103話 修学旅行四日目
アドゥシンデカンクローニを食べて休憩を終えた俺たちは攻略を再開することにした。その前に先生たちに美味しかったどうか聞きに行った。先生たちは美味しかったととてもいい表情で言った。その幸せそうな表情を見るだけで持ってきて良かったと心から思った。いつも感情を表に出さない鷲田先生も僅かにだが微笑んでくれていてこっちまで笑顔になった。美味しい食べ物はみんなを幸せにするんだと実感した。また見つけたら休憩施設にいるみんなにも食べさせてあげようと思った。
ユースを先頭に五つある道の一番左の道を進んでいると両脇にあるマングローブ林から視線を感じた。小動物のようなモンスターでもいるのかと思ったが、視線を感じた方を見ても何もおらず不審に思っていると、俺たちの目の前に滅殺のダンジョンにもいたアナコンダをさらに大きくしたようなマングスアンギスというモンスターがいた。
「健斗覚えてるわね?」
「当たり前だろ」
俺は氷刃剣を取り出しマングスアンギスが浸かっている海水を凍らせた。マングスアンギスは身動きが取れなくなり呆気なく俺の手によって殺された。
「「「よわ……」」」
勝と透、春奈がぼそっと呟いた。実際そこまで強くないにしても言わなくてもよくないかと思っているとユースが言った。
「あんまりモンスターを舐めない方がいいわよ。今回はこっちが圧倒的に有利な状況だったから良かったものの、樹上から襲ってくることだってあるんだからね。警戒は怠らないこと。分かった?」
ユースの言葉を聞いて三人は力強く首を縦に振った。マングローブ林の感じからして滅殺のダンジョンにあった湿地帯と同じようなモンスターが多いのかなと思った。となると体長十メートルはあるクロコディウスも出てくるのではないかと思った。ユースならもし出てきたとしても勝と透、春奈の成長チャンスチャンスだと戦わせるのではないかと考えた。ユースならやりかねないなと考えていると次なるモンスターが現れた。
「グランディスカンセルじゃん」
ユースの目の前には人より優に大きいヤシガニのようなモンスターがいた。俺が魔法を撃とうと右手を前に出すとユースが止めた。
「大丈夫こいつは温厚な性格だから下手に刺激しなかったら襲ってこないから」
「そっか。でも、道こいつが塞いでるけどどうする? 風魔法で飛び越す?」
「それしかないわね」
俺は一人づつおんぶして風魔法でグランディスカンセルの上を飛び越した。温厚な性格らしいが、背中を見せながら進むのは少し恐怖心があったので結構離れるまでチラチラ確認しながら歩いた。しばらく歩きもう大丈夫だと思えるぐらい離れた。グランディスカンセルは見た目通りめっちゃデカいヤシガニだろう。性格も温厚だから間違い無いだろう。攻撃面と防御面に関しては見た目からして強そうだし、ユースがスルーしたことから面倒なのだろう。そんな事を考えながら歩いているとユースが言った。
「そろそろこの辺で新しい道開拓しようか」
勝たちは一瞬ユースは何を言ってるんだというような顔をしていた。俺としてはユースの意見に賛成だったため乗り気だった。
「俺の爆破魔法で道切り拓く?」
「試しにやってみて。無理だったら諦めるしかないわ」
「オッケー」
俺は水平に真っ直ぐ爆破するようにイメージし爆破魔法を使おうとしたその時、透が止めた。
「ち、ちょっと待って! 攻略始める前に言ったよね。ここのマングローブたちは人間に対して恨みを持ってるって」
「それがどうしたって言うのよ」
「健ちゃんが鬱蒼のダンジョンで倒したアルトロポーファティみたいなのが出てきたらどうするの? その可能性はゼロじゃないよ。万が一のことを考えて」
透の言い分は筋は通っているが、その可能性はごく僅かでありそこまで気にしなくてもいい気がする。それに、もしここのマングローブがアルトロポーファティみたいになったとしても俺たちなら容易に討伐出来るだろう。それを簡潔に伝え透を説得することにした。
「そうかも知れないけど、そうなった場合俺たちなら討伐出来るだろ。そこまで気にしなくていいって」
「そうだけど、もしかしたら強いモンスターがいるかも知れないし無駄に行動すべきじゃないと思う」
透は今までこんなに心配そうにしていたことはなく、何かあったのではないかと思った。今ここで何かあったのか聞いてもいいが、話しづらいだろうからやめておいた。俺たちは透の指示に従い既存の道を進んだ。しばらく進んでいるとマングローブの根本から一メートルはあろうヒルが這ってきた。俺たちはその見た目の不気味さに嫌な顔をした。
「リーチェじゃん……健斗燃やして」
「……うん」
俺はユース言われた通り燃やした。その巨大なヒルはあっという間に燃え尽き灰となった。俺たちはしばらくあのヒルの嫌な感じが残っていて会話もしなかった。もうしばらく歩き何か気晴らしになるものはないかと思っていると、背中に激痛が走った。
「痛てぇ!」
後ろを振り返るとそこには豹のようなジャガーのような猛獣がいた。みんなは瞬時に俺を守るために前に立ってくれた。俺は今のうちに治癒魔法で傷を塞いだ。治癒魔法を使っている間透と春奈が声をかけてくれそれが心の支えになった。あまりの激痛にしばらくの間身動きが取れないでいると、勝とユースがその猛獣を倒してくれていた。
「大丈夫?」
「大丈夫か?」
「大丈夫だけど、めっちゃ痛い。傷は塞いだけど、痛みまでは消えないから……」
勝とユースが猛獣を倒し心配してくれた。二人は俺を心配して攻略を一時中断してくれた。俺は勝におぶられ休憩施設まで戻ることになった。俺はおぶられている間あの猛獣のことがどうも気になりユースに聞いた。
「なぁあのモンスターなんだったんだ?」
「あれはファロックスパルドスって言う豹に近い猛獣のモンスターなの。木登りが得意で鋭い爪を持ってる結構危険なやつだから事前に言っておけばよかったわね。ごめんなさい」
「いやいや知ってたとしてもあれは避けられないって。ユースが責任感じる場面じゃないよ」
俺はユースに微笑みながら言うと、少し痛みが和らいだ。笑みの寵愛の力なのかは分からないが、少し楽になり眠ってしまった。
目を覚ますと休憩施設のベッドの上だった。勝と透も眠っており変な時間に目が覚めたのではと思ってスマホを見てみると、時間はダンジョン攻略三日目の朝を示していた。思っていたよりちょうどいい時間に目を覚ましたなと思っていると、ファロックスパルドスにやられた背中の傷が痛んでいないのに気がついた。治癒魔法さまさまだなと思っていると勝が目を覚ました。
「おはよ」
「ふぁ〜」
俺の挨拶に勝はあくびで返事をした。少し笑えたが、このぐらい気楽な感じでいる方が楽だからいいやと思った。しばらくして透も起きたため俺たちは朝ご飯を食べ今日はどこを攻略するか話し合った。
次回もお楽しみに




