104話 修学旅行五日目
勝たちと今日はどこを攻略するか話し合っているとユースと春奈も朝ご飯を食べに来た。
「おはよ」
「「おはよう」」
二人は少し眠たそうに小さくあくびをした。話し声がうるさくて起こしてしまったかなと思っているとユースが言った。
「何の話してたの?」
「今日どこ攻略するかって。うるさかった?」
「うるさくはなかったわ。そろそろ起きなくちゃって思ってた時に話し声がしたから起きてきたのよ」
俺たちは朝ご飯を食べながらマングローブ林のダンジョン最終日をどうするか話し合った。俺は最終日だから行ってない所に行きたいと言い勝も賛成してくれた。透はみんながどんなモンスターを討伐したのか話を聞きたいらしく、ユースと春奈は明日からの自由時間のために体力を温存しておきたいらしい。俺と勝は仕方ないなと思いつつも二人で攻略に行くことにした。ユースからスビティスシィを貰い午前だけ攻略に行ってくると三人に伝え出発した。
「どこから行くよ」
俺たちは前のように五つの道の前に立った。一番左の道は行ったから残るは四つどの道を進むのかと思っていると勝が言った。
「風魔法で一気に飛んで行かない?」
「いいぜ」
俺は勝からそんな遊び心ある提案が出てくるとは思っておらずニヤけてしまった。俺は勝をおんぶして風魔法で空高く飛んだ。飛び始めて少しすると、五つの道に何組ものグループがいた。普通に歩いていたらどこかのグループとぶつかっていたなと思っていると、視界の端に結構なサイズの鳥がいることに気がついた。その鳥は赤や青色を帯びておりオウムだと分かった。そのオウムは俺たちと並走するように飛んでいた。綺麗な色だなと思っていると、俺がオウムを見ているのに気がついた勝も一緒に見始めた。しばらくゆっくり飛びながらそのオウムが観察していると疲れたのかマングローブの枝に止まった。俺たちは自分たちがどのぐらい飛んで来たのか確認するために後ろを確認した。
「「ん?」」
後ろを確認したのに休憩施設どころか、下にあったはずの五つの道も無くなっていた。俺たちはヤバいことを瞬時に理解し来た方向に急いで戻った。下を見ると五本の道も現れホッとした。もうしばらくすると休憩施設も見えてきて胸を撫で下ろした。
「焦ったー……」
「マジで変な汗かいた……」
ダンジョンでは変に気を抜いたり行動したりするのはやめようと心に決めた。息を整えた俺たちは再びまだ攻略していない場所に向かった。しばらくすると、クロコディウスと戦っているグループを見つけた。
「健斗助けに行くぞ」
「分かってる」
勝の掛け声にそのグループの頭上に移動した。よく見てみると、そのグループには前田がいた。不動の盾を使いクロコディウスの攻撃を受け止めていた。その間にグループの他の人たちが攻撃をしていてこのままならいけるかもと思っていると透の声がした。
「健ちゃん! どうしたのこんな所で」
「透!? そう言うお前こそ何で前田たちと一緒にいるんだ?」
「前田くんに色々話聞かせてもらってたら一緒に攻略することになっちゃって、今はヤバくなったら助けてって言われたから見守ってるの」
「そ、そうか。それなら俺たちも見守るか」
「そうだな」
俺と勝は前田たちの頭上で浮遊しながらクロコディウスに勝てるか見守った。前田は不動の盾を構えていながらも槍で的確に攻撃していた。でも、前田の攻撃はクロコディウスの頑丈な表皮によって防がれていた。でも、その攻撃をしているおかげでグループのみんなはクロコディウスのターゲットになることなく攻撃を続けられていた。グループの一人がクロコディウスの胴体に爆発魔法を撃ったが、あまりダメージにはなっていなかった。むしろ爆発魔法を当てたことでターゲットがその魔法使いに向いた。その魔法使いはクロコディウスのターゲットになったことを視線で察知したのだが、クロコディウスの迫力に押し負け足が震えて立っているのがやっとだった。その瞬間クロコディウスが前田を無視して飛び上がりその魔法使いに向かって大きく口を開けて突撃してきた。
「きゃー!」
魔法使いが絶体絶命のピンチに陥ろうとしていたが、後ろでグループを見守っていた透が蒼紋の杖でマングローブを極太の槍のように変形させクロコディウスの比較的柔らかい腹に突き刺した。魔法使いはマングローブの槍に貫かれたクロコディウスを目の前にしてへたり込んでしまった。グループのみんなが魔法使いに大丈夫かと心配そうに声をかけた。魔法使いは震えた声で大丈夫と言った。透も心配そうにしていたが、透の顔にはクロコディウスに対する恐怖は一切無かった。透の度胸がこれほどのものだったのかと思い知らされた。前田グループは透に礼を言うと休憩施設に戻った。あれだけの経験をしたのだからもう十分だと誰もが納得するだろう。残された俺と勝、透は三人で攻略を続けることにした。さすがに二人を担ぎながら飛ぶのは大変だから歩いてモンスターがいないかどうか歩いた。道中勝が透に言った。
「まさか透があんなに強くなってたなんてビックリだ」
勝の言葉に俺も同意した。すると、透は照れくさそうにしながら言った。
「ありがとう。でも、健ちゃんが色々教えてくれたおかげだから」
「それでもきちんとものにしたのは透なんだから透の力だよ」
そんな話をしていると分かれ道が現れた。俺と勝は透の植物の声を聞ける魔法を期待して透を見つめた。透はそういうことねと理解したのか蒼紋の杖を地面に突き立てた。しばらくすると透は分かれ道とは全然別の方向を見て言った。
「あっちから変な声がした」
不気味なことを言う透に俺と勝は顔を見合わせた。そんなことをしていると透はマングローブ林の中に入って行ってしまった。俺たちは透を止めるために追いかけると、透は再び蒼紋の杖を地面に突き立てた。すると、透は一本のマングローブの前に歩み寄った。そのマングローブは他の個体より少し小さく生育不良でも起こしているのかなと思っていると、透が蒼紋の杖で地面を掘り始めた。魔法は使わずに物理で掘り始めたので俺たちが困惑していると透が地面から腕に抱えられるサイズの宝箱を見つけ出した。
「「えー!?」」
俺たちはどうやってこんな場所にある宝箱を見つけ出したのかと驚愕していると透が言った。
「へへへ、蒼紋の杖が役に立ってくれた」
そう言うと透は自分だけに見えるように宝箱を開けた。俺たちはずるいぞと宝箱を覗き込んだ。そこには黒色で薄手の手袋が入っていた。俺たちは何だと思っていると透が手袋を嵌めた。どんな力があるのか分かってないのにと思っていると、何も起こらず疑問符が浮かんだ。透は試しに手を握ってみた。すると、視界の先にあった二本のマングローブが握りつぶされるようにメキメキと音を立てて幹の真ん中から真っ二つになった。俺たちは驚愕のあまり固まった。少しすると透が再び同じように手を握った。すると、今度は一本のマングローブの幹の真ん中が粉々になった。透はあまりの恐ろしさに手袋を外した。
「ヤバくね?」
「ヤバい……」
「ヤバかった……」
透は宝箱を元あった場所に戻そうとしたが俺と勝は必死に止めた。
「透が見つけたんだから透のだって!」
「僕こんなエゲツないのいらない!」
「そんなの勿体ねえって!」
そんな押し問答の末透は宝箱を持ち帰り、塩田先生に手袋を渡し鑑定してもらうことになった。鑑定は修学旅行が終わってから学校でやるためしばらく時間がかかるとのことだった。透はユースと春奈にもその手袋の話をした。二人は羨ましそうにしていたが、透は実際にヤバさを実感していないから言えるんだと言いた気な顔をしていたが、特に何も言わなかった。
修学旅行三日間のダンジョン攻略はこうして終わった。明日からは自由時間だと思ってバイキングで晩ご飯を食べていると、ユースが言った。
「三人にも予定表送るから見てね」
俺たちはメールに送られてきたその予定表を見てみると、そこには大まかな時間にどこに行くかが書かれていた。ちゃんと用意していたんだと感心していると春奈が言った。
「三人は行きたいところとかある?」
俺たちは特にそんなこと考えておらず首を横に振ると勝が言った。
「エメラルドビーチはいつだ?」
「二日目の午後よ」
勝はちゃんと予定の中にあって良かったと安心した。ユースと春奈は特に変更点は無いかと聞いてきた。俺たちは無いと答えると二人は安心したような表情で言った。
「これで二日間観光するから」
「ちゃんと沖縄楽しみなさいよ」
「「「はい!」」」
俺たちは元気良く返事をした。明日からの二日間が楽しみだなと思いながら眠りについた。
次回もお楽しみに




