいことできればいつでも聞くからな」
そう言うと塩田先生は教室を後にした。いつも通り先生が教室を去ったらクラスが孤立のダンジョンについて話し始めた。ユースたちも話し始めたが、俺はもっと重要なことを考えていた。孤立のダンジョンということは一週間まるまる一人の時間ができる。ということはカイルムに行っても誰にもバレないし行方不明にもならず龍王の稽古を受けられるのではないかと思った。たとえ一週間誰ともダンジョン内で会わなかったとしてもダンジョンの最奥まで行っていたと言い訳ができるし、休憩施設に戻らなくても実際の攻略を意識してって説得できる。このチャンス逃すわけにはいかない。今日から準備して備えておこうと考えていると透が話しかけてきた。
「健ちゃん、聞いてる?」
「ごめんぼーっとしてた。何の話?」
「孤立のダンジョンはみんなソロ攻略するからそれまでに色々必要な物準備するために買い物行くけど一緒に行く?」
「あーどうしよ。俺は大体必要な物あるからいいかな」
「そっか健ちゃんのソロ攻略どんな感じなのか見れなくて残念だけど、お互いに頑張ろうね」
「おう。透も頑張れよ」
そんな感じで自分の準備に充てる時間は確保できた。後は何が必要か考えるだけとなった。ダンジョン攻略に行くためある程度の服と食べ物は必要だしこれらはカモフラージュとして持って行く。あと必要なのはカイルムで今が何日の何時なのかを把握するための時計だ。腕時計でもいいかも知れないが、稽古途中に付けてて壊れたら面倒なので置いておくタイプの時計を持って行くことにした。他に必要な物はと考えたが、特に思い浮かばなかったのでそのままにしておいた。
一週間が経ち孤立のダンジョン攻略授業当日となった。俺たちはいつも通り学校に向かった。いつも通り攻略授業前に鷲田先生からの話があるだろうと登校途中話していると前田と出会した。俺たちはそのまま一緒に学校まで向かった。学校に着くとユースがいた。ユースは俺たちを見つけると何を持ってきたか、本当に一人で攻略できるか心配そうにしていた。勝たちはユースにそんなに心配しなくて大丈夫だと宥めた。ユースはまだ心配そうにしていたが、少しは落ち着いたのかみんなを励ますような言葉をかけてくれた。父さんと母さんも前みたいに行方不明にならないでよと心配そうにしていたが、ユースも同じような気持ちなのだろうと思った。そんなことをしていると鷲田先生の話が始まった。
「みなさん今回はいつもと少し異なるダンジョンなのは聞いていると思います。孤立のダンジョンでは一人で攻略するのが最も安全で効率的だと数多くの攻略者が言っています。友達と一緒に攻略しようと考えている生徒もいるかも知れませんが、その場合かなりハードな攻略となります。一人では心細いと感じるかも知れませんが、今までの経験を積み重ねてみなさんは格段に成長しています。正直言って他の代とは比べ物にならないほどみなさん強いです。自信を持ってください。ですが、油断はしないでください。常に緊張感を持ち警戒を怠ることなく攻略していれば、みなさんなら良い成績を収められるでしょう。それでは各クラスバスに乗り込んでください」
俺たちは塩田先生の指示に従いバスに乗り込んだ。しばらくバスに揺られていると郊外の一角にある倉庫のような所に着いた。こんな所にあるんだと驚いているとみんなバスを降りていたので俺も降りた。いつも通り鷲田先生の先導に着いて行き休憩施設まで向かった。倉庫の中に地下に続く道がありそこが孤立のダンジョンの入り口だった。入り口からかなり狭く人がすれ違えるほどしかなかった。しばらくして少し開けた場所に出た。そこに休憩施設があり一人一つスビティスシィが配布された。俺たちは一度集まり話し合った。
「それじゃあみんなソロ攻略頑張ってね。みんななら大丈夫だろうけどヤバかったら逃げてね」
「大丈夫だって。俺たちはアイテムも結構持ってるんだから。てそう言えば透、マングローブ林のダンジョンで見つけたあの手袋どうだったんだ?」
勝の質問に透は少しニヤけながら答えた。
「ふふふ、それがね、名前は空掴の遊び人って言って目の前にある空間を自由自在に掴むことが出来るっていう星座級のアイテムなんだ」
「「「!?」」」
俺たちは周りの人たちに星座級だということを悟られないように声を殺して驚いた。空間を掴むという想像もつかないことが出来るため星座級なのは納得だが、まさかマングローブの下にあった宝箱にあったのが星座級だったとはと驚いた。俺たちは少しの間透のアイテムについて話し攻略に気持ちを切り替えるために気合を入れた。
「それじゃあみんなソロ攻略頑張れよ」
俺がそう言うと各々反応を返してくれいよいよソロ攻略が始まった。俺は小道に入りしばらく進んでからヤンウェイを使いカイルムにテレポートした。すぐに龍王がいる所まで飛んだ。
「おう健斗よもう来たのか」
「稽古つけてくださいお願いします!」
「期限は?」
「一週間です。時計は持ってきてるので時間の心配は大丈夫です。治癒魔法も使えるのである程度の怪我なら難なく自分で治せます」
「そうか。意気込みは十分。今から稽古を始めても問題はないって感じだな」
「はいお願いします」
「それではまず魔法から始めるとしよう。我の稽古はきついがついて来れるな?」
「はい頑張ります!」
そんな感じで龍王の稽古が始まった。この一週間でどれだけ成長出来るのか、どんな稽古なのは心配だったが、同時に同じぐらい期待もしていた。
次回もお楽しみに




